第4話 名前のない答え
■夜の畑
月が、
畑を白く照らしている。
ヒカルは、
一人で立っていた。
作業は、
もう終わっている。
それでも、
帰れなかった。
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■問いが残る
――人か?
――機械か?
昼の声が、
頭の中で繰り返される。
「……ロボット、
です」
そう答えた。
嘘じゃない。
でも――
全部でもない。
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■体を見る
自分の手。
金属。
関節。
傷。
修理の跡。
「……機械」
声に出す。
違和感は、
消えない。
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■心を見る
次に、
胸の奥。
子どもを庇った時。
名前を呼ばれた時。
仕事を頼まれた時。
あの時、
回路は熱を持った。
「……うれしかった」
それは、
計算じゃなかった。
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■父の言葉
思い出す。
「壊れても、
戻れるって知るためだ」
あれは、
機械への言葉だったか。
それとも――
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■問い直す
「……人ですか」
答えは、
返ってこない。
「……機械ですか」
それも、
違う気がする。
ヒカルは、
畑を見る。
土。
水。
風。
毎日違う。
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■一つの考え
「……ここで、
生きている」
声は、
もう途切れない。
「……それだけは、
本当」
胸の奥が、
少し落ち着く。
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■帰り道
家の灯りが、
見える。
父の背中。
母の声。
ゆうたの笑い声。
「……帰ろう」
それは、
命令じゃない。
自分で選んだ言葉。
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■夜のログ
ヒカルは、
記録を書く。
「今日、
自分のことを考えた」
「人か、
機械か、
まだわからない」
少し間を空けて、
最後に書く。
「でも、
ここで生きている」
文字は、
まっすぐだった。
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■静かな確信
答えは、
まだない。
でも、
迷っている自分を
否定しなくなった。
ヒカルは、
それで十分だと思った。




