第3話 残る声
■噂の裏側
村の空気は、
確かに変わっていた。
ヒカルが手伝った。
ヒカルが話した。
ヒカルが庇った。
そんな話が、
行き交っている。
でも――
全部じゃない。
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■一人だけ
夕方。
ヒカルが
畑から戻る途中。
「……おい」
後ろから、
低い声。
振り返ると、
あの年配の男だった。
子どもを注意した、
あの人。
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■真正面
逃げない。
ヒカルは、
立ち止まる。
「……何か、
ご用ですか」
声は、
落ち着いている。
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■疑い
「……お前は、
結局なんなんだ」
男は、
率直だった。
「人か?
機械か?」
ヒカルは、
すぐには答えない。
言葉を、
探す。
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■ヒカルの答え
「……ロボット、
です」
一度、
はっきり言う。
「でも……
ここで、
働いています」
男は、
眉をひそめる。
「それが、
信用できるかどうかだ」
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■折れない
ヒカルは、
目を逸らさない。
「……信用は、
少しずつ、
だと思います」
言葉は、
つながっている。
「……僕も、
そうしてきました」
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■沈黙
男は、
しばらく黙る。
やがて――
「……勝手に、
変わるなよ」
それだけ言って、
去った。
それは、
完全な拒絶じゃなかった。
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■残る疑問
ヒカルは、
その場に立ち尽くす。
――……ワ……タ……シ……
――……ナ……ニ……?
答えは、
まだない。
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■夜
ログを書く。
「今日、
聞かれた」
「自分は、
何か」
最後に、
小さく書き足す。
「……まだ、
わからない」
それで、
よかった。




