第6話 もう一度、立つ
■立つ場所
縁側。
畑と家の境目。
ヒカルは、
そこに立たされていた。
――……タ……ツ……
「いや、
“立たされてる”じゃない」
父が言う。
「自分で立つ」
――……シ……゛……フ……゛……
ヒカルは、
ゆっくりと力を入れる。
⸻
■最初の一歩
足に、
信号を送る。
――……ア……シ……
グラッ
「支えるぞ」
ゆうたが手を伸ばす。
――……タ……゛……イ……シ……゛……ョ……ウ……
でも、
次の瞬間――
ドン
膝が、
縁側に当たった。
――……イ……タ……
「だから言ったろ」
父は叱らない。
「痛いってわかるなら、
まだ大丈夫だ」
⸻
■繰り返し
立つ。
転ぶ。
座る。
それを、
何度も繰り返す。
――……ツ……カ……レ……タ……
「今日はここまで」
――……マ……タ……
「また明日だ」
父は、
時計を見る。
「焦るな」
⸻
■外の視線
道の向こう。
村人が、
ちらりとこちらを見る。
「……直ったのか?」
ひそひそ声。
ヒカルは、
少しだけ肩をすくめた。
――……マ……タ……゛……
「それでいい」
母が言う。
⸻
■一人で
夕方。
皆が離れた後。
ヒカルは、
もう一度立とうとした。
――……タ……゛……イ……シ……゛……ョ……ウ……
グラッ
倒れそうになる。
でも――
トン
縁側の柱に手をつき、
なんとか止まる。
――……テ……゛……キ……タ……
それは、
小さな成功。
⸻
■父の視線
その様子を、
父は遠くから見ていた。
声はかけない。
ただ、
背中を預けている。
⸻
■夜
ヒカルは、
布団に戻る。
――……キ……ョ……ウ……
――……ア……シ……
――……タ……゛……イ……シ……゛……ョ……ウ……
その言葉は、
前より、
はっきりしていた。
転んだ数だけ、
覚えたことがある。
ヒカルは、
また立つ。




