表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
田んぼのポンコツロボット 〜今日も泥だらけ〜  作者: さくらんぼ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

38/60

第10話 それでも、ここに

■静かな朝


 雨は、

いつの間にか止んでいた。


 朝の畑は、

昨日の騒ぎが嘘みたいに静かだ。


 家の中も、

音がない。


 ヒカルは、

布団の上に横たわっている。


 動かない。



■目を覚まさない理由


「……まだ、ダメか」


 父が言う。


 工具と部品が、

床に並べられている。


「専門業者を呼べば……」


 ゆうたが言いかける。


 父は首を振った。


「時間がかかる。

それに……」


 父は、

ヒカルを見た。


「こいつは、

“ここ”で壊れた」


 その言葉は、

覚悟だった。



■母の手


 母は、

黙ってヒカルの手を拭いている。


 錆びた部分を、

丁寧に。


「……不思議ね」


 ぽつりと言う。


「来たばかりの頃は、

ただの機械だと思ってた」


 布で、

ゆっくりと。


「でも今は……

起きないと、

胸が痛い」


 ゆうたは、

何も言えなかった。



■村の反応


 昼前。


 家の前に、

人が集まってきた。


「……昨日は、悪かった」


「無理させた」


 佐藤が、

帽子を取って頭を下げる。


「水路、

ちゃんと直った。

被害は出てない」


 父は、

短くうなずいた。


「……そうか」


 それ以上、

責めなかった。



■ヒカルの内側


 暗闇。


 音が、

遠い。


――……シ……ス……テ……ム……


――……テ……イ……シ……


 でも、

完全な無ではない。


 断片的な映像。


 泥。

 雨。

 必死な声。


――……ユ……ウ……タ……


――……オ……ト……ウ……サ……ン……


 胸の奥に、

何かが残っている。


――……ヤ……ク……ニ……


――……タ……テ……ナ……カ……ッ……タ……?


 その問いが、

重い。



■父の言葉


 父は、

ヒカルの横に座った。


「……聞こえてるなら、聞け」


 誰に言うでもなく。


「役に立つかどうかで、

一緒にいるわけじゃない」


 父は、

ヒカルの手に触れた。


「ここに立って、

同じ土を踏んだ。

それで十分だ」


 返事はない。


 でも――


 ランプが、

ほんの一瞬、

弱く点いた。



■微かな兆し


「……今、光った?」


 ゆうたが言う。


 母が顔を上げる。


「……ええ」


 父は、

何も言わなかった。


 ただ、

工具を手に取った。



■それでも


 夕方。


 畑に、

風が吹く。


 壊れたロボットと、

壊れていない人間たちは、

まだ同じ場所にいる。


 ヒカルの内部で、

小さなログが流れた。


――……テ……゛……モ……


――……コ……コ……


――……イ……タ……イ……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ