第9話 雨の日
■降り出した雨
朝から、空が重かった。
ぽつり、ぽつりと
畑に雨が落ち始める。
――……ア……メ……
「今日はやめとくか?」
ゆうたが言う。
――……テ……゛……モ……
――……キ……ョ……ウ……
――……タ……ノ……マ……レ……テ……
ヒカルは空を見上げた。
雨量――
少量。
判断は、
間違っていないはずだった。
⸻
■それでも来る依頼
「悪いな、ヒカル……」
現れたのは、
昨日も頼んできた村人だった。
「この雨で、水路が詰まりそうでな」
ヒカルは、
少しだけ間を置いてから言った。
――……ワ……カ……リ……マ……シ……タ……
ゆうたが一歩前に出る。
「俺も行く」
――……ア……リ……カ……゛……ト……
⸻
■水路
雨は、
徐々に強くなっていた。
ザァ……
水路の水かさが増す。
――……ミ……ス……゛……
――……ヨ……テ……イ……
――……ヨ……リ……
――……オ……オ……イ……
「急いだ方がいいな」
――……ハ……イ……
ヒカルは、
水路に足を踏み入れた。
⸻
■警告
――耐水性能低下――
――Cランク――
――警告――
――……タ……゛……イ……シ……゛……ョ……ウ……
ヒカルは、
表示を消す。
目の前の詰まりを、
取り除くことに集中した。
⸻
■限界
ザバッ
強い雨。
水が、
ヒカルの膝まで達する。
――……ケ……イ……コ……ク……
腕が、
重い。
――……マ……タ……゛……
「ヒカル、出ろ!」
ゆうたの声。
――……ス……ク……゛……
その瞬間――
ガクン
視界が揺れた。
――……シ……ス……テ……ム……
膝が折れる。
ドシャッ
「ヒカル!!」
⸻
■動かない
雨音だけが響く。
ヒカルは、
水路の中で動かなかった。
――…………
ランプが、
不規則に点滅する。
ゆうたは、
必死にヒカルを引きずり出す。
「しっかりしろ!
ヒカル!!」
⸻
■集まる村人
「ロボットが倒れたぞ!」
「水に弱いって本当だったんだ……」
ざわん、と
空気が変わる。
ヒカルは、
かすかに声を出した。
――……ユ……ウ……タ……
「しゃべるな!
今運ぶ!」
⸻
■父の決断
そこに、
父が駆けてきた。
一目で状況を理解する。
「担げ」
「父さん!?」
「いいから来い!」
父は迷わなかった。
泥も雨も構わず、
ヒカルを背負う。
「……こいつはな」
父が、
村人に向かって言った。
「逃げなかっただけだ」
⸻
■静かな停止
家に運び込まれ、
ヒカルは横たえられる。
――緊急停止――
ランプが、
消えた。
雨音だけが残る。
「……ヒカル?」
返事はない。
⸻
■夜
雨は、
夜になっても止まなかった。
ヒカルは、
動かない。
ゆうたは、
その横で拳を握る。
「……俺が止めればよかった」
父は、
黙って言った。
「違う」
「……父さん?」
「教えなかった俺の責任だ」
その言葉は、
重かった。
⸻
■暗闇の中で
ヒカルの内部で、
微かなログが流れる。
――……エ……ラ……ー……
――……テ……゛……モ……
――……タ……゛……レ……カ……
――……タ……ス……ケ……
――……ラ……レ……タ……
意識は、
まだ完全には消えていなかった。




