第6話 頼られるということ
■昼下がりの騒ぎ
昼過ぎ。
畑に静かな風が吹いていた。
ヒカルは一人、
父に教わった通りに鍬を入れている。
――……ユ……ッ……ク……リ……
そのときだった。
「おい……誰かいないか!」
畑道の向こうから、
少し焦った声が聞こえた。
現れたのは、
村の米農家・佐藤だった。
⸻
■困りごと
「田んぼの水門が壊れたんだ。
今朝から水が止まらなくてな……」
佐藤はヒカルに気づき、
一瞬、言葉を詰まらせた。
「……いや、悪い。
人に言うべきだった」
引き返そうとする背中。
ヒカルは、
思わず声を出した。
――……マ……ッ……テ……
佐藤が振り向く。
――……ミ……ス……゛……
――コ……ン……ト……゛……
――カ……ク……ニ……ン……
「……お前、
直せるのか?」
――……ワ……カ……ラ……ナ……イ……
――テ……゛……モ……
――ミ……ル……
その答えは、
正直すぎた。
佐藤は少し笑って、
肩をすくめた。
「……ダメ元だ。来い」
⸻
■田んぼにて
水音が、
激しく響いている。
ヒカルは水門をのぞき込み――
――……サ……ヒ……゛……
「錆びて固まってるな」
佐藤が言う。
ヒカルは腕を伸ばす。
――……チョ……ッ……ト……
ギギッ
――……!
「おっ?」
だが次の瞬間――
ビシャッ
水が跳ね上がり、
ヒカルの腕にかかる。
――……ケ……イ……コ……ク……
動きが、
一瞬止まった。
「ヒカル!?」
――……タ……゛……イ……ジ……ョ……ウ……
――……チョ……ッ……ト……
――……サ……ヒ……゛……
腕の関節が、
きしむ。
⸻
■それでも止める
ヒカルは、
歯を食いしばるように言った。
――……マ……タ……゛……
再び力を入れる。
ゴリッ
水門が、
少しずつ動いた。
ザァァ……
水量が落ちていく。
「止まった……!」
佐藤が声を上げる。
ヒカルは、
その場に座り込んだ。
――……フ……ウ……
⸻
■村人の目
「……助かった」
佐藤は、
深く頭を下げた。
「お前……
いや、ヒカル。
すごいな」
――……ス……コ……゛……ク……
――ナ……イ……
ヒカルは首を振る。
――……タ……マ……タ……マ……
そのやりとりを、
遠くで見ていた影があった。
父だ。
何も言わず、
ただ、うなずいた。
⸻
■変わる空気
帰り道。
佐藤がぽつりと言った。
「……最初はな、
正直、笑ってた」
――……
「でも……
人より先に来てくれたのは、
お前だった」
ヒカルは、
少し考えてから答えた。
――……タ……゛……タ……゛……
――コ……コ……
――イ……タ……
「それで十分だ」
⸻
■夜
家に戻ると、
母がヒカルの腕を見て言った。
「あら……錆びてるじゃない」
――……ハ……イ……
母は布で拭きながら、
小さく笑った。
「でも……
いい顔してるわ」
ヒカルは、
自分の胸に手を当てた。
――……コ……コ……
――ス……コ……シ……
――ア……タ……タ……カ……イ……
外では、
村の夜が静かに更けていった。




