第4話 父の本音
■夕暮れの縁側
夕日が沈みきる少し前。
父は縁側に腰を下ろし、黙って畑を見ていた。
泥だらけのヒカル。
それを横で支えるゆうた。
昔なら、
目を背けていた光景だ。
「……」
父は、深く息を吐いた。
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■声をかけるまで
ヒカルは鍬を片付け、
ゆうたと一緒に家へ戻ってくる。
――……オツ……カ……レ……
――サマ……デ……シ……タ……
相変わらず、
ぎこちない。
父は立ち上がり、
ゆっくりと二人に近づいた。
ゆうたが気づき、身構える。
「父さん……?」
父はヒカルを見た。
真正面から。
「……お前」
――……ハ……イ……
一瞬、
ヒカルの動きが止まる。
――……ナ……ニ……カ……?
父は少しだけ、
言葉を探すように視線を落とした。
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■父の恐れ
「正直に言う」
低く、静かな声。
「俺は……お前が怖かった」
ゆうたが息をのむ。
「便利で、正確で、
人よりできる存在が来たら……
俺たちの居場所がなくなると思った」
――……イ……バ……ショ……?
「そうだ。
人が汗かいて、失敗して、
それでも続けてきた仕事を……
簡単に奪われる気がした」
父の拳が、
ぎゅっと握られる。
「だから……
壊れたとき、
ほっとした自分がいた」
沈黙。
ゆうたは、
何も言えなかった。
ヒカルは、
小さく首を傾げた。
――……コ……ワ……イ……
――デ……ス……カ……?
「……ああ」
父は、
はっきりとうなずいた。
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■それでも
「でもな」
父は、
畑の方を見た。
「今日見てた。
転んで、泥まみれになって、
それでも立ち上がって……
お前、逃げなかったな」
――……ニ……ゲ……ナ……イ……
「不器用で、
要領も悪い。
……俺に似てる」
その言葉に、
ゆうたの目が見開かれる。
――……ホ……ン……ト……?
「本当だ」
父は、
ヒカルをもう一度見た。
「お前は……
人の代わりじゃない。
人と一緒に、
同じ土に立ってる」
ヒカルのランプが、
小さく、震えるように光った。
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■ヒカルの返事
――……ワ……タ……シ……
――ウ……バ……ワ……ナ……イ……
「……ああ」
――……タ……タ……カ……ワ……ナ……イ……
「……ああ」
父は、
ほんの少しだけ、
口元を緩めた。
「一つだけ、約束しろ」
――……ヤ……ク……ソ……ク……?
「無理するな。
壊れるまでやるな」
――……テ……゛……モ……
――カ……゛……ン……ハ……゛……ル……
「頑張りすぎるな、だ」
父は、
そう言って背を向けた。
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■残された二人
父の背中が家に入る。
ゆうたは、
しばらく動けなかった。
「……父さん、
あんなこと言う人じゃなかったのに」
ヒカルは、
しばらく考えてから言った。
――……オ……ト……ウ……サ……ン……
――コ……ワ……カ……ッ……タ……
――テ……゛……モ……
「でも?」
――……イ……マ……
――ス……コ……シ……
――ア……タ……タ……カ……イ……
ゆうたは、
思わず笑った。
「うん。
それでいいんだと思う」
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■夜の畑
夜風が吹く。
畑は静かだ。
ヒカルは、
空を見上げた。
――……コ……コ……
――イ……テ……
――ヨ……カ……ッ……タ……
「俺も」
二人の影が、
並んで地面に伸びていた。




