第2話 ヒカル、村に戻る
■帰り道
軽トラックの荷台に、ヒカルは座っていた。
固定ベルトは三本。
念入りすぎるほど。
――……ユウタ……
――コレ……
――オチル……?
「大丈夫。落ちない」
――……ウン……
――シンジル……
ヒカルは小さくうなずく。
まだ言葉はたどたどしいけれど、
声には前よりも安心が混じっていた。
村へ向かう道。
見慣れた田んぼ。
風に揺れる稲の葉。
――……カゼ……
――キモチ……イイ……
「だろ?」
ゆうたは笑った。
ヒカルは、
その景色を一つひとつ、
確かめるように見ている。
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■最初の視線
村の入口に入った瞬間、
視線が集まった。
「あれ……?」
「ロボット……?」
「また……?」
小声が、あちこちから聞こえる。
ヒカルは少し、身をすくめた。
――……ミラ……レテル……
「大丈夫。
俺が一緒だから」
――……ウン……
ゆうたは、
そっとヒカルのそばに立った。
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■畑のおばあちゃん
最初に声をかけてきたのは、
あのおばあちゃんだった。
「あら……ヒカル君?」
目を丸くし、
それからゆっくり微笑む。
「……戻ってきたんかい」
――……オバアチャン……
ヒカルの声は震えている。
――……タダイマ……
「おかえり」
その一言で、
ヒカルのランプがぱっと明るくなった。
――……ヨカッタ……
ゆうたの胸が熱くなる。
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■冷たい言葉
だが、
温かい空気ばかりじゃない。
「また面倒の種を……」
「今度は壊れないのか?」
「農業ロボットなんて……」
ヒカルは、
ゆっくりと下を向いた。
――……ワタシ……
――イラナイ……?
その問いに、
ゆうたはすぐ答えた。
「そんなことない」
「ヒカルは必要だ。
俺にとっても、
……この村にとっても」
言い切る声に、
ざわめきが一瞬止まる。
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■父の視線
そのとき。
「……ゆうた」
父が、
家の前に立っていた。
ヒカルは、
一瞬で固まる。
――……ユウタ……
――コワ……イ……
「大丈夫」
ゆうたは、
ヒカルの前に立つ。
「父さん。
ヒカルは……戻ってきた」
父は、
ヒカルをじっと見つめる。
以前よりも、
少しだけ穏やかな目で。
「……前より、
ちゃんと立ってるな」
――……ア……
――ガンバ……ッタ……
ヒカルの返事は、
ぎこちない。
父は目を細めた。
「……そうか」
それだけ言って、
家の中に戻る。
拒絶でも、
受容でもない。
でも確かに、
“変化”だった。
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■一歩、前へ
夕方。
家の前の畑。
ヒカルは、
土の上にそっと足を下ろす。
――……ドロ……
――ダイジョ……ブ……?
「今日は無理しなくていい」
――……イヤ……
――ヤリ……タイ……
ヒカルは、
ゆっくりと鍬を握った。
ぎこちなく、
でも確実に。
土が、
少しだけ動く。
――……デキ……タ……
「うん。できた」
それだけで、
十分だった。
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■村の夕焼け
夕日が、
村をオレンジ色に染める。
ヒカルは空を見上げた。
――……キレ……イ……
「また一緒に、
いろんな景色見ような」
――……ウン……
――ユウタ……
――……イッショ……
言葉はまだ短い。
でも、その声は――
確かに“生きている”。




