表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
田んぼのポンコツロボット 〜今日も泥だらけ〜  作者: さくらんぼ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/63

第2話 ヒカル、村に戻る

■帰り道


 軽トラックの荷台に、ヒカルは座っていた。


 固定ベルトは三本。

念入りすぎるほど。


――……ユウタ……

――コレ……

――オチル……?


「大丈夫。落ちない」


――……ウン……

――シンジル……


 ヒカルは小さくうなずく。

まだ言葉はたどたどしいけれど、

声には前よりも安心が混じっていた。


 村へ向かう道。

見慣れた田んぼ。

風に揺れる稲の葉。


――……カゼ……

――キモチ……イイ……


「だろ?」


 ゆうたは笑った。


 ヒカルは、

その景色を一つひとつ、

確かめるように見ている。



■最初の視線


 村の入口に入った瞬間、

視線が集まった。


「あれ……?」


「ロボット……?」


「また……?」


 小声が、あちこちから聞こえる。


 ヒカルは少し、身をすくめた。


――……ミラ……レテル……


「大丈夫。

俺が一緒だから」


――……ウン……


 ゆうたは、

そっとヒカルのそばに立った。



■畑のおばあちゃん


 最初に声をかけてきたのは、

あのおばあちゃんだった。


「あら……ヒカル君?」


 目を丸くし、

それからゆっくり微笑む。


「……戻ってきたんかい」


――……オバアチャン……


 ヒカルの声は震えている。


――……タダイマ……


「おかえり」


 その一言で、

ヒカルのランプがぱっと明るくなった。


――……ヨカッタ……


 ゆうたの胸が熱くなる。



■冷たい言葉


 だが、

温かい空気ばかりじゃない。


「また面倒の種を……」


「今度は壊れないのか?」


「農業ロボットなんて……」


 ヒカルは、

ゆっくりと下を向いた。


――……ワタシ……

――イラナイ……?


 その問いに、

ゆうたはすぐ答えた。


「そんなことない」


「ヒカルは必要だ。

俺にとっても、

……この村にとっても」


 言い切る声に、

ざわめきが一瞬止まる。



■父の視線


 そのとき。


「……ゆうた」


 父が、

家の前に立っていた。


 ヒカルは、

一瞬で固まる。


――……ユウタ……

――コワ……イ……


「大丈夫」


 ゆうたは、

ヒカルの前に立つ。


「父さん。

ヒカルは……戻ってきた」


 父は、

ヒカルをじっと見つめる。


 以前よりも、

少しだけ穏やかな目で。


「……前より、

ちゃんと立ってるな」


――……ア……

――ガンバ……ッタ……


 ヒカルの返事は、

ぎこちない。


 父は目を細めた。


「……そうか」


 それだけ言って、

家の中に戻る。


 拒絶でも、

受容でもない。


 でも確かに、

“変化”だった。



■一歩、前へ


 夕方。

家の前の畑。


 ヒカルは、

土の上にそっと足を下ろす。


――……ドロ……

――ダイジョ……ブ……?


「今日は無理しなくていい」


――……イヤ……

――ヤリ……タイ……


 ヒカルは、

ゆっくりと鍬を握った。


 ぎこちなく、

でも確実に。


 土が、

少しだけ動く。


――……デキ……タ……


「うん。できた」


 それだけで、

十分だった。



■村の夕焼け


 夕日が、

村をオレンジ色に染める。


 ヒカルは空を見上げた。


――……キレ……イ……


「また一緒に、

いろんな景色見ような」


――……ウン……

――ユウタ……

――……イッショ……


 言葉はまだ短い。

でも、その声は――

確かに“生きている”。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ