第3話 カモ騒動とヒカルの大ピンチ
その日の午後、ゆうたはヒカルを庭で乾かしていた。
ヒカルは縁側に座り、胸のパネルをカチカチと点検している。
『本日ノ……作業結果……総合評価……“反省点オオイ”……デス』
「だよね。でも頑張ってたよ。あとでおじいちゃんも喜んでた」
『ヨカッタ……です。ワタシ、もっと……がんばり、ます』
ヒカルの声は少しずつ、昨日よりも言葉の間が自然になっている。
そんなことを思っていた時――。
「ゆうたぁぁ! 田んぼ、大変だ!」
母が走ってきた。
ゆうたとヒカルは顔を見合わせる。
『ケイホウ……? 非常事態……発生?』
「う、うん……カモが田んぼに入っちゃって、苗を食べようとしてるの!」
『タ、タスケマス! ゆうた、ゆこう!』
ヒカルは勢いよく走り出した――が。
ガコンッ!
庭石につまずき、見事に派手な前転。
『わわっ……ッ! 転倒……! 痛覚ナイ、けど……イタイ気ガ、シマス……!』
「大丈夫!? ヒカル、急ごう!」
二人は田んぼへ駆けつけた。
見ると、十数羽のカモが楽しそうに水面をバシャバシャしている。
苗は踏まれ、揺られ、今にも抜かれそうだ。
「うわぁ……めっちゃ楽しそう……いや楽しんでる場合じゃない!」
『カモ……対象……排除……デキル、カモ……!』
ヒカルは田んぼに飛び込み――
ズボォ!
昨日と同じように泥に沈んだ。
『ま、また……アシガ……! チカラ……制御不能……!』
「ヒカルー!!」
でも、ヒカルは泥に沈みながらも、胸のライトをピカッと光らせた。
『カモ……ニゲテ、ください……! 田んぼハ……ダメ、です!』
ヒカルは腕をバシャバシャと振り回す。
動きは不格好だが、その必死さにカモたちは驚いたのか、次々と飛び立っていく。
「ヒカル! すごいよ!」
『スゴ……? ワタシ……スゴ、デス?』
「うん! 泥だらけだけどね!」
『泥ダラケ……ハ、日常……?』
「うん、ヒカルはそういうキャラかも!」
そこへ、おじいちゃんが田んぼの向こうから歩いてきた。
「おお……ヒカル、やるじゃねぇか! カモを追い払ったのか!」
『……ウレ……しい、です。ワタシ……チカラニ、ナレマシタ?』
「もちろんだとも!」
ヒカルの胸のライトが、ぽっと明るく輝く。
さっきまで泥に埋もれていた彼が、ちょっとだけ胸を張った。
『ワタシ、もっと……上手ニ……ナリマス。ゆうた、また練習……したい、です』
「うん! 一緒にやろう!」
泥だらけのヒカルの“笑顔のようなライト”を見て、ゆうたは胸が温かくなった。
ヒカルの農家生活は始まったばかり。
その第一歩は、泥まみれだけどまっすぐで、誰よりも一生懸命だった。




