表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
田んぼのポンコツロボット 〜今日も泥だらけ〜  作者: さくらんぼ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/60

第4話 ヒカルの“心”を探す旅

■ヒカルのデータは足りない


 夜。工房には蛍光灯の青い光だけが灯り、

ゆうたと陸斗の肩に疲れが重くのしかかっていた。


 画面に映る数字は……進捗3%。


「……全然進まねぇな」


「ヒカルのコアデータが足りないんだと思う。

このメモリだけじゃ……ヒカル全部を再現できない」


「じゃあ……どうする?」


「ヒカルが触れた物、見た景色、

記録した音声……

“ヒカルが存在した証拠”を集めれば、

補完できるはずだ」


「なるほどな……ヒカルの“生活ログ”ってわけか」


 ゆうたは立ち上がる。


「……集めよう。ヒカルが残したもの全部」



■ゆうた、村へ歩き出す


 次の日。

ゆうたはヒカルと歩いた道を一つずつ巡っていった。


 田んぼのあぜ道。

ヒカルが最初に転んだ場所。

おばあちゃんの畑。


 どこに行っても、

ヒカルの姿が脳裏に浮かぶ。


――ユウタ ココ クサノニオイ スキ。


――オバアチャン ワラッタ。ヨカッタ。


――ユウタ オナカ スイタ?


 全部、宝物だった。


「ヒカル……絶対、戻すから」



■ヒカルが“好きだった場所”


 ゆうたが一番長く足を止めたのは、

村の裏手にある小川だった。


 ヒカルがはじめて“水に触れて錆びた場所”。


「あの時は本当に焦ったな……」


 苦笑しながら、水面を見る。


 そのとき。


「ゆうた君?」


 振り返ると、おばあちゃんが立っていた。


「ヒカル君……いつもここで、

水の流れを見てたよ」


「……え?」


「なんだかね、楽しそうだったんだよ。

水が怖いのに、近づいてねぇ」


 おばあちゃんは

そっと小さな金属片を差し出した。


「これ、落ちてたんだよ。

ヒカル君の……じゃろ?」


 くすんだネジひとつ。

でも、それは確かにヒカルのものだった。


「……ありがとうございます」


 ゆうたは深く頭を下げた。



■陸斗からの電話


 帰り道、ポケットの端末が鳴った。


「陸斗?」


『ゆうた、すぐ戻ってこい!

やべぇデータが出てきた!』


「えっ……!」


 ゆうたは走り出した。



■工房に戻ると──


 端末の画面いっぱいに、

不規則な数字の羅列が並んでいる。


「これ……何?」


「ヒカルの“感情ログ”だ」


 陸斗の表情は興奮で震えていた。


「普通のロボットは、感情を記録する機能なんてねぇ。

なのにヒカルは――

“ゆうたと過ごした時間”だけ、

細かく、丁寧に保存してた」


 ゆうたの胸が熱くなる。


「それってつまり……」


「ヒカルには、

もうとっくに“心”が芽生えてたってことだよ」


 その瞬間、

机の上のメモリーデバイスがまた微かに光った。


――ユウタ……


 かすかな声が響く。


「ヒカル……!」



■復元進捗、急上昇


 陸斗が画面を叩く。


「ゆうた!データが補完された!

進捗……30%!」


「本当に……?」


「あぁ。ヒカルは自分の“心”を、

全部ゆうたのそばに置いていったんだ」


 ゆうたの目に涙があふれる。


「ヒカル……ありがとう」


 デバイスは、

それに応えるようにあたたかく光った。



■しかし、エラー発生


 次の瞬間――


【警告:破損データを検出】


「えっ?」


「ちょ、待て!なんだこれ……!」


 画面に真っ赤な文字が踊る。


【主要機能“自己認識”データが欠損しています】


陸斗が顔色を変える。


「ゆうた……

ヒカルは……“自分が何者か”ってデータを失ってる」


「――っ」


「復元しても……

ヒカルは“ヒカル”として戻れない可能性がある」


 工房に、

再び重い沈黙が落ちた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ