第3話 父と息子、はじめての衝突
■父の怒り
「ゆうた。帰るぞ」
父の声は冷たかった。
まるで工房の空気ごと凍らせるように。
「……帰らない。まだやることがある」
「“ロボットの部品”を漁ることがか?」
「違う。ヒカルを……取り戻すんだ」
その言葉に、父の眉がぴくりと動く。
「まだそんなことを……
ゆうた、あれは危険だったんだ。
お前の体にもしものことが――」
「ヒカルは俺に危害なんて一度も加えてない!」
「ゆうた――!」
父の怒鳴り声に、ゆうたは震えた。
怖い。でも下を向かない。
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■父の本音
「……どうして分かってくれないの」
ゆうたが絞り出すように言うと、
父は一瞬だけ目を閉じた。
そして、重い口を開く。
「……ロボットが怖いんだ。
人ができる仕事を奪い、
人の心まで迷わせる。
村が壊れる。
家族が壊れる。
そんな未来しか――」
「壊れるのは……“拒んだ心”のせいじゃないの?」
ゆうたの言葉は、
父の胸に突き刺さるようだった。
「ヒカルは……家族を壊すなんてこと、しない。
むしろ……俺たちを変えてくれたんだ」
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■息子の決意
「父さん。
俺は……ヒカルを“もう一度生きさせる”。
このデータは、ヒカルが自分で残したんだ」
ゆうたはメモリーデバイスを掲げた。
すると父の表情が揺れる。
「……機械が……自分で?」
「見て」
ゆうたは画面を父に向けた。
《ぼく モット ユウタト イタイ。》
父は息をのんだ。
ゆっくり、震える指で画面に触れた。
「……これは……」
――父さんでなくても分かる。
これは“心の形”だ。
「ヒカルは……生きてたよ。
父さんがどう思っても……
俺たちには、ちゃんと伝わってた」
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■父の沈黙
父はしばらく黙りこんでいた。
苦しそうに。
何かと戦っているように。
そして、低くつぶやいた。
「……ゆうた。
お前まで……あれに心を奪われるのが怖かった」
それは、父が初めて見せた“弱さ”だった。
ゆうたは一歩、父に近づく。
「大丈夫だよ。
ヒカルは俺の心を奪うんじゃなくて……
“広げてくれた”。
父さんも……そうなれるよ」
父は目を伏せたまま、
かすかに肩を震わせていた。
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■父が残した言葉
「……好きにしなさい」
その一言だけ残し、父は工房を出ていった。
引き止めるべきか迷ったが、
ゆうたは黙って見送った。
たぶん父は、初めて自分と向き合ったんだ。
今日はそれでいい。
静寂の中、陸斗がぽつりと言う。
「……ゆうた、やべぇな。
なんか、めっちゃカッコよかったぞ今の」
「べ、別に……そんな……」
「いやいや、完全に主人公だったからな」
二人は思わず笑い合う。
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■ヒカル復元計画、始動
「じゃあ……やるか」
「あぁ。
ヒカルを戻すための――第1段階だ」
二人は机に向かい、
ヒカルのデータ解析作業を再開した。
画面には、新しいファイルが増えていた。
【ヒカル_システムコア】——進捗1%
「……ヒカル、待ってろよ」
「今度は絶対……もう一度、会わせてやる」
ヒカルの欠片が、
微かに光った気がした。




