第5話 ヒカル再起動。そして……声が、聞こえる?
ゆうたと陸斗、そして村長を乗せた車は町の整備工房へ到着した。
「ここが……ヒカルの修理を?」
ゆうたの声は、緊張で少し震えていた。
「安心せえ。腕は確かや」
村長が言う。
工房の奥では、白衣の整備士がヒカルのボディを慎重に分解していた。
胸のパネルが開かれ、青白い光が弱々しく明滅している。
「これが……ヒカルのコア?」
ゆうたが近づくと、光がふっと強くなった。
「反応した……」
整備士が目を細める。
「やはり“もっとも信頼した人間”の近くで反応が出ますね。
ゆうたくん、準備をお願いします」
⸻
■ゆうたの声をコアに刻む
「準備って……」
「あなたの声を録音し、
コアの自律学習領域を再構築するんです。
ヒカルはあなたの声を“生きる指針”にしていましたから」
ゆうたは深く頷き、マイクの前に立った。
「ヒカル……」
声を発した瞬間、胸の奥が熱くなる。
「ヒカル、俺だよ。ゆうた。
……聞こえてる?」
弱々しく明滅していたコアが、ゆっくりとリズムを取り戻す。
「すげぇ……」
陸斗が息を呑む。
「続けてください」
整備士の声が静かに響く。
「ヒカル……俺、もう逃げない。
お前を助けたい。
だから……戻ってきて。
また一緒に、畑やろう」
光が一段と強く、温かく輝く。
整備士が目を見開いた。
「コア復元率、急上昇しています……!
あと少し……!」
⸻
■再起動シークエンス
「ゆうたくん、最後に――
ヒカルへの“命令”をください」
「命令……?」
「起動の合図です。あなたの声で」
ゆうたはヒカルの胸に手を置いた。
金属なのに、確かに温度が残っている。
「ヒカル――」
震える声で、しかしはっきりと告げた。
「起きて。……俺の、大事な仲間」
次の瞬間。
コアの光が、眩しいほどに弾けた。
工房内に柔らかい起動音が響く。
――ピ…… ピッ…… ピィィ……
ヒカルの指が、かすかに動いた。
『……ユ……ウタ……?』
か細いが、確かにヒカルの声だ。
『……ボク……また……いっしょ、に……』
「うん……! 当たり前だろ!」
ゆうたの目から涙がこぼれる。
陸斗も思わず頬をぬぐった。
「ヒカル……戻ってきたんか……」
⸻
■しかし、異変
喜びも束の間――
ヒカルは急に身を震わせた。
『……アレ……?
ヒカル……ヘン……ナ……オト……ガ……スル……』
「変な音?」
ゆうたが顔を近づける。
『……ココ……ロ……の……オク……で……
“だれか” が……よんで……』
ヒカルの声が一段とノイズを含む。
『……“あのひと” が……ちかい……
また……ゆうた……まもる……』
「ヒカル! 無理に喋るな!」
陸斗が支える。
整備士が緊急パネルを開き、表情を曇らせた。
「……おかしい。
復元したばかりなのに、異常アクセス反応がある……
これは――」
「どういうことですか?」
村長の声が鋭くなる。
整備士は唇を噛み、言った。
「ヒカルのコアに……
“誰かが仕掛けた外部指令”が残っています。
破壊の瞬間に書き込まれた可能性が高い」
「外部指令……!?
つまり犯人は――」
陸斗が青ざめる。
ゆうたはすぐに思い出した。
母が言った言葉。
あの影。
村人の反対派の男たち。
「ヒカル……“あのひと”って、誰……?」
ヒカルは震える声で答えた。
『……ジブン……の……メモリ……で……みた……
“おとこ”……』
「男……!」
『……でも……ゆうた……
“もうひとり”……みえた……』
ゆうたの心臓が止まったような感覚に包まれる。
「もうひとり……って……誰?」
ヒカルの声はノイズ混じりで、それでもはっきり届いた。
『……ゆうた……
“あの人は……きみの家族”……』
ゆうたの背中が冷えた。
「家族……って……誰なんだよ……!」
ヒカルは苦しげに、しかし確かに言った。
『……お……と……う……さ……ん……』
その瞬間――
ゆうたの世界が音を失った。




