第2話 初めての田んぼで大暴れ
翌朝。
ヒカルは家の縁側で太陽光を浴びながら、カチカチと胸のパネルを起動していた。
『本日ヨリ、農作業ヲ……開始……します!』
少し頼りない声だが、ゆうたは手を叩いて喜んだ。
「ヒカル、今日は田植えだよ! 一緒にやろう!」
『了解……しました! タウエ……タウエ……検索中……』
ヒカルの目が、青く点滅する。
おじいちゃんが笑いながら肩を叩いた。
「よし、まずは田んぼに入ってみるか。ゆっくりでいいからな」
ヒカルは大きくうなずき――
『いざ、入水作業……開始!』
と勢いよく片足を踏み入れた瞬間。
ズボォッ!!
足首まで泥に沈んだ。
『えっ!? えっ!? アシ……抜ケマセン……!!』
「ゆっくり入れって言ったろ!!」
おじいちゃんが急いで支えるが、ヒカルは次の瞬間、体勢を立て直そうとして――。
バシャァァーン!
見事に前のめりで泥の海へダイブした。
『システム……警告……泥水ガ、予想以上……!』
「予想以上って何!? 大丈夫なの!?」
母が半泣きで叫ぶ。
ヒカルは泥まみれで立ち上がった。
その姿を見て、ゆうたは爆笑する。
「ヒカル! 顔だけはきれいに拭こう! なんか……ちょっとホラー!」
『……顔面クリーニング……希望……』
タオルで拭かれると、ヒカルは照れたように目を細める。
『ヨシ……再挑戦! 田植エ……開始!』
ヒカルは苗を手に取り、慎重に田んぼへ入る。
しかし――。
『苗ヲ 垂直ニ……植エマス!』
ポンッ。
「ヒカル、それ逆さ!!」
『ギャフッ!?』
ヒカルは慌てて植え直そうとして、今度は苗束を派手にぶちまけた。
バサァァッ!
『苗ガ……四散……! 回収……! 回収……!』
ヒカルはもはや田んぼの中を四つんばいで走り回る。
動くたびに泥が跳ね、周りの家族も巻き添えに。
「もー!! ヒカル、落ち着けー!!」
「ゆうた、近寄ると泥かぶるよ!!」
騒ぎを聞きつけた近所のおじさんが、遠くから笑って見ていた。
「ありゃひでぇな。なんだあのロボット……かわいいけどよ」
昼頃には、ヒカルはすっかり泥の彫像と化していた。
『作業効率……著シク低下……シマシタ……』
「低下どころじゃないよ! 稼働初日だよね!?」
それでもヒカルは胸を張って言った。
『……ワタシ、学習……シマス。明日ハ、モット上手ニ……できマス!』
ゆうたは笑って、ヒカルの泥だらけの手を引いた。
「うん! ゆっくり覚えようね。だって――」
ヒカルがこちらを振り返る。
「ヒカルは、うちの家族だから!」
その言葉に胸のライトが、ぽっと明るく光った。
『……家族……。うれしい、デス』
こうしてヒカルの農作業初日は、大暴れのまま幕を閉じた。




