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田んぼのポンコツロボット 〜今日も泥だらけ〜  作者: さくらんぼ


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第4話 母の秘密と、ヒカルの復活条件

 ゆうたは、役場の前で立ち尽くしていた。

 母の姿が、ヒカルが倒れる“その場所”にあったなんて――

 信じたい気持ちと、信じたくない気持ちが胸の中でぐちゃぐちゃに渦を巻く。


「ゆうた、大丈夫か?」

陸斗の声は、いつになく優しかった。


「……わかんない。

母さんがどうして、あそこに……」


 考えただけで胸が苦しくなる。


「とにかく、聞かんと始まらん。

村長、母さんは今どこに?」


「家におるはずじゃ。

だがその前に……」


 村長は眉を寄せ、もう一枚の書類を広げた。


「ヒカルの復活には“ある条件”が必要だ。

これは整備工房から来た追加連絡だ」


「条件……?」


「ヒカルの『自律学習コア』が破損している。

それを補うためには――

“ヒカルがもっとも信頼した人物の音声データ” が必要らしい」


「信頼した……人物?」


 ゆうたと陸斗が顔を見合わせる。


「そんなの……ゆうたしかおらんやろ」


「……でも、もし……」

ゆうたの声が震える。

「もし母さんが、ヒカルを……」


 その言葉すら口から出すのが辛かった。


「ゆうた」

村長が静かに言う。


「真実を確かめなければ、前に進めん。

母親はお前の家族じゃ。

どんなことがあっても、話を聞く価値はある」


 ゆうたは小さく息を呑み、うなずいた。


「……行きます」



■母の部屋のドアの前で


 家に戻ると、父は畑に出ていて、家には母だけがいた。


 扉を挟んで、ゆうたの心臓がドクドクと速くなる。


「ゆうた? 帰ったの?」

母の声はいつもどおりの柔らかさだ。


 ――本当に、母さんが関わってるのか?


 疑うことが、苦しい。


「……母さん、話がある」


 ゆうたがドアを開けると、母は振り返り、少し驚いた顔をした。


「どうしたの? そんな顔して」


「母さん……昨日、ヒカルが倒されたとき……

あの場所にいたって、本当?」


 母の表情が凍りついた。


「……どうして、それを?」


 その反応が、ゆうたをさらに不安にさせた。


「ヒカルの記録に残ってたんだ。

母さんの足音が……」


 母はぎゅっと唇を噛んだ。

その手が震えている。


「ゆうた……言わなきゃいけないことがあるの」


「……母さん……?」


 母はゆっくりと座り、深く息を吸った。



■母の告白


「……私、ずっとロボットが怖かったの。

あなたが小さい頃、都会で事故に巻き込まれたとき……

助けてくれなかったのが、警備ロボットだったから」


 ゆうたの息が止まる。


「ロボットは“正しい判断”しかしない。

だけど……その正しさが、人を傷つけることもある。

だから私は……ロボットが家族のそばにいるのが怖かった」


「……母さん」


「でも、父さんがヒカルを導入すると言い出して……

私は反対できなかった。

反対すれば、あなたが“時代遅れの母親”だって笑われると思って……」


 母は両手をぎゅっと握りしめる。


「昨日……あなたを迎えに行った帰り道、

偶然ヒカルのそばを通ったの。

そのとき、誰かの影が走ってくるのが見えて……

怖くなって隠れたのよ……」


「じゃあ……母さんは何もしてないんだね?」


 母は強く首を振った。


「そんなこと、するわけないでしょ。

私はただ……怖くて動けなかっただけ」


 涙がぽろぽろと落ちる。


「ごめんね……ゆうた。

私のせいで、疑わせてしまって」


 ゆうたは、胸の奥の重石がふっと外れていくのを感じた。


「母さん……ありがとう。

話してくれて」


 陸斗もそっと息をついた。


「ほら見ろ、ゆうた。

おばさんがそんなことするわけないって、俺は信じとったぞ」


 母は小さく笑った。


「……ヒカル、助かるの?」


「うん。

そのためには……俺の声が必要なんだって」


 母はそっとゆうたの肩に手を置いた。


「行っておいで。

ヒカルくんを……助けてあげて」



■決意の出発


 ゆうたと陸斗は、村長の車に乗って町へ向かった。

ヒカルのコアを修復するために。


(待ってて、ヒカル。必ず助けるから)


 胸の奥で、強い光が灯る。


 そして――


ヒカルの復活が、“村全体の真実”を暴くことになるとは

このとき誰も知らなかった。

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