第3話 ヒカルのコアと、村の嘘
ゆうたと陸斗は村長について役場へ急いだ。
ヒカルの修理で胸がいっぱいなのに、今度は“犯人が複数”という衝撃。
頭が追いつかない。
「村長、証拠って……いったい何なんですか?」
「これだ」
村長が差し出したのは、古びたUSBメモリ。
見るからに年代物で、テープが貼ってある。
《ヒカル導入テスト映像 ― 7年前》
「テスト……映像?」
「ヒカルが、正式に稼働する前の記録だ。
今回の件で倉庫を調べていたら、偶然見つかってな……
それを見て、わしは震えた」
村長の声は低い。
「……ヒカルは最初から、村の“一部”に憎まれていたんだ」
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■古い映像が語る真実
役場のモニターに映像が映し出される。
初期型のヒカルが、ぎこちなく田んぼに立っている。
今のヒカルよりさらに固い動作で、声ももっと金属的だった。
『ハ…ハイ……ココ…ロ、シラベマス』
村の男たちが写り、苛立った声が飛ぶ。
「ロボットなんて信用できるか」
「こんなのに手伝わせる? ふざけんな」
「田んぼは“家族”だけで守るもんやろ」
映像の端には、ひとりの男が石を蹴っている。
その表情には、なぜか恐れと怒りが混ざっていた。
『ダ…イジョウブ…デス……』
ヒカルの小さな声。
今と同じ、どこか一生懸命な優しい音。
「……これ、村長。誰なん?」
陸斗が押し殺した声で問う。
「名前は出せんが……
今回の“石を投げた影”と、体格が酷似しとる」
つまり――
“今回の犯人”は、ヒカルが導入されて以来ずっと反対してきた人間。
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■ヒカルのコアに残されたメッセージ
「それともうひとつ、重大な情報がある」
村長が紙を差し出す。
整備士から送られてきた報告書だ。
「ヒカルの“コアメモリ”に、壊れる前の音声ログが残っていた」
「録音……?」
「ヒカルは自分の判断で一定の音声を保存する仕様らしい。
その中に……昨日のものがあった」
ゆうたの手が震える。
「……聞かせてください」
スピーカーが再生を始める。
――『ユウタ……オト……ガ……スル……』
――『ダイジョウ……ブ…… ボク……ガ……マモ……』
――『アッ……?』
ブツッ。
音声はそこで途切れた。
ゆうたの胸が締め付けられる。
「……ヒカルは、俺を守ろうとして……」
父の警告、村人の反感、古い映像。
すべてが一本の線につながる。
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■ゆうたの中で何かが決まる
「ゆうた」
陸斗がそっと声をかける。
「修理、絶対間に合わせよう。
ヒカル……まだ終わっとらん」
「……うん」
ゆうたは涙を拭って、顔を上げた。
「ヒカルを直して……
そして、真実をはっきりさせる。
俺は逃げない。絶対に」
村長はゆっくりうなずいた。
「覚悟ができたようだな。
すぐに町の整備工房へ向かおう。
ヒカルの基盤は……まだ生きている」
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■ヒカルが最後に見たもの
役場を出ようとしたそのとき。
「村長! もうひとつ報告です!」
若い職員が走ってきた。
「ヒカルのカメラログを解析したところ……
“石を投げた影”が近づく直前、
ヒカルは“誰かの足”を検知していました」
「誰の足ですか?」
「それが……」
職員は困惑した顔で告げた。
「ヒカルは“ゆうたくんの母親”の足音と一致すると……」
「……え?」
ゆうたの時間が止まった。
母さん……?
なんで……?
どうしてそこにいた……?
陸斗が息を呑む。
「ゆ、ゆうた……まさか……」
「いや……そんなわけ……」
思考が追いつかないまま、ゆうたの胸に“疑い”が突き刺さった。
ヒカルが倒される直前、
そこに母がいた――?




