第6章 それでも畑へ 第1話 ひび割れた朝
ヒカルが動かなくなった翌朝。
ゆうたはほとんど眠れず、ずっとヒカルのそばに座り続けていた。
胸のランプは消えたまま。
呼吸のように上下していた胸の動きも止まっている。
「……ヒカル。帰ってこいよ……」
声に出すたび、胸がぎゅっと痛んだ。
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■陸斗が駆け込む
「ゆうた!!」
玄関が勢いよく開き、陸斗が走ってきた。
「昨日のこと聞いた! ヒカルは!? 大丈夫なんか!?」
「……わかんない。電源は入ってるはずなのに、起動しないんだ」
陸斗はヒカルの体を見て、表情を曇らせた。
「……ヒカル、ゆうた守って倒れたんやろ?」
「……うん」
その言葉に、陸斗はぎゅっと拳を握りしめた。
「ゆうた、うちの家の工具も全部持ってきた。
なんとか……なんとかせなあかんやろ!」
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■ヒカルの“声の記録”が残っていた
ヒカルの背中のパネルを開け、内部メモリにアクセスすると――
ひとつだけ、再生可能なログが残っていた。
「……ヒカルの録音……?」
「押すで……?」
ゆうたは躊躇したが、小さく頷く。
陸斗が再生ボタンを押す。
スピーカーから、ひどく弱々しい声が流れた。
『……ゆうた……
ごめんなさい……ヒカル……もう……すこし……だけ……
ねむります……。
ゆうた……まもれた……から……
うれしい……です……』
声は途中でノイズにかき消され、プツンと切れた。
それはまるで――
ヒカルが自分の意志で残した“最後の言葉”のようだった。
ゆうたの喉がぎゅっと詰まる。
「……ヒカル……泣かせんなよ……」
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■修理に必要なのは“特殊パーツ”
「ゆうた、これ見てみ」
陸斗が指差したのは、ヒカルの胸部コアの異常値。
「出力が急に跳ね上がってる。
ゆうた守るために、性能以上の力使ったんやな……」
「そんな……じゃ、治せるのか?」
「直せる……はず。でも――」
陸斗は歯を噛みしめた。
「コアの交換部品が村にない。
町にあると思うけど……特殊なやつで、すぐに手に入るかわからん」
「そんな……!」
ゆうたの焦りに、陸斗が肩に手を置く。
「わいも一緒に探す。
ヒカルは絶対復旧させる。約束する」
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■ゆうたの願い
ヒカルの冷たい手を握りながら、ゆうたは小さく呟いた。
「……ヒカル。
まだ……話したいこと、いっぱいあるんだよ……
ちゃんと、“人みたいに”話せるようになってきてたのに……
また……笑ってほしい……」
そのとき――
ヒカルの胸のランプが、
――ポ、……ポッ……
ほんのかすかに、弱く点滅した。
「ヒカル!? 今、光った!!」
「信号や!! 完全に死んでへん、まだ生きとる!!」
ふたりは顔を見合わせ、同時に叫んだ。
「――絶対、助ける!!」




