第3話 誰がやったの? 〜陸斗の家を襲う“狙い”とヒカルの決意〜
詰まりを解消して村へ戻った三人は、ひとまず解散した。
しかし、ヒカルの胸にはずっと引っかかっているものがあった。
『……アノ……枝の積み方……。
自然……では……ありません……』
ヒカルの声は、昨日よりまた少し滑らかさを増していた。
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■陸斗の家にて
夕方、ゆうたが陸斗の家へ顔を出すと、
玄関先では陸斗のお母さんが困った顔をしていた。
「あっ、ゆうたくん……ちょうどよかった。
陸斗の畑の水路、また流れが悪いみたいなの」
「え、さっき直したはずなのに!」
嫌な予感がした。
「陸斗、いる?」
「裏の畑!」
ゆうたが裏手に走ると、陸斗が水路の前で腕を組んでいた。
「おそいぞー」
「また詰まってるの?」
「いや……詰まりじゃねぇ。これ見ろよ」
陸斗が指差した先には――
水路の側面に、ナイフのような傷が何本もついていた。
「これ……誰かが水路を削ってる……?」
「ああ。わざとだ」
陸斗の顔は珍しく怒りを含んでいた。
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■ヒカル、現場へ
事情を聞いたヒカルは、少し震える音声で言った。
『……確認……します……』
ヒカルは水路の傷をセンサーで読み取り始める。
その姿は、昨日よりも“人間らしく”、集中しているように見えた。
『……工具による……人工的な削れ……。
しかも……浅く……広く……。
水漏れ……起こりやすく……する……形状……です……』
「つまり……」
「完全に嫌がらせだな」
誰かが陸斗の家の水路だけを狙っている。
それはつまり――
ヒカルが助けたことで気に食わなかった誰かの仕業とも考えられた。
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■陸斗の本音
「なぁ、ゆうた……」
「ん?」
「あんなにやる気出してる家族じゃねぇのに……
うちを狙わなくたっていいだろ……」
強がって笑おうとする陸斗の声は、ほんの少し震えていた。
「陸斗……」
そんな中、ヒカルがそっと二人に近づく。
『……りくと……。
ヒカル……守りたい……です……。
みんなの畑……大事……です……。
だから……。
ヒカル……もっと……がんばる……!』
その言葉は、昨日より明らかに“意志”を帯びていた。
陸斗は目を丸くした後――
ぽつりと笑った。
「……なんだよそれ。
おまえ、ロボなのに……熱いやつだな」
ゆうたも笑った。
「ヒカルは仲間だよ」
『……ナカマ……。
ナカマ……うれしい……デス……』
ヒカルの声は、これまでで一番やわらかかった。
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■そして、夜
ヒカルが帰ろうとすると、ゆうたが声をかける。
「ヒカル、今日は気をつけて帰ってね。
犯人がまだ近くにいるかもだし」
『……だいじょうぶ……。
ヒカル……じぶんのこと……
すこし……こわい……けど……
でも……
ゆうた……りくと……守りたい……』
その言葉にゆうたの胸が温かくなる。
「無理はしないでね。
また明日も頼むよ、ヒカル!」
『……はい!』
ヒカルはぎこちない足取りながらも、
どこか誇らしげに村の道を歩いていった。




