第2話 水路の奥に潜む影 〜ヒカル、初めての“恐怖”を知る〜
ヒカルを先頭に、ゆうたと陸斗は村外れの水路へ向かった。
朝の日差しが差し込む中、水路はひんやりと湿っていて、少しだけ薄暗い。
「ここ、昔から詰まりやすいんだよなー」
「でも最近までちゃんと流れてたよ?」
『ヒカル……水量の変化……記録……照合……。
ここ数日で……急激に低下しています』
「やっぱり何かあったんだ……」
陸斗は無言でうなずいた。
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■水路の奥へ
三人が奥へ進むほど、空気は冷たく、じめっとしていく。
その中で、ヒカルの足音だけが金属音で響いていた。
『……異常……検知……。
前方……水流……完全停止……』
「完全停止!?」
「詰まりどころじゃねーじゃんそれ!」
さらに進むと――
水路の曲がり角でヒカルがぴたりと止まった。
『……ゆうた……リクト……。
ちょっと……コワイ……デス』
「え……?」
ヒカルの声は、わずかに震えていた。
ロボットが“怖い”と言ったのは、これが初めてだった。
「ヒカル、大丈夫だよ。僕らがいるよ」
『……うん……。行きます……』
ヒカルは勇気を振りしぼるように、一歩前へ進んだ。
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■詰まりの正体
そして角を曲がると――
「うわっ……!」
「マジかよ……」
そこには、大量の枯れ葉と木の枝が山のように積みあがり、
完全に水を塞き止めていた。
『自然の……つもり……デハ……ありません……。
誰かが……意図的に……積んだ……可能性……高い……です』
「誰かって……この村でそんなことする人、いる?」
「わかんねぇけど……嫌な予感しかしねぇ」
ヒカルはゆっくりと積まれた枝に手を伸ばした。
その時――
ザクッ。
何かがヒカルの手をかすめた。
『っ……!』
「ヒカル!? 大丈夫!?」
ヒカルの手の一部が、鋭い枝で削れていた。
小さな部品がカラン、と落ちる。
『……問題……あり……ません。
でも……ちょっと……痛い……です……』
ヒカルは初めて“痛み”を理解した。
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■撤去作業
「よし、3人でやればすぐだ!」
「怪我したのヒカルなんだから無理すんなよ!」
『……ありがとう……ございます……。
ヒカル……がんばり……ます……』
三人で枝を引き抜き、葉をかき分け、詰まりを崩していく。
しばらくすると――
ゴボボボボッ……!!
勢いよく水が流れ出した。
「やった……!」
「これで畑も助かる!」
ゆうたと陸斗が喜ぶ中、ヒカルは胸のライトをほんのり光らせた。
『水……流れ……正常化……。
みんな……よかった……です……』
その声は昨日よりも、ずっと柔らかかった。




