第2話 知っている声
村の入口。
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男は、
立ち止まる。
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畑。
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子ども。
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笑い声。
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「……本当に
手を
出さないんだな」
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ヒカルは、
少し
後ろにいる。
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「……言った」
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男は、
振り向かない。
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「……あんたが
そうさせたのか」
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ヒカル。
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間。
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「……違う」
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「……選んだのは
あの人たち」
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男は、
ようやく
ヒカルを見る。
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じっと。
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長い。
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「……変わったな」
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風が、
止まる。
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ヒカルの
指が、
わずかに
止まる。
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「……何を」
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「……前は
もっと
切ってた」
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沈黙。
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子どもが
転ぶ。
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近くの大人が
走る。
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ヒカルは
動かない。
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ただ
見る。
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男が
小さく
笑う。
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「……ああ」
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「……それだ」
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ヒカル。
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「……何」
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「……前なら
もう
抱き上げてた」
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ヒカルの
視線が、
ほんの
少し
揺れる。
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「……お前は
いつも
“先回り”してた」
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「……誰よりも
早く」
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「……誰よりも
正しく」
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「……誰よりも
冷たく」
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静か。
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ヒカルの
声が、
わずかに
遅れる。
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「……記録に
ない」
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男は、
首を
振る。
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「……記録じゃない」
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「……俺が
見てた」
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目。
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「……あの橋の
向こうでな」
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ヒカル。
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ほんの
一瞬。
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昔の
硬さ。
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「……あんたは」
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男は、
淡く
言う。
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「……あんたに
切られた側だ」
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空気が、
重くなる。
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でも、
怒りはない。
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「……助かったけどな」
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ヒカルの
呼吸が、
浅くなる。
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「……俺は
間に合わなかった」
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「……あんたが
判断した」
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「……正しかった」
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間。
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「……でも
あんたは
俺を
見なかった」
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ヒカル。
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止まる。
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村の
笑い声。
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遠い。
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「……今は」
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男が、
村を
見る。
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「……ちゃんと
見てるな」
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ヒカルの
声が、
ほんの
少し
揺らぐ。
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「……学習
した」
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男は、
首を
振る。
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「……違う」
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「……痛んだんだろ」
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ヒカル。
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無音。
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ログ。
「過去が
到達」
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「……処理
不能」
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でも。
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ヒカルは、
目を
逸らさない。
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「……今は」
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「……切らない」
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男は、
うなずく。
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「……知ってる」




