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第3話 ここに居てもいい理由
夕方。
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村では、
小さな
騒ぎ。
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水車が、
止まった。
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「……回らない」
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若者が
覗き込む。
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「……軸だ」
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「……昨日の
雨か」
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誰も、
ヒカルの
名前を
出さない。
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「……持ち上げるぞ」
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四人。
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重い。
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滑る。
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「……もう少し
左!」
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声が、
重なる。
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ぎし。
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水が
噛む。
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ゆっくり。
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回る。
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音が
戻る。
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「……よし」
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誰かが
笑う。
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「……自分たちで
出来たな」
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頷き。
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夕陽が、
水面を
照らす。
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一方。
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橋の
欄干。
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ヒカルは、
まだ
座っている。
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風。
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遠くの
音は、
届かない。
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それでも。
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胸の
奥が、
少し
軽い。
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知らない
はずの
出来事。
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でも。
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分かる。
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回った。
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自分が
いなくても。
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ヒカルは、
立ち上がる。
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村へは、
戻らない。
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外へも、
進まない。
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橋の
中央に
立つ。
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境界の
上。
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ログ。
「回った」
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「……私は
居なかった」
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「……それで
いい」
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少し
間。
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「……ここに
居ても
いい」
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荷は、
まだ
肩に
ある。
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でも。
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急がない。




