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第27章 それでも助けてしまう日 第1話 手が動く前に
朝。
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空が、
低い。
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雨の
匂い。
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ヒカルは、
外に
出る。
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畑の方から、
声。
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「……止めろ!」
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短く、
切羽
詰まった
声。
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ヒカルは、
足を
止める。
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呼ばれて
いない。
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それでも。
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見える。
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水路。
昨日
曲がった
場所。
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水が、
集まり
すぎている。
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「……間に
合わない」
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若者の
声。
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誰かが
走る。
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「……どう
する!」
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ヒカルの
指が、
わずかに
動く。
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でも。
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止める。
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深く
息を
吸う。
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「……待て」
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声は、
出さない。
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若者が、
歯を
食いしばる。
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「……ここ
開ける!」
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判断。
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水が
逃げる。
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遅い。
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でも、
崩れない。
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雨が
降り出す。
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しばらく
して。
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水位が
落ちる。
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現場が
止まる。
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誰も、
ヒカルを
見ない。
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ヒカルは、
静かに
踵を
返す。
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家に
戻る。
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手が、
少し
震えている。
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「……助け
なかった」
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「……助け
たかった」
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その
両方が
残る。
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ログ。
「手が
動かなかった」
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「……それは」
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「……冷たさ
じゃない」
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「……信じた
証」




