第1章 ポンコツロボット、村へ来る 第1話 ヒカル、家族と出会う
村の外れにある田んぼ道を、一台の軽トラックがゆっくりと走ってくる。
荷台には、青いビニールシートに包まれた大きな箱。そして、隣で運転しているおじいちゃんの顔は、いつになくニコニコしていた。
「ついに来たぞ。これからうちの農業の時代が変わるんだ」
自信満々にそう言うおじいちゃんに対し、助手席に乗る父は眉をひそめる。
「……ほんとに買っちゃったのかよ、親父。こんな田舎でロボットなんか使ってる家、聞いたことねぇぞ」
「誰も使ってないから、先に導入する意味があるんだろうが。時代はAIだぞ、AI」
その会話を、軽トラの後ろから自転車でついてくる少年――ゆうたが聞いていた。
ゆうたはワクワクを抑えられず、トラックと並ぶようにして言う。
「おじいちゃん! 本当にロボット来るの? アニメみたいなやつ?」
「どうかなぁ。最新型……と言いたいところだが、まあまあ手頃なやつだ」
父が呟く。
「つまり安物か……」
家に着くと、おばあちゃんと母が玄関から飛び出してきた。
「まあまあ、大きな箱だねぇ。これ全部ロボットなのかい?」
「説明書によれば、身長は人間の大人くらいらしいよ」と母。
「そんなに大きいの!? 怖くない?」とおばあちゃん。
「怖くないって。ほら、開けるぞ!」
おじいちゃんが勢いよくビニールシートを外し、箱のフタを開ける。
カシャーン、と軽い金属音。
現れたのは、銀色のボディに丸い目、どこか愛嬌のある顔をしたロボットだった。
小さく胸のランプが点滅し、機械音声が響く。
『ハジメマシテ。家農サポート型AIロボット、ヒカル、トウジョウ……しました……!』
わずかに語尾が震えるのが、逆に可愛い。
「おおっ、本当に喋った!」「すげぇ! ヒカルって名前なんだ!」
ゆうたが目を輝かせる一方で、父は腕を組んだまま微妙な顔。
「なんつーか……思ったより……ぽやっとしてるな」
「ぽやっとしてません!」とヒカルがピッと背筋を伸ばすが――。
次の瞬間、バランスを崩して、
ズシャァッ!!
勢いよく田んぼのぬかるみに倒れ込んだ。
『あっ……ぬ、ぬかるみ……想定外……ッ……!』
「はははっ!」ゆうたが大笑いする。
「大丈夫かい?」おばあちゃんが心配して手を伸ばす。
父は頭を抱えた。
「ほら見ろよ親父、絶対まともに仕事できねぇって!」
「いやいや、最初は誰でも失敗する。機械だってそうさ!」
おじいちゃんがロープでヒカルを引っ張り上げる。
ヒカルは泥だらけになりながら立ち上がった。
『……初日カラ……泥ダラケ、になりました……』
「似合ってるよ、ヒカル!」
「似合ってないです!」
家族の笑い声が、春風に乗って広がっていった。
こうして、
ちょっとポンコツで、でもどこか憎めないAIロボット・ヒカルの農家生活が始まった。




