ダンジョンの中から真実を暴露する
「そっち行ったぞ!」
「任せろ!」
「まとめて、燃やしてあげる!」
「補助は任せて!」
グォォォォ……
ここは20階層のボス部屋。
四人組の冒険者パーティは、死力を尽くしてボスを退治したところだ。
彼らが物語の主人公…………ではない。
心の叫びを抱えるのは、ダンジョンにいる名もなき魔物である。
彼、または彼女は、生まれも育ちもダンジョンだ。
彼だけではない。
ダンジョンに存在する植物も魔物も、生から死までダンジョンで過ごす。
ダンジョンは言わば、彼らのマイホームなのである。
たまに例外がいて、家出する奴もいるし、マイホームから追い出される奴もいるが、大抵の場合は一生をダンジョンで過ごす。
だが、寿命まで生きるものはほぼいない。
何故か。
それは、冒頭のように、冒険者がやってくるからである。
冒険者が来たら、死を覚悟しなければならない程だ。
ダンジョンの魔物たちは、常に死と隣り合わせである。
けれど彼らは、そんな危険な家を出ようとしない。
だって、なんだかんだ言って、マイホームだから。
自分の家が、一番落ち着けるのである。
だが、そんなお家大好きな魔物たちは、日々不満とストレスを溜め込んでいる。
それは何故か。
もちろん、冒険者である。
ここは、ダンジョンの中央部。
そこには、色々な種類の魔物が一堂に会していた。
極たまに、こうして情報交換の場が設けられるのだが、今回は少し趣旨が違う。
不満とストレスに耐えかねたある魔物が、みんなの心を代弁したのだ。
「冒険者は、いつもいつも、マイホームに勝手にやってくる!奴らは不法侵入者だ!人の世界では犯罪なのに、何でダンジョンは適用されないんだ!?ここだって、立派な家なんだよ!」
『そうだ、そうだ!』
「不法侵入だけでなく、ダンジョン内の宝物、大事に育てた植物、コレクションした鉱物を勝手に強奪していく!完璧に窃盗、いや、強盗なんだよ!愛しのエリーちゃん(高級薬草)を乱暴に毟っていきやがった!ふざけんな!」
『エリーちゃん……』
『強盗も立派な犯罪だぞ!』
『お巡りさん、ここです!』
「果ては、壁を壊して持って帰るだと!?マイホームを何だと思ってるんだ!?家出した奴らが、人の領域でそんなことしたら、すぐに殺すくせに!お前たちは、よくて魔物はダメなのかよ!?」
『世知辛い……』
『もっと言ってやれー!』
「不法侵入して、強盗していくやつに、抵抗するのは当たり前だろ!お前ら全員、盗賊や野盗と同じなんだよ!しかも女、子ども関係なしに殺すなんて、慈悲の心はないのか!?」
『うわーん、母ちゃんー!』
『ウチの子を返してよ!』
「このまま冒険者たちに好き勝手させていいのか!?」
『良いわけない!』
『許さない!』
「マイホームを、家族を守るため、立ち向かうべきだ!」
おぉぉぉぉーー!
彼らの言葉は、すべてのダンジョンに共有された。
ダンジョンの魔物たちは、今までの不満を爆発させ、闘争心に火をつけた。
かくしてここに、世界最大の魔物の氾濫が巻き起こった。
世界各地で同時に起こったそれは、人と魔物の争いへと発展した。
この闘いの勝者は、神のみぞ知る。
気がつけば、魔物が自由に暴走してました。




