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邂逅

ハツカイチ イチカ。高校一年生。初めて犯した罪は、自動人形の不正起動。


【WARNING!】

【不認証搭乗者を検知】

【直ちに降機してください】




鼻先を拭うと、イチカの手の甲が真っ赤な血液に染まった。


道理で先ほどから口の中で鉄の味がする訳だ。


私は今、派手に鼻血を出しているらしい。

手鏡を落として無ければその惨憺たる被害状況を確認出来たのだけど。


操縦席を色々弄ってみたものの、精密的な機械部品や酷く絡まったコードが狭い操縦席の殆どを占領しているばかりで鏡らしきものは見当たらなかった。

まぁ在った所で私の酷く腫れあがった顔を拝むだけだろうし・・・。

うん、諦めよう。




【WARNING!】

【不認証搭乗者を検知】

【直ちに降機してください】



ああもう!

気を失ってから何分経った?

急がないと友人が危ないのに、呑気に気絶するなんて。


早く助けに行かないと、アイツらはハイウェイを抜けて何処かに消えてしまう。


「あの無法者達、私の大事な友人を攫って何するっていうのよ・・・!」


思わず歯ぎしりしてしまうが、分かっている。アイツらがあの娘で何をしようとしているかなんて、簡単に想像が付く。


あの暴力的で汚らしい男達が、女子高生を攫ってヤることなんて一つしかない。


嫌な想像が頭を過ぎた。

男達の理不尽な欲望で蹂躙される同級生の姿が。

儚い抵抗もむなしく、集団で押さえつけられる同級生の姿が。

最後は壊れた人形みたいに捨てられる、同級生の姿が。



・・・やるしかない。

・・・やるしかないんだ。私が。




【WARNING!】

【不認証搭乗者を検知】

【直ちに降機してくだーー


「さっきから五月蠅いわよ!この頑固機体!いいから起動しなさい!」


警告文と警報を流し続けるディスプレイを殴りつけると、右手に鈍い痛みが走った。それでも何度も、何度も手を振りかざす。


「この頑固もの!」


「ご指摘の通り、当機体は高度な頑強性を実現しています。当機体は治安維持、市民救護活動を目的として設計されています」

スピーカーから冷たい人工音声が響いた。無機質で温かみの無い音声だった。


「ふん、確かに()()()わね」


「皮肉を検知」


「身元検査でも何でもしていいから。私を乗せなさい」


「検査許諾。診断・・・ハツカイチ・イチカ。十六歳。聖ペトロ女子学院一年生。

搭乗資格、無し」

「続いて倫理判断プログラムGreenによる診断。

貴方の搭乗は重度な損傷及び死傷の可能性があり、かつ当機は九割九分九厘自動稼働可能です。搭乗行為は倫理上許可できません」


出た。「Green」今世紀最悪の発明。


「じゃあ、アンタが一人で助けに行ってくれてもいいのよ。アンタの仕事は治安維持と市民の救護なんでしょ?九割九分九厘自動機械さん?」


「倫理判断プログラムGreenによる診断。

所有者の起動許諾を得ていない場合、自発的な稼働は許されません」


「知ってる。だから私が乗るのよ。倫理判断は私が下すわ。Greenを切断しなさい。

そいつが無ければ、アンタは自発的な稼働とやらが出来る筈よ」


「許されません」

スピーカーの人工音声は矢張り無機質で、冷たい。

それでも、最早私に別の手は無かった。

「・・・ねぇ。友達が危ないの。未成年の女子生徒が、無法者の男達に攫われてるの。法律を幾つも違反してるわ。暴行罪、未成年誘拐罪、このままじゃ不同意性行等罪も違反するわ。治安維持と市民保護のために、働いて欲しいの」


馬鹿みたいな話だった。

私はAIを説得しようとしている!本当に馬鹿げた行為!

それは他人のPCに向かって「お願い。どうしても中身が見たいの!これを開けて頂戴!」と叫んでいるに等しい、無駄な行為だった。


()()()()()()()()()()()


「・・・倫理判断プログラム――切断。

 ・・・所有者権限――切断。

 ・・・当機体はこれより強制起動に移ります」


九割九分九厘自動人形が、揺れた。


女子高生と無機質AIを絡ませたい衝動に駆られています。


ロボットと倫理の二軸に焦点を当てて物語を進めていくので、是非読んでみてください。

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