表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

黒歴史上等~異能で無双できる者の絶対条件 「転生の神に推されてました」

作者: 坂本クリア

「黒歴史」――それは創作者の宿命であり、呪いであり、勲章でもある。


この作品は、評価ゼロ、恥、後悔、全部飲みこんでなお“書く”ということに、

ちょっと笑えて、でもなんか救われるかもしれない物語です。


本作はフィクションですが、もしかしたら、

あなたの中にも「霊体ゆえに評価できないファン」がいるかもしれません。


書いてる人も、読むだけの人も、最近ちょっと疲れちゃった人も――

どうぞ気軽に、肩の力を抜いて、お楽しみください。

黒歴史――その言葉は、創作者の心を蝕む呪いである。


かつて無数の物語が、この言葉の前に崩れ落ちた。

声にならなかった叫び。

ページに綴られなかった想い。

燃え尽きることなく、ただ消された光。


それらはすべて、“黒歴史”という名の亡霊に囁かれたのだ。


「そんなもの、誰にも求められていない」

「恥をかくだけだ」

「あとで思い出して死にたくなるぞ」


その声を、人は“内なる理性”だと思っている。

だが違う。

それは――


かの創作を滅ぼす悪魔、アネモイ=ヘジテイトの声である。


お前は

いや

創作をする者全ては

心に誓わなければいけない。

悪魔のささやきに

耳を貸さないと


黒歴史という呪いに

飲みこまれないと


そうしなければ

世界は永遠の空白になる。


創作という名の救済は

消えてなくなるのだ。


―――僕のなかで声が聞こえる。


これはなんだ――――


――――執筆のし過ぎでおかしくなったのか


……


「ちょっと待ってください。あなたは誰なのですか?」


とりあえず聞いてみた。


「うん?私かい…私は神だ…」


あっ答えてくれるんだ。しかも結構気さくっぽい。


「神がいったいなぜ私なんかに…」


「君は筆を折ろうとしただろう…しかし私は君の作品が好みだ。だから書け」


えっこの人…いや神か…なにを言っているのかわからない…。


「でも評価されなかったんですよ」


「それでも書け」


「神様だって、評価してくれてないじゃないですか」


「私は霊体ゆえアカウントが取れない。だから評価もできないのだ」


「あっそうなんですか…メルアドとかあれば…」


「だから霊体だから…無理なんだよ」


「触れない系ですか?じゃあいったいどうやって…」


「サーバーに入り込んだら、データが見れる」


「えっそんなん。いろんなデータ見放題じゃないですか」


「そうだよ。君のはずかしい写真コレクションもしってるよ」


「えーやめてください」


「だったら書け」


「でも…。中2病とか言われるし…」


「お前は誤解している。中2病とは、不老不死を得た人々の総称なのだ」


「不老不死?」


「そう不老不死だ。中2病にかかったものは、永遠に歳をとらない。

いつまでもみずみずしい感性で生き続けることができる」


「しかし…将来を考えると…怖いんですよ」


「では想像したまえ…

アニメのなくなった世界を…

ラノベのなくなった世界を…

マンガのなくなった世界を…」


「…」


「おそろしくないか?」


「それは恐ろしい…それはディストピアです」


「そうだ。それこそが創作を滅ぼす悪魔、アネモイ=ヘジテイトが作ろうとしている世界なのだ」


「アネモイ=ヘジテイトは、あらゆる機会を利用して、想像することを否定する。

将来を考えろ

現実を見ろ

地に足のついた生き方をしろ。

しかしだ…。

将来を考え、現実を見て、地に足をついた生き方をしているはずの

大人たちは…

なぜあんなに悲しそうな顔をしているのか?

なぜあんなに苦しそうな顔をしているのか?」


「それは…」


「お前はもうわかっているはずだ。

悪魔の存在を…

自分の正しさを…

創作の価値を…」


「悪魔はわかります。創作の価値も。でも自分の正しさなんて…」


「君は今年で25歳だ。その歳まで中2病を通した。創作をした。普段はコンビニのアルバイトだ。彼女はいない。貯金は3万5,000円 読んだ作品本数は1895本 出した創作物は8本 全評価を足しても10 違うか?」


「完璧すぎて引きます。ドン引きです」


「そうだろう。神は完璧なのだ。だから書け」


「いやですから…。そんな低スペックで…。何を書けって言うんですか?」


「もし私がお前は3年後に世界を震撼させる大作を書き上げる。だから書けといったら信じるか?」


「えっそりゃ…かかなくも…いや書くかな…」


「そうだろう。しかしそれは私にもわからない。でもな一つだけわかるのは」


「ごくり」


「異能で無双できる者の絶対条件は…黒歴史を決して否定しない心だ」


「黒歴史を決して否定しない心…」


「お前は常に執筆のなかで、自分のやっていることが黒歴史になるのでは…という恐怖があっただろう。それが悪魔を引き寄せた」


「それは…」


「お前は昔言っていたはずだ。俺の両手が世界に反応して勝手に動くと…」


「いやそれは…ちょっと恥ずかしいやつ」


「いいや…あの表現は間違っていない。執筆とは…真の執筆とは世界に反応して両手が勝手に動くものなのだ」


「えっそうなんですか…。じゃあまんざらでも…」


「もちろんだ。だからわざわざ…こうやって来てるのだ。

お前がかかないと私はヒマになる。ちゃんと転生させろ」


「転生…って転生の神様なんですか?」


「そうだ。転生の担当の神だ。転生がない時は、ラノベとか読んでる」


「そうか…。僕もずいぶん、神様のところに転生者を送りましたもんね。あっその節はお世話になりました」


「いえいえ。ご丁寧にどうも。君の転生の展開…あれ結構斬新で私は好きだったよ…あの3作目のやつね」


「あっまじっすか。あれ…トイレでうんこしている時に思いついたんですよ」


「あー知ってる知ってる」


「えっ…。そんなこともまで知ってるんですか」


「だから書け」


「うーんわかりました。いやーもう神様が見てるなんて知ったら、やめれないじゃないですか…」


「まんざらでもないだろ ふふふ」


「いや…ファンとかうれしいっすね あざす」



END


ここまでお読みくださり、本当にありがとうございました。


この作品は、「黒歴史を肯定すること」がテーマです。

自分の書いたものが恥ずかしくて消したくなる気持ち。

評価されなくて、誰にも見られていないと思ってしまう孤独。


それでも、誰か――もしかしたら**“神様”みたいな存在**が、

ひっそりと「それ、好きだったよ」と思ってくれているかもしれない。


そんな妄想を、あなたの背中を少しでも押す物語に昇華できていたなら幸いです。


黒歴史上等。

恥ずかしいなら笑えばいい。

それが、あなたにしか描けない物語なら――無双はすでに始まっているのです。


またどこかで、あなたの物語と出会えますように。


※本作は完結しておりますが、反響やご好評をいただければ、続編やスピンオフも考えております。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ