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祝日組寮のアルカナ  作者: よつば ねねね
6章「ナラク引き抜き作戦」
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67話「離さない」

クレアに連れて来られたバラ園を抜けると、そこには墓石が佇んでいた。

「エリヤ、気高き薔薇ここに眠る」そう石に刻まれている。


「13歳の時です…お母様が亡くなりました

 一人娘の私が王女になった場所です」


「こんなとこに俺を連れてきちゃってよかったの?」


「私の事を知ってもらうにはむしろ一番いい場所ですから

 ここ、この辺りに伏せって泣いてました

 1日、2日、3日…顔を見に行くかの様に毎日ここに来ては泣くんです

 見かねたリカルド先生は仰いました、『そこには誰もいないんですよ』って

 凄く悲しそうに…仰いました」


「…気持ち、解るよ

 ここに来なきゃ理解が出来なかったんだろ

 俺もさ、父さんと母さんが事件に巻き込まれて死んだんだ

 毎日墓を見に行って…もういないんだって再確認してた」


俺は無言で彼女の手を握る。

クレアは肩を震わせ、下を向いて


「そう…もう…どこにもいない」


と言って、握っていた手に力を籠めた。


「私はお母さまを今でも愛しています

 …ここに来ると…お母様のような素敵な王女にならねばならないと

 そう…思わせられるんです」


「別にならなくていいんじゃないの」


「…え?」


「クレアのお袋さんがどんな人だったか知らねえけどさ…

 クレアはクレアだろ?お袋さんのように、じゃなくて

 あんたのまま強くなってけばいいじゃん」


彼女の震えは次第に止まり、

籠った力は元に戻った。


「…そう…ですね

 最後のダイス、振ってください」


「ん?ああ…はい」


「行きましょうか」


クレアはそういって俺の手を握ったまま歩き出した。


「え、ここって…」


クレアが向かったのは時計塔下の公園だった。


「ここがゴールです!お疲れさまでした!」


「ここってクレアにとっても所縁のある場所なの?」


「はい!ナラク様に花火を見せて貰った場所です!」


「…え?」


「とても楽しかったので最新の一ページにしちゃいました!

 ここで私が…本物の花火をお見せします!

 皆さま!お願いしますー!」


クレアが誰かにそう言って叫ぶと、高台に大きくて綺麗な花火が打ちあがった。


「どうですか!?楽しいですか!?」


「え、ああ…聞いていい?何でクレアがここまでするんだよ

 俺なんてクレアが王女になったらそんなに会うことも無くなって…

 ただ同じ寮だった奴になるだけなのに

 皆は俺が祝日組寮から抜けるの嫌って言ってくれるけどさ


 人ってずっと同じところにはいられない

 大好きなじいちゃんとか…

 妹とか、地元の仲間と離れてここに来た時そう思ったんだ

  成長する度居場所が変わるならこだわる理由なんかない

 一緒にいる時だけ楽しければいい

 なのに何でクレアはここまでして引き留めようとするの?」


「ナラク様が好きだからです」


彼女が言うと同時に花火が上がる。

刹那、彼女は顔を赤くして握っていた手を離した。


「あ!違います!違いますよ!

 好きってその好きじゃありません!

 今の感じだとなんかこう…!とにかく違いますから!」


「落ち着けって解ったから!」


「…ナラク様は不思議な方です

 雑草から最強になれる指輪を作れるし

 ゲームを作れるし、私の痛みも解ってくれます

 まるで遠い存在の様で…意外と近い所にいるような

 そんな…不思議な感覚がありました」


「俺も今日そう思ってたよ、不思議な感じだった」


「私は…祝日組寮の皆様が大好きです

 やりたい事があって…他の寮の方がそれが出来るとか

 そんなのは解っております


 なので私少し我儘になる事に致しました

 寮がどこでも関係ない

 私と話していると妬まれるかもしれません

 変なあだ名を付けられてしまうかもしれません

 それでもしつこく私は皆様を追いかけます

 離れそうになるなら…離れないようにつなぎとめます」


「クレア…」


「皆様は大切な友人だから…そばにいたい、から

 …だから、私…絶対に離しません」


彼女の笑みが花火に照らされ、その時少しだけ

花火よりもクレアの方が奇麗に見えて、俺は思わず目をそらした。


「どうですか!?楽しかったですか!?花火!

 他の寮と比べたらどうですか!?点数は!?」


「…あーあ、解った解った!転寮は無し!

 ったく、子供っぽいのが治ったと思ったら

 今度はわがまま姫にジョブチェンジかよ

 悔しいけど今日は凄く楽しかった!ありがとな、クレア」


「…!はい!どういたしまして!」


ーーーーーーー


2人が祝日組寮に帰ると、

クラッカーの音と共に紙吹雪が舞う。


「ナラク―!誕生日とかじゃないけどおめでとうー!待ってたよ!」


満面の笑みで二人を迎えたのはリカルドと遊助だった。


「…なにこれ」


「いやー、クレアばっかりに頑張らせるのも悪いじゃん?

 だから俺達も何かできないかなって!ねえ先生!」


「ああ、吾輩もモスコミュール君に転寮されると困るからな

 手を尽くさせて頂いた」


「へえ、一応見ようか」


「もう転寮はやめたんでしょ!」と言わんばかりにナラクを見るクレアに人差し指で「静かに」とジェスチャーすると、

ナラクは腕を組みながら二人の出し物を眺める。


「まず僕が用意したのはこれ!エリ、入って!」


声を掛けられるとエリが恥ずかしそうに入って来る。

彼女はまた何かのコスプレをさせられているようだった。


「うおー!すげえ!俺が作った

 『ぷにっと美少女テニス』の『セーラ』じゃん!」


ナラクは興奮気味にエリに駆け寄るとまじまじと彼女を見る。


「どこで揃えたのこの衣装!?」


「カイ先輩がたまたま持ってて…」


「ちょっとナラク様…!エリをそんな舐めるように見つめるのは…」


「クレア、それは違う!

 コスプレってのはむしろじっくり見なきゃいけないんだよ

 衣装にかけられた時間や努力を見て称賛することで

 この界隈は成り立っている

 確かにやらしい目で見ることは良くないけど

 細部まで見て楽しませてもらうのが

 提供される側の礼儀なんだ!」


「早いし長いし良くわからない!」


「私が出来る事ってある?って聞いたらこれだもん

 遊助達って私の事着せ替え人形か何かだと思ってない!?」


エリが赤ら顔で遊助を睨む。


「何でも似合うんだしいいじゃん!」


「次は吾輩がモスコミュール君に良い物を提供しよう、

 女子は一旦席を外したまえ」


「え?何で?」


「いいから」


女子達が席を外すと、リカルドは誇らしげな顔で


「吾輩が高校生の頃興味のあったものと言えば

 大体馬鹿なことか色事だった…

 という事で今回作ったのがこの眼鏡である」

と言って謎の眼鏡をナラクに渡す。


「どうした、かけてみなさい」


ナラクが眼鏡をかけると、首から下がビキニの巨乳になったリカルドと遊助が現れた。


「…」


彼は青い顔で絶句する。


「どうだ?吾輩作!服が透けちゃうように見える眼鏡は!」


「嬉しくない…」


「巨乳過ぎちゃってエリとクレアに使っても

 違和感しか無いって僕も言ったんだけど

 『大は小を兼ねる』ってリカルド先生聞かなくってさあ」


「教師が生徒にこんなもん贈ってんじゃねえ!」


「聞いてたよ…?リカルド先生サイテー!

 なんてもんナラクに渡してるワケ!?」


エリがそう言って部屋に乗り込んでくる。


「なっ…盗み聞きしてたのか!?」


「リカルド先生…流石にこれは…」


クレアも呆れた顔で入って来る。

そして怪訝な顔でエリがナラクから眼鏡をぶん取ると


「こんな物の何が…」


と言いかけて、「きゃははははははは!」と大笑いする。


「やば…!ナラクめっちゃ巨乳…!」


「おいやめろよ!」


「えー!見たいみたい!エリ!私にも貸して下さい!

 あはははははは!皆様ないすばでぃですわー!」


「…女子の方が楽しんでるし」


「おかしいな、フラン君には好評だったのだが」


「そりゃあのおふざけ教師には刺さるだろーよ」


「っぷ…はははははは!」


ナラクは堪えていたものを吐き出すかのように笑い出す。

あまりに突然の事に遊助とリカルドは目を点にしていた。


「おもしれーな、あんたら」


唖然とする二人を横目に、彼はそう言って腹を抱えるのだった。


…余談だが、リカルド考案「服が透けちゃうように見える眼鏡」は

おふざけが好きな男子の間で流行することになる。


「リカルド君…サイテー…」


流行を知ったロゼの好感度は下がった。


ここで一旦更新止まりますー!

秋組&引き抜き編まで見て頂きありがとうございました!

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