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祝日組寮のアルカナ  作者: よつば ねねね
5章幕間「デート日和」
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64話「転寮」

マティーニが背中を押したことでナラクを追いかけて行ったクレアを、

遊助とアシュリーは見送っていた。


「うわうわうわうわ…えー?いいのお?

 そんな余裕見せてるとクレアが別の男に取られちゃうよお~?」


下品な笑みを浮かべながら遊助がマティーニを茶化す。


「少女漫画でもいつか振り向かせるって言ってる殿方程

 選ばれないイメージです、もっと強引に夜這いとか…」


「ストーカーの恋愛アドバイスとか求めてないから!!」


アシュリーが言い切る前に遊助が遮る。


「…貴様らには解らん事だとは思うが…

 この学園で決闘を制していたであろう人物は私ではない」


「え?だって学園最強って言われてたのに」


「単純な戦闘力じゃ誰に負けるつもりもない、問題は…

 能力相性の方だ

 私はシーザーに決闘で勝てたことが無い。」


言葉を聞いて、腑に落ちたように遊助は頷く。


(確かに相性悪いよな?つまり…

 定石通りマティーニ先輩とクレアが婚約していたら

 シーザー先輩に掻っ攫われてたって事?

 あの人の事だ、卒業ギリギリまで機を見るだろうし

 漁夫の利を狙うに違いない。)


「元々クレアちゃんは力の面でも私と結ばれる運命には無かった

 …情けない話だが、岸辺が出てきてほっとしているくらいだ

 半ば諦めていた恋なら…せめて傍にいて幸せになる手伝いをしたい

 弱気な考えだと笑うか?」


「そうだね、あんたにしちゃ弱気だ

 あいつより強くなって固有使わなくても勝てるくらいになってやる!

 くらい言いそうなもんなのに」


「同じアルカナ相手にそこまで楽観できる程愚かじゃないさ」


「僕みたいな悪い虫が付いちゃった時点で褒められたもんじゃないけど?

 あんたより強い人間はこの学園にはいない…僕を含めて

 僕がこれだけ認めてるんだ、諦めるには早いんじゃない?」


「岸辺…

 ふん、いつか貴様を倒してやる…いや!

 今日倒す!ダリア、岸辺、ゲーセンとやらで勝負だ!」


「望むところだ!蹴散らしてやる!」


ーーーーーーナラク視点


時計台傍の公園、ここにはあまり人が来ず…高台からいい景色が覗ける。

1年前この学校に来た俺はとにかく戸惑っていた。

やらなきゃいけない事を故郷に置いてきたまま知らない国で暮らすなんて考えもしなかった事だったから…


だからここによく来ては気分を落ち着かせてたっけ

何となく、あの町の向こうの方に自分の家がある気がして

この場所にいると少し安心する。


「…」


誰かいるな?

遊助が追いかけてきたんだ

あいつ…!ゲームセンターには俺抜きで行けってあれほど…


「おい!次は俺の尾行か!?仕返しとはいい度胸じゃん!出て来いよ!」


俺が言うと、思ってもみない人間が顔を覗かせた。


「バ、バレましたか…?」


「クレア!?何してんのこんなとこで?

 他の皆は?」


「ゲーセンとやらに行きました!

 私は…ナラク様を追いかけて、ここに」


「何で追いかけてきたわけ?」


「あの、秋組での妖精の件…ナラク様がいなければ私

 妖精に会う事が出来ませんでした…

 それにあの、最強になれるお守り!

 あれが無かったら私…きっと何も出来ずに泣いていました」


「俺自身秋組では特に何の役にも立ってなかったから

 役に立てたなら良かったよ」


「はい!

 …それ、何見てるんですか?」


「ん?開発中のおもちゃ…

 子供だましだけど結構悪くないよ、見る?」


「今見れるんですか?」


「夏に向けた新型映写機!その名もどこでも花火くん!」


「どこでも…花火くん…シンプルな名前ですね」


「いいだろうが別に!花火の形を設定して…ボタンを押せば」


俺がボタンを押すと、バスケットボール大ののホログラム花火が目の前に打ちあがる。


「わー!すごいです!これ、色とかも変えられるんですか?」


「スマホで描いたりもできるぜ!」


「やってみてもいいですか?」


「どうぞ」


クレアが何かを描くと、妙な…あざらしの様なよく解らない物体が打ちあがる。

犬がフリスビーを取って来たかのようなどや顔をかまされるが何なのかは解らない…

あ、この目の下の点ってもしかしてほくろ?じゃあこれって…


「え、エリかあ~!上手だな!」


「やっぱりわかっちゃいましたか!」


解んねえよ普通は!


「でもさ、エリはもっと髪の毛とかあるだろ?だからこうして…」


「あ!上手ですねナラク様!」


「遊助とクレアも描けるぜ」


「えー?私こんなに目おっきく無いですよー

 …こんな物作れちゃうなんてナラク様は凄いですね…

 またゲームもやりたいです!

 後々、いつかげーせんにも連れてってくださいね!」


「あー…まあ、出来たらな」


「できたらって何ですか!約束ですよ!?約束!

 絶対絶対…!連れてってもらうんですから!」


「んーでも俺、そんなにクレアと会えなくなるかも知んねーからさ、

 遊助にでも連れてってもらいなよ」


「え…?どういうことですか?」


「あれ?言ってなかったっけ?

 俺、転寮するかもしれないから」


「…転…寮…」


ーーーーー


「我が寮に入りませんかー!?楽しいレジャー施設が沢山!」


「今秋組寮に入ればコーヒー一年無料でーす!」


転寮、それはウィザーアカデミーの制度の一つ…

開校して6月を迎えると寮を移動してもいいという制度である。


そして「寮生が増えれば支援金や勢力が増える」と言う特性上…5月の終わりから戦いは始まっていた。


「モスコミュール、君だけは祝日組寮の他の生徒と違うと思っていたのだ…!

うちに来てジムの改良をしないかい?

褒美には毎日豪華な食事を用意しよう」


「ナラク?うちで水族館やプラネタリウムのメカニックをやらないかしら?   

 きっと皆喜ぶと思うの!

 勿論貴方は全ての施設を無料で使用できる権利をあげちゃう!」


「ナラク!君ならうちで才能を沢山発揮できる!

 秋組にはゆっくり作業する場所もあるし…

 ゲーム音楽やグラフィックを製作する環境まで完備してるんだ!

 いいだろう?」


「いいえナラク!機械と言えば冬組よ!うちにはレアパーツから

 3Ⅾプリンターまで完備!超高性能パソコンまで置いてるんだから」


祝日寮はこの日、異常な賑わいを見せる。

他寮の寮長や副寮長がナラクを引き抜きに来ていたからだ。

そしてマリーの足元に縋りついて泣いているのは誰でもない遊助だった。


「やーめーてーよー!ナラク引き抜こうとしないでよせんぱあああい!」


「ちょっと、泣きつかれたって困る!あんた正気!?

 あの『もす子』がこんなぼろいとこでゲーム作ってるなんて信じらんない!

 元々ここには過ぎる人材だったの!」


「…あの…リオ兄さま、ナラク様は有名なのですか?」


「有名も有名さ!聞いた事ないかい?

 数々のヒット商品やヒットゲームを出してる『もす子』って人間の事」


「いいえ…」


「そりゃ王女様にはあんまり関係のないエンタメ特化だし知らなくても無理ないでしょ

 ていうか離れてよ岸辺!」


「いーやー!いやいやー!ナラクがいなくなったら誰がこの寮のつっこみ役するんだよー!」


「遊助の傍には…私がいてあげるから!ね?」

ティナが顔を赤らめながら言う。


「ボケが渋滞するじゃん絶対!」


「私もやだ!ねえ何とかならない…?

 引き抜くのはナラクじゃなくってもいいでしょ?遊助とか…」


「ルハート、いらないものを押し付けるんじゃない!

 彼は有能な人材だ

 発明品をどんどん発表するだけで寮の加点が期待できる!」


「ヘルズクエストの時は一人で20点も稼いだらしい、見逃す手はないさ」


「そ、そもそもナラクはどうなの!?他寮に行くとか嫌だよね!?」


「え?なんで?」


「…ナンデ…?」


「別の寮にいてもここには遊びに来れるし?

 遊助に付き合うにしてもこの寮じゃなくっていいじゃん!

 プライベートの付き合いがちょっと減るくらいしか変わんねえし

 それなら開発環境整ってた方が良くね?」


(正論…!)


「そのプライベートの付き合い無くなるのが嫌なんじゃん!

 僕の愚痴とか作業しながら聞いてくれたり―、取れないゲーセンの景品とってくれたり―

 クリアできないゲームのステージ攻略してくれる人がいなくなっちゃうよーう!」


「彼氏か!依存し過ぎなのよ!」


「遊助とルハートは残念ながら転寮が許されてないらしいが…

 彼は問題無いと聞いてね、君達には悪いが彼には秋組寮に入ってもらう!」


「夏組よ!ここで彼の才能を発揮するの!」


「春組でジム開発だ!」


「いーえ!冬組寮に入ってもらうわ!こんな人材冬組寮以外に活かせる訳ない!」


「じゃ、勝負して決めてよ先輩方」


「「え?」」



「この一週間俺に1番楽しい思いさせてくれた寮が優勝ね

シンプルでいいでしょ?」

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