表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
祝日組寮のアルカナ  作者: よつば ねねね
5章「秋組の妖精」
56/67

56話「最強アイテム」

宿舎から出ると、僕はシーザー先輩に


「サーシャと話したい事があるんだ」

と言って席を外してもらう。


「俺と話したい事って何?岸辺君」


「サーシャはさ、どう思ってる?

 リオ先輩が疑われてる件について」


「…信じたくは無いけど、決定的な所を見ちゃったから

 何とも言えないな

 でも大丈夫!もし兄さんがやったんだとしても俺

 見捨てたりしない…一緒にいてあげようと思ってるんだ」


「それはいいね」


「これからどうする?俺、何でも手伝うよ!

 アルカナの岸辺君の役に立って…友達になりたいから!」


「何それ?役に立たなくたって友達にはなれるんだぜ

 僕はもう友達だと思ってた」


「え…?そ、そうなんだ」


サーシャは不思議そうに目をぱちくりとさせる。

彼の認知が歪んでるようにも思えるが、

それだけ彼は虐げられてきたんだろうとも思う。


一度虐げられたものがもう一度純粋に物事を捉えることは難しい。

僕もよく知っている事だから…解るよ。


ーーーーーーーーーーークレア視点


遊助達が話している頃、私はショックのあまり席を外してしまい

裏庭でシロツメクサを眺めながら、

兄さまが犯人…そんな筈ないのに、何かの勘違いなのに…!

そんな事を考えて途方に暮れていた。


私がまた泣きそうになっていると、耳元で

「ばあ」

と声がする。


「きゃああああっ」

私が思わず声を上げると、アシュリー様が何もない所からすぅっと現れた。


「あはは、すみません、そんなに驚くと思わなくて」


「ど、どうしてこんな所に…」


「モスコミュール君に言われたんですよ、

 『一人になりたい』らしいけどそんな訳にもいかないから

 透明になって付いて行って欲しいって」


…彼らしい配慮ですね


「おい、戻って来るの遅いから様子見に来たけど…あれ?

 アシュリー、姿現しちゃったの?」


ナラク様がそう言って通路の奥から現れる。


「退屈だったので…モスコミュール君も

 人にお付きを頼んでおいて結局自分で様子見に来ちゃったんですか?

 なら初めから君が付いててあげればよかったのに」


「う、うるせえな…俺だと気が散るかなって思ったんだよ

 それよりクレア、大丈夫か?

 あのリオってイケメンが犯人かもって話になってから

 ずっとこーんな顔になってるぜ」


彼はそう言いながらまるでレモンでもかじった時の様な顔をして見せる


「ちょっと!そんな顔はしていません!

 …いえ…やっぱりしてたかも…

 駄目ですね、私は弱いばかりで」


「…お!シロツメクサじゃん」


彼はそう言うと花を何輪か摘んで、器用に何かを作り始める。


「ああ、懐かしいですね…私もそれ良く作りました」


アシュリー様がくすくすと笑いながら言う

彼の手元に現れたのは、花で出来た指輪だった。


「妹に良く作ってやったんだよ、

 強くなる最強アイテムっつって」


「最強…アイテム…」


左手の薬指にはめられたその指輪を、私はじっと見る。


「これを付けてる間は勇気が湧いてきて、最強になれんの

 …嘘だけどな?まあ思い込みだけで強くなる時もあるじゃん」


「解る気がします」


「これで…兄さまも救えるでしょうか」


「そこはわかんねえな…俺もあの人が悪い人には見えなかったけど

 話を聞いてたら疑われるのも解る

 能力が強すぎるし、捕まった状況が状況だからな」


「岸辺君の共有メッセージで読みましたが…

 糸を操って物を操る力…人間も操れて暗躍し放題

 おまけにセキュリティ系も怖くない上

 生徒が操られていた時その場にいたとなるとまあ怪しいですよね」


「彼はそんなことする様な方じゃないです」


「あんたがそう言うならそうなんだろうけどさ

 ここで違うって叫んだってどうにもなんねえだろ

 あいつじゃないって証拠を見つけねえと…ってとこで一個!

 俺が目を付けたとこがある!…知りたい?」


「な、何ですか?」


「この寮で度々聞く…『妖精』の存在だ」


「それって結局ルーニ君の事だったのでは?」


「まあ聞けって!妖精の噂ってさ、

 『何でこんなに噂にばらつきがある』んだと思う?」


「…へ?」


「確かに、私も不自然に感じておりました

 最初に聞いた噂と毛色が違いましたので…

 私が夏組で聞いたのは『夜にうろついていると妖精が願いを叶えてくれる』

 と言うもので、ここで聞くのは

 『夜の会合に行くと妖精がいて何でも答えてくれる』と言うもの…

 似てるようでいてかなり別物です」


「そうなんだよ!

 もしかして2つの噂が混ざっているとか…ないか?」


「え…じゃ、じゃあ本当に願いを叶えてくれる存在がいるって事…ですか?」


「もしかしたら、ね!サーシャとは別に

 もう一人…妖精の正体となる人物がいるかもしれない


 そいつ、普通に怪しくない?何のためにこの寮をうろついて…

 何のためにそんなことしてるんだと思う?固有は?

 願いをかなえられるなら何でもありだと思わねえ?

 例えばそうだな…リオ先輩に罪をかぶせることも出来なくないかもね

 そして一番の部分!妖精はいつ現れる?」


「夜です!」


私は元気に答える。


「絵画が無くなったのも確か夜でしたね、

 確かに調べる価値はありそうです」


「願いを叶える妖精について詳しそうな生徒はいない?

 話聞いてみようぜ」


「うーん…詳しいかは解らないけど その話をしていた方なら…」


ーーー


私はラウンジにいたミモザ様を呼ぶと妖精の噂について尋ねる。


「え?妖精の噂について知ってる事?」


「はい、何でもいいんです」


彼女は私に「願いを叶える妖精」の話をしてくれた。

何か知っているかもしれない


「えっと…夜この寮をうろついてると妖精が現れて…石を渡して来るって

 それに願いを込めると…その願いが叶うって…聞いたけど?」


「何だか、ルーニ君の噂とはかなり違うように感じますね

 尾ひれがついたんだとしても別物のように聞こえます」


「誰からその話聞いた?」


「何で言わないといけないかな…」


「生意気」


彼がミモザの頭を押さえると、私は急いで止めに入る。


「ま、まあまあナラク様…!あの、私たちその願いを叶えてくれる妖精様を探しているんです!

 実際に願いを叶えて貰った方とか、知りませんか?」


「私」


「…え?」


「だから!私が叶えて貰った人!…秘密ですよ?」


「えええええええ!あの!あの!その方の容姿は!?どんな感じでした!?」


「えー?…セクシーな大人のお姉さん?」


「てことは上級生でしょうか」

アシュリー様が腕を組みながら言う。


「何を叶えて貰ったんですか?」


「…身長を…3センチ伸ばしてもらった」


「「「…」」」


「そんなことに?」


「だって!急に願いを叶えるよって言われて疑わずにいれます!?

 まずは簡単な事お願いしてみようとか思うでしょ!」


「勿体ねー」


「そんなこと言うならえっと…ナラク先輩は何お願いするんですか」


「俺だったらそうだな…すっげえ莫大な時間?不老不死とか」


「はーん、人並みですこと!」


「わりいかよ!不老不死でいれば未来のおもしれえもん全部見れるし

 時間があれば何でも叶えられっからな」


「…そのうえ傲慢!何でも叶えられるだなんて

 あなたみたいな人は私の好みには合いません」


「は!?何でお前の好みの話になんだよ!

 俺だってお前みてえなちんちくりん嫌だわ!

 本当に3センチ伸びてんのかこの背もよお!」


ナラク様は彼女の頭をわしゃわしゃと撫でまわす。


「わー!女子の頭を乱さないでよ!ちょっとお!」


「…相性…悪めですかね、この二人…」


アシュリー様が私に囁く。

間違いなく…合わないでしょうね…


「ミ、ミモザ様!私その妖精様に会いたいのですが…どうしたら会えますか?」


「私の時は一人でフラフラしてたら会えましたよ?

 …王女様もこの意地悪な先輩抜きで!

 夜一人でフラっとうろついてみては?」


「お前本当生意気」


…一人でフラっと…か。


「夜になったら試してみますか?

 私…透明になってお供します」


「は、はい…!調べてみましょう!」


私が言うと同時にナラク様の携帯が鳴る。


「ん、もしもし…おう、りょーかい

 遊助がラウンジに来いってさ!

 夜になんかやるらしいぜ?」


ーーーーーーーーーーーーーーーー


僕は仲間たちを全員集めると、こう言った。


「今日の夜、全生徒を集めて糸を焼き切る会をするよ」


「糸…?なんだそれ」


「今回の犯人は『リオ=モッキンバード』だった」


「! ゆ、遊助様!それは違います!」


「いーや違わない!動かぬ証拠があるもんでね!

 彼の能力は『糸を操る能力』!僕含め色んな生徒に巻き付いて

 いざとなったら操られちゃうみたいなんだ

 だから生徒一人ひとりからその糸をはがす!それが今日僕らがやる事だ」


「結構人数いるけど大丈夫なの?」

マリー先輩が訪ねる。


「夏組寮からも助っ人呼んだし大丈夫でしょ!

 明日の朝までには急いで終わらすよ」


「あの!話、私…ちょっとまだ調べたい事があるのです…

 別行動しても…いいですか?」


クレアがおずおずと手を上げながら言う。

それにアシュリーがいないな…?ああ、透明になってるのか

彼女にも何か意図があって別行動したいという意思だろう、

下手に反応するより各々の判断に任せた方が良い。


「もちろん!好きにしなよ!じゃあ残った皆は糸切り係ね!」


僕はそう言ってラウンジの机を動かし始める。

さあ…今日の内に決着は付けられるかな。


ーーーーー


夜、大勢の生徒が群れを成して糸を切る順番を待っている。

その間に私とアシュリー様は人気の無さそうな場所に足を運んだ。


…妖精…!妖精…出てきて!

友人が濡れ衣を着せられそうなんです…!

真犯人でもなんでも良いから、姿を見せて下さい!


「はあ…」


誰もいない…やっぱり噂はサーシャ様のものに

尾ひれが付いただけのものなのだろうか?


「大丈夫?」


そう声をかけてきたのは、アシュリー様ではなくシーザーお兄様だった。


「お兄様!?糸切りは?」


「マリーが王女を一人にしない方が良いって言うから

 様子を見に来たんだよ

 何してたんだい?」


「…妖精を…奇跡を…願っていました」


「はは、君らしいけどね

 昔からそういう類の童話が好きだった」


「…子供じゃありませんのよ」


「怒るなって…君にだってわかるだろ

 僕は君に女性に向けるような好意は持てない」


「初めに聞きましたわ、再会して早々失礼なこと言われましたし」


「何?そういうの隠して欲しかった?」


「…もう、そういうところまで全然変わってないんですから」


「ん゛っう゛ん!」


アシュリー様が急に姿を現す。


「うわ!アシュリーいたのかい!?」


「すみません、何かインモラルな空気を感じ取って…

 どうせシーザー先輩が着いて来ちゃうなら

 王女を一人にできませんし」


「俺、来ちゃまずかった?」


「いえ!そんなことありません!

 マリー先輩の私を一人にしちゃいけないという判断は正しいです

 私は戦闘とかのスキルはからっきしですし…

 結局戦うと決めておきながらアシュリー様やお兄様に守られて…

 私…何の進歩も出来なくて、悔しい」


「クレアちゃん…」


「そう?あんなに離れたくないとか言ってた

 同じ寮のお仲間から離れて一人何かしようとしていた事には驚いたけどね

 結構見ないうちに人って成長するもんだと思ったよ

 ちょっと前の君は僕から離れたがらなかった

 あの小さいお姫様と変わらなかったものだから」


「そうですね、私と二人とはいえ

 クレアちゃんは祝日組寮の皆と別行動しています

 今まで見なかった状況かもしれません」


「そっか…本当です、皆様と離れても不安じゃない…」


「そういうのが絆って言うんじゃない?いい友達が出来たようで良かったよ」


「お兄様…

 なんかかっこつけてますけどエリに対するあの反応忘れてないですから」


「忘れてよねー?」


「でもね、友達と言えば…この寮にもできたんですよ!お友達

 ミモザ様って言うすごく可愛い子がいて…」


「…?ミモザ…?悪いが、彼女はこの寮の生徒じゃないよ」


「……え?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ