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祝日組寮のアルカナ  作者: よつば ねねね
5章「秋組の妖精」
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50話「妖精の夜会」

次の日、集まったメンバーに僕は驚く。


「何でいるんだよ夏組…主にアシュリー!」


集合場所のカフェには、夏組のメンバーが顔を揃えていた。


「昨日寮に行ったらいなかったんだもん…寂しかったよ?

 今日の夜は一緒に…ね?」


「ね?じゃない!リオ先輩羨ましそうな顔しないで!」


「すまん」


「アシュリーはいつものストーキングとして…ティナ先輩はなんなの?」


「遊びに来ただけ」


「そりゃどうも!」


こっちは真面目にこれから調査しようとしてんのに呑気だよなー…!


「…あの、気になってたんですけど…その着ぐるみの方は?」


サーシャ君が恐る恐る尋ねる。

そう、僕もさっきから気になっていた。

異様にスタイリッシュなポーズで椅子に座る半魚人みたいな着ぐるみのこいつは一体何なんだ…?


「彼は夏組のマスコットキャラクター!塙君です!

 さ、塙君ご挨拶して?」


「…」


アシュリーがまばゆい笑顔で楽しそうに着ぐるみを紹介するが、着ぐるみはふいっと顔を逸らす。

おいおい…不愛想だな…


「うわああああ!」


呆れながら見ていると、着ぐるみが急に電撃でも当てられたかのようにビリビリとしびれるような動作をする。

アシュリーの手元には謎のボタン、想像したくないが…

こいつの中身、相当な悪事を働いたか弱みを握られたな…


「うわ!?大丈夫か!?」


「ご、あ、い、さ、つ♡早く人間になりたいもんね?

 常識的な事はしっかりこなさなきゃ…♡」


アシュリーが囁いた事でやっと

「はなわです…おいら、人間になりたいギョ!よろしくギョ!」


と、掠れた声で彼は言ったのだった。

ひえ…アシュリーにだけは絶対弱みを握られない様にしよう…


「あのさ、僕たちこれから大事な調査があるんだけど」


「勿論ご一緒するわ!いいわよねクレア王女!」


「えっ?ああはい…」


ティナ先輩に言われて咄嗟に返すクレア。


「もー!安請け合いして…変な事になっても知らないよ?」


僕が言うと、クレアは苦笑いでこちらを見ていた。


「…じゃあ人数も多いし前みたいにチーム分けしちゃおっか

 じゃんけんでいいよね」


じゃんけんで上手くチームが分かれ、


僕、ティナ先輩、ミモザさん

リオ先輩、クレア、塙さん

アシュリー、サーシャ、マリー先輩 のチームで調べることになった。


「なんだ、岸辺君と同じチームじゃないじゃないですか」

とアシュリーが呟く。

良かった…!彼女と一緒だとこの前の髪の毛貰う時にやったあれ…!

誰かに言われそうだもん…!


「僕のチームは寮生の能力について調べます、

 クレア達はブレーカー室の調査

 マリー先輩たちは絵の事について調べて欲しい」


「了解」


「任せてくれ!」


「それじゃ解散!」


ーーーーー


アシュリー達は3人ラウンジに残されると気まずそうに互いを見つめる。


(よりにもよって全然親しくないとこと一緒になっちゃったなあ)


アシュリーは苦笑いしながらも

「あの、絵の調査の許可取れて良かったですね!

 あの絵はかの有名な『マーリン』が描いた絵らしいですよ!」

と言う。


「『マーリン』かあ、きっとすごい能力を持ってる人だったんだろうなあ」


「固有能力は解ってないけど…彼女はペンタクル魔術…

 あー、授業で習ったでしょ?

 文字や記号で契約する事で精霊を使役する

 言わば魔法陣なんかの開発に長けた人物だったのよ

 私の能力も彼女の研究が無ければゴミ同然だった、素晴らしい偉人ね」


(ふーん、この女でも人を褒めることってあるのね)

アシュリーが感心していると、

目の前に例の絵が飛び込んで来た。


「上手ですよね、マーリンが描いた絵」


サーシャが感心したように言う。


「確かに、いい芸術センスね…魔法陣を書くにも画力が多少いるし

 きっとそう言うのが好きだったんじゃないかしら」


彼女はそう言って二人に手袋を渡すと、謎のライトの様な機械で絵を照らし出した。


「なんです?それ…」


「指紋とかが解るライトよ…でも鑑定されたばっかりって事もあって綺麗ね

 絵も状態も良好、特に傷が付いた様子もないわ」


「何の手がかりも無しですかあ…けほ」


サーシャは肩を落としながら言うと、少し咳込む。


「あら、風邪?」


「いえ、アレルギーで!すみません」


「そもそも何で犯人はこれを盗んで次の日に返したんでしょうか?

 特に盗んだからと言って何があるって絵でも無いような気がしますけど

 …巧妙な贋作に入れ替えられているとか?」

アシュリーが言うも、


「それはないわ、年代鑑定も一緒にやるはずだもの

 絵その物を複製する能力、とかなら解らなくも無いけど

 贋作になってるってのはありえない」

と言ってマリーが否定する。


「書いてある事に意味があるとか」


サーシャに言われ一同は作品を凝視する。

描かれていたのは鳥の丸焼きで、とてもジューシーに描かれていた。


「…何の変哲も無いけど…お腹空きますね」


「後でチキンでも奢ってあげる、

 でも何かしら調べた成果は出さないと…失礼」


彼女はそう言うと、丁寧に絵画をひっくり返す。


「開けるんですか!?」


「当たり前でしょ、隅々まで見ないと調べたって言えない」


(なんだ…やけに前のめりに調査に乗り出すんだな 

 …いや、そもそもこの女何で岸辺君とこんな調査を?)

アシュリーが勘繰っている中、その答えはマリーの胸の内にあった。


(お咎めなしで秋組に滞在できる理由が出来たんですもの、

 真面目にやらないと減点されちゃうわ!

 そしてその後ゆっくりと妖精の噂を調べちゃうんだから!)


マリーが額縁の裏側を外すと、そこに何かが入っている。


「紙…?」


一枚のくたびれた紙切れを見て不思議そうな顔をする3人。

白い紙の端には「可愛い僕のマーリン」

と書かれていた。


裏返すとそこには、鉛筆で描かれた何者かの似顔絵があった。


「これって…つまり…」


サーシャが言い切る前に

「マーリンの肖像画!?」


マリーが目を輝かせながら言う。


鉛筆画には薬剤が散布されているのだろう、マリーが触っても粉は付かない。

恐らくはこの額縁の裏でずっと眠っていたのだろう、端正な顔の美少女が優しく微笑む絵はとても綺麗に描かれていた。


「…あの…思ったんですけど」

アシュリーが絵を見て切り出す。


「何?」


「この顔どこかで見たことあるなって思ったんです

 それで思い出したんですけど

 クレア王女の後ろにいたあの子…ミモザさんに似てませんか?」


一同は顔を見合わせ、生唾を飲んだ。


ーーーーーーー 遊助視点


遊助は解散後、寮生に能力を聞いていたが…


「あの」


「げっ!クズ虫…!寄るな馬鹿!」


案の定の嫌われっぷりで上手くいかず。

ミモザは「ごめんね」と言いながら生徒が避けていくばかりだった。


「やばい…人選ミスだこれ

 僕が聞いても誰も答えてくれない…」


「私も」


「ミモザさんだっけ?君は何で無視されてるの?

 こんなに可愛いのに」


「やだ…♡可愛いだなんて本当の事…♡

 …能力が無いからですよ、サーシャ先輩が能力発現したから

 とうとうこの寮の無能力者は私一人になっちゃった」


「なるほど、世知辛いもんだ」


「アルカナの君も私を軽蔑するかい?」


「しないよ、そんなことじゃ」


僕たちが和気あいあいと話し込んでいると、

ホールの奥から「ちょっと待ってえ!」と叫び声がする。


声の方へ駆けつけると、ティナ先輩が色んな生徒に囲まれおしくらまんじゅう状態になっていた。


「あーあー!もー!人気すぎるのも考え物だな!」


僕が生徒達を避けると、


「ティナ先輩と握手したい奴は一列に並べ!そして握手して貰ったら自分の固有能力を教えるように!」

と叫ぶ。


寮生たちはブーブーいいながら

「私そう言うの教えたくないんですけど!岸辺のえっち!」

等とクレームを入れる。


見かねたティナが

「わ、私からもお願い!皆の事が知りたいの!」

と一声上げると、全員素直にその場に並んだ。


「ふふ、カリスマの差でボロ負けですね」


ミモザがニヤつきながら言う。


「相手は寮長だ、別に負けても悔しくないね」

そう言った僕の顔は恐らく誰の目から見てもむくれていた。


一通りの人数を捌いたが、嘘を吐いていない限りは特に事件とは繋がりの無さそうな固有能力ばかりで成果は無い。


「困ったな」


「固有能力を聞いても素直に答える生徒の方が少ないんじゃない?

 最近変なことが無かったか、とか

 そっちを聞いて回ったらどう?」

ミモザが上目遣いで提案する。


「いい察だね、流石」


僕がそう言って彼女の頭を撫でると、ミモザは笑顔で僕を見た。


「遊助!私も頑張ったのよ!私も撫でて!」


嫉妬したのかティナ先輩がミモザに割り込み喚く。

おいおい、中等部の女の子に張り合うなよ…


僕が渋々ティナ先輩の頭を撫でていると、一人の男子生徒がこちらへ歩いて来る。

彼は僕の前まで来ると黙ってこちらを凝視し、固まってしまった。

何かを言い出したくて戸惑っているような様子だ。


「ん…誰?何?」


「俺、高等部1年のダイ…なあ、クズ虫…俺思ってたことがあるんだけどさ…」


「う、うん」


「お前すげえモテねえ!?この前アシュリーたんに追い掛け回されてたし、

 魔法獣の授業でマリー先輩と仲良く話してたし…!

 あのっ…!エリちゃまとも仲いいし…!

 俺なんか『近寄らないで』とか言われたのに!

 今だってクレア様と言う婚約者がいながらティナ様を撫でまわしてる!」


「…あー…」


「やっぱモテるよな!?モテるだろお前ぇ!くー!羨ましい…!」


なんだ…そんな事で声かけられたの僕?

確かにティナ先輩とアシュリーは好意的だけど他は誤解があるよな…


「えっと、誤解だってダイ君!別にみんなそう言う感情で僕の周りをうろついてるわけじゃ…!ねえティナ先輩!?」


「いいえ?下心しかないわよ」


僕の問いにそうあっさり答えるティナ先輩。

聞いた人間が悪かったか…


「いいないいなー!なあどうやったらそんなにモテるんだよ教えてくれよお!

 固有魔法でもなんでも情報渡すからさ!」


ダイはそう言って僕の胸ぐらを掴みゆさゆさと揺すって来る。

何だこいつ…僕を拗らせたみたいな人間じゃないか!


「ちょっと今忙しいから…えっと、モテる秘訣だっけ?

 人助けするといいよ、ティナ先輩はそれきっかけで仲良くなったし」


「へー、クズ虫ってそういう事もすんだな

 あ、俺の固有ね!俺の固有能力はサイコメトリー…

 触ったものの記憶が読めんの!因みに人でも読める!」


彼はそう言って強引に僕に握手すると、

「岸辺が色んな奴に拒否られてんのが見えるわ」

と言って朗らかに笑った。


「おい!勝手に見んなバカ!」


僕は動揺しながら手を振り払うと、

ダイはへらへらしながら「ごめん」と謝る。


「じゃあごめんついでにもう一個いい事教えてやる!

 …ちょっと耳貸せ」


彼はそう言って僕に寄ると、

「秋組の妖精、お前も聞いた事あるよな?」

と囁く。


!妖精…今回の絵画には関係なさそうだが元々追っていた噂ではある。


「木曜と土曜の23時、ラウンジの奥にある音楽室でさ

 妖精が夜会してるんだ、俺も行った事あるんだけど…」


「まじか!どんな奴だった?」


「まあそう急くな!『セロリ』って言うと夜会に入れて貰えて

 未来に起こる事なんでも一つ教えて貰える…可能性があるぜ」


「何その…可能性って」


「妖精は貰ったお便りから2件、

 その場にいる人間の中から1件しか見てくれないんだ

 まあそれでも有難いんだけどさあ

 今日丁度土曜日だし、多分夜会やると思うぜ?

 お前も折角秋組に来たんなら参加して行けよ!」


彼はそれだけ伝えると満足そうに帰っていった。

妖精の夜会…ラウンジの奥だって!?しかも木曜日…!

そのタイムテーブルならそいつら絵が盗まれた時にそこにいた筈だ!

妖精にはあまり興味ないけど調べる必要はあるな…!

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