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祝日組寮のアルカナ  作者: よつば ねねね
5章「秋組の妖精」
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49話「本物のサーシャ」

「ふわーーーー!すげえ!広い!

 後なんかいいにおいする!」


僕は秋組の部屋に通されるや否や靴を脱いでベッドにダイブする。


「気に入ってくれて良かった!好きなだけくつろいでくれ!

 何なら6月に転寮してきてもいいんだぞ」


「いいねえ…このふかふかのベッドで寝れるならそれもまた…」


「…ついでにほら、ルハートいるだろ?

 あの子も連れて来てくれないか?」


「え、ははーんリオ先輩…むっつりだね

 ああいう子がタイプかあ」


「いや、特にタイプとかは無いぞ!可愛ければ何でもいける」


「わあー、秋組ってこんなんばっかなの?

 クレアはどうなんですか?幼馴染なんでしょ」


「…」


僕の問いに彼はスン、と無表情になる。


「え、顔怖…!なに、なんなの!」


「いや!クレアは勿論素敵だが王女だからな!

 俺みたいな下級の人間には合わないさ!」


はーん…


ーーーー


「はい、クレア様」


一人の少女がドアを開けて部屋に入るよう促す。

彼女は中等部3年の「ミモザ・ステライト」様。

不思議の国のを彷徨う女の子の様な、長い金髪に青い目の可愛い女の子だ。


「ありがとうございます」


「びっくりしたよ…急に呼び止められて」


『やあ!君って女子生徒だったよな!クレア王女の部屋へ案内してやってくれ!』


「とか言われたもんだから」


兄さまは見ない間に大分強引で元気な殿方になっていたようね、

昔はもっと落ち着いていてシャイな人だったのに…時間と言うものは不思議です。


ミモザ様に荷解きを手伝ってもらうと、彼女は足早に部屋を立ち去ろうとする。


「待って…!えっと、もっとお話ししない?

 ほら、折角出会ったのだし」


「私、能力が無い底辺の者でして…王女様とお話しできるような人間じゃないんです」


「関係ないわ!貴方が嫌じゃなければここにいて!」


彼女は少し考えこむと、引き返して私の隣に座る。


「王女様が無能力者を必死に引き留めるなんて変なの」


「ご、ごめんなさい…」


「王女様、もしかして『妖精』に会いに来たんですか?」


「『妖精』?」


ああ、そういえば遊助様がそんなこと言ってたっけ…


「夜この寮をうろついてると『妖精』が現れて願いを叶えてくれるんだって!

 素敵でしょ?他寮の人も調べたがってるくらい噂になってるらしいの」


「願い…」


「王女様なら何を願いますか?」


私なら…


「そうね…えっと…普通になりたいわ」


「普通に?」


「最近、友人に言われましたの

 育ちが違い過ぎて感覚がずれているって…」


『王族は王族と遊んだほうが楽しいだろ』


「初めて言われましたの、そんな事

 今まで生きてさえいれば人が勝手に寄って来て

 王女としての私を愛してくれた…ここに来て、

 そうじゃなくても傍にいてくれる友人が出来たのに

 …離れていくんです、近付くほどに」


「はー、クレア王女にそんなこと言う奴いるんだ、デリカシー無いですねえ」


「そんな事無いわ!いい人なのよ!」


「わ、急におっきい声出さないでください」


「ご、ごめんなさい…」


「でも、クレア様のお願いは妖精でも叶えられないかもしれないですね」


「どうして!?」


「普通って、一番難しいですから」


彼女はそう言って寂しげに微笑んだ。


ーーーーーーーーーー


クレアがミモザと談笑している頃、サーシャのふりをしたマリーは女子生徒に詰め寄っていた。


「おい、あんたの固有魔法ってどんな能力?教えろ」


「え!?きゅ、急にどうしたのサーシャ君…!」


女子は満更でもなさそうに顔を赤らめている。


「だから固有魔法の能力を教えろって言ってんだよ!

 急でも何でもねえ、知りたいから聞いてんの!

 で、どうなんだ?」


「超音感が良いって能力です…」


「なるほど、行ってよし」


あまりにも豹変したサーシャの様子に秋組の生徒達は戸惑っていた。


「サーシャ君…何か今日…ね?」


「わかる…ちょっといいよね…」


「おい!あんたら何ひそひそ話してんだ?

 喋ってる暇あったらあんたらの能力も教えな」


「はいい!」


マリーが生徒達に固有魔法の能力を聞きまわっていると、「オリジナル」が運悪く通りかかってしまう。


「え!?あなた…!」


サーシャ同士が鉢合うと、マリーが扮するサーシャがオリジナルのサーシャを物置に引きずり込んでしまった。


「…何あれ?」


女子生徒は異様な光景に面食らいながらも、何事も無かったかのようにその場を立ち去った。


物置の中でサーシャは、自分とそっくりな人間に口を塞がれ混乱している。


「ーっ!?」


バタバタと、足を動かすも偽物に「静かにしないと殺す」と脅され身動きすら取れなくなってしまう。


「こんにちは、サーシャ…元気だったかしら?」


「誰ですか!?」


偽物のサーシャは何かの薬を飲むと、白髪の少女に変身した。


「マリー寮長!?な、何で僕なんかに変装を…!」


「うるさいわね、事情があったの!

 そうじゃなきゃあんたになんか変装しないわ

 それより、解ってるわね?

 この事騒ぎ立てたらあんたの顔で3股する…!」


「犯罪じゃないですか!」


「じゃあ私に楯突く訳?」


「あ、いえ…誰にも言いません」


「マリー寮長~サーシャが二人いて

 おかしいって女子生徒が騒いでたけど大丈夫?」


そう声を掛けながら遊助とリオが倉庫に入ると、

サーシャが羽交い絞めにされている現場を目撃する。


「サーシャ!なんか羨ましい事になってるな!」


第一声リオが言うと、


「呑気なこと言ってないで助けてよ!」

とサーシャは声を上げるのだった。


助けられたサーシャは

「ありがとう、リオ兄さん」

と息をつきながら言う。


「兄さん!?君たち兄弟!?」


「ううん、僕が個人的に呼んでるの…彼、僕が

 無能力で困ってた時、一番親切にしてくれたし、助けてくれたんだ」


「へえ…流石ですねリオ先輩」


「人として当然の事をしただけさ!」


それでマリー先輩の変身にもすぐ勘付いたんだな…

この二人、何だか本当の兄弟みたいだ。


ーーーーー


その日はそれで解散となり、僕はロゼ先生に呼び出され再び職員室に訪れる。


「ロゼ先生…僕だけに用事って何ですか?」


「ああ、岸辺君!君には個人的に色々聞きたい事があったし…

 伝えておきたい事もあったから」


個人的に色々!?な、なんだろう…!


「何でも聞いて下さい!誕生日でも血液型でも!」


「え?…えっと…あなたってルハートさんと同じ寮だよね

 ルハートさん、元気してるかなと思って」


またエリの話題?教師人気が高いのか…?


「本人は楽しそうにやってますよ」


「良かった…!彼女、私の受け持ってる授業で…その

 孤立してて…私としかペアを組みたがらないの

 上手くやってるなら全然いいのよ」


祝日組寮の様子からは考えられなかったが、ガフ先生の話からもエリは他所じゃ孤立してしまっているようだ。


「それとね、君に伝えておきたい事があったんだ

 君は私の能力って知ってるかな?」


「知りません!占い学の先生って事しか…」


「そう、それだけ知ってれば十分

 私の能力は『未来予知』何となくの未来が少しわかるの

 それで、ちょっとその…良くない未来を見ちゃって」


「良くない未来?」


「シーザー=トニト君…うちの寮長は知ってるわね?

 明日あの子が叫びながら倒れているところを見てしまって…」


シーザー先輩が…!?


「彼は優秀な魔法使いよ…!その能力は皆も知る通り

 あの子が誰かに負けるなんて…考えられない

 でも気を付けて岸辺君!彼をしっかり見ててあげてね!」


とは言ってもまだ帰って来てもいないんだぜ!?

…!まさか、すでに何かの事件に巻き込まれて…!


「何故僕に言うんです?」


「君は強いし…申し訳ないけど今この寮を客観的に見れるのは貴方だけ

 寮生だとどうしても…その

 犯人が誰かを色眼鏡で見てしまうでしょ?」


「先生的には誰だと思うの?」


「…わかんないよ?わかんないけど…リオ君じゃないと思う…

 私の能力って不安定だから、3日以内の不確定な未来が見えるんだけど

 時刻まで狙って見れないし1日1度しか能力が使えないから、

 犯人まで特定できないのが歯がゆいんだけど…」


一日一回…人狼ゲームの占い師みたいな能力だな。

未来予知ってなったら十分強力ではあるけどね。


「解りました!シーザー先輩の事はしっかり見ておきます!」


僕は彼女に自分が出来る限り凛々しい顔で言い放って見せると、

職員室を出た。

かっこよかったよな…?かっこよかったよな今の?


しかし…こんな時間になってもシーザー先輩が帰ってくる予定は無いし

明日何かあるんだとしたらきっと今頃…!まずいな、今すぐ皆に報告して…!


「あ、遊助じゃないかー!何してるんだいうちの寮で」



「いる!?」


僕はご機嫌に挨拶をする彼を見て思わず叫んでしまう。


「え、何?いるけど…寮長だよ?僕」


「シーザー先輩、本物!?変身薬で変化した別人じゃないよね!?」


「そんなわけないでしょ…何なの君」


「フラワー!」


僕が彼に頭に花が咲く魔法をかけると、

僕の頭に可愛いポピーが咲いた。


「…本人…」


「だからそうだってば!」


ーーー


「ふーん、盗難事件の調査ねえ」


カフェの椅子に腰掛け、シーザー先輩がアイスコーヒーのストローを回しながら言う。


「確かに絵が盗まれたまでは聞いてたけど…戻って来たのは初耳だった」


「ずっと寮にいなかったもんね、何してたの?」


「…明日、友達に会うんだよ…結構付き合い長い奴でさ」


「ははーん、どうせ女でしょ」


「どう取ってもらってもいいよ、個人的な事だ

 介入されても答える気は無いね」


「そこまでして会いたい女なわけ?寮生が泣いてるぜ」


「こんな状況で悪いけど調査は暫くリオに任せる

 彼は優秀だしきっと大丈夫だ」


彼はそう言いながらアイスコーヒーを煽る。


「長い付き合いなんですってね?彼疑われちゃってますけど

 本当に任せていいんですか?」


「彼に限って悪事を働くなんて事はないさ

 まあ、多少根暗だがいい奴だよ

 君も信用していい」


根暗?あのリオ先輩が?

少年漫画の主人公みたいに底抜けて明るいイメージだけど…


「それじゃあ僕はこれで」


彼はそれだけ言うと廊下の奥へ消えて行った。


「ふん、すかしやがって…」

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