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祝日組寮のアルカナ  作者: よつば ねねね
5章「秋組の妖精」
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48話「リオ」

「おい、何で戻ってんだよ…!」


カフェで合流するなりサーシャ君の顔をしたマリー先輩が言い放つ。

運悪く先生と合流したから…って言っても解ってもらえないか


「すみません」


僕は一応、彼女に職員室で聞いた話とこれからの予定を彼女に話した。


「ふーん、副寮長に会うんだ

 俺あいつ嫌いなんだよなー、目が笑ってなくてさあ」


頬杖を突きながら気だるげに言うマリー先輩の肩に、小さな人形が降りてくると


「やあ、ご挨拶じゃないかサーシャ!」

と言って彼女を見る。


「ぎゃっ」


マリー先輩が青い顔をして飛び跳ねるので驚いて見上げると、

そこには爽やかな雰囲気のイケメンが立っていた。


シーザー先輩とはまたタイプの違う、体格のがっしりとしたスポーツ経験のありそうな男…まさかこの人が?


「…えっと…副寮長のリオ=モッキンバード?」


僕が訪ねると、彼は白い歯を輝かせながら


「ああそうさ!君はアルカナの岸辺だね!会えて光栄だ!」


と言って力強く手を握って来た。


「しかし驚いた!2週間前まではあんなに気弱だった君が、

 今や俺の陰口を堂々と言うまでになるとは!」


そう言って彼はサーシャ君…のふりをしたマリー先輩のあたまをぐわぐわと撫でる。

マリー先輩はあまりの力強さに耐えきれず頭を左右に揺らして固まっていた。


「丁度あなたに会いたかったんです、リオ先輩

 例の絵画の盗難事件について調べさせてもらえませんか?」


「勿論大歓迎さ!味方は多いに越したことは無い!

 概要は聞いているね?今停電事件を起こせそうな生徒を探していたんだが

 俺は馬鹿だから見当がつかなくってね!」


「停電って言うんなら電力のキャパをオーバーさせて落としたとかの線はねえの?」


マリー先輩が言うと


「ああ!真っ先に調べて貰ったがそんな記録は無かったそうだ!」

と、リオ先輩は元気に答える。


「なら能力者の線が濃厚か…あんた疑われてんだろ?

 理論上犯行が可能な能力なんだよな、見せてみろ」


横柄な態度で言うマリー先輩にリオ先輩は唖然としている。


「何の冗談だサーシャ

 君なら俺の能力を良く知っているだろう」


「あ…岸辺が知らないから見せてやれっつってんの!」


マリー先輩が気まずそうに言い放つと、

リオ先輩は指を動かし

先程マリー先輩の肩の上に乗っていた人形を器用に動かして見せる。


「人形を操る能力か…確かにこれならセンサーにも反応しねえな」


「便利な能力ですねえ…どのくらい遠くまで移動できるんですか?」


「大体半径10メートルくらいかな…と言うのも特に制限は無いんだが

 見えていないと正直上手に動かす事が厳しいから」


はー、制限なしと来たか…そりゃ怪しまれても仕方ないな。


「よし!生徒たちの能力を探ってみよう

 もしかしたら先輩より犯行に適した人間がいるかもしれないし」


僕が立ち上がると


「いた!いました遊助様!」

と聞き慣れた声がする。


「…クレア、何してんの?」


「なんですか…何でそんな顔で見るんですか…!?」


そりゃ、何の説明も無しに急に王女が現れたら驚きもするだろ。


「リカルド先生から聞いたのです!調べ事、するのでしょう!?

 私も混ぜて下さい!」


「遊ぶんじゃないんだよ?」


「でも…その…え、エリとナラク様が

 私を仲間外れにして何やら楽し気な話をされているので

 なんか悔しくなってしまって…」


「またそんなこと言ってんの?案外我儘だよなあんた」


「…それは…その」


クレアは僕に言われてしゅんと肩を落とす。


「おい遊助!王女陛下相手に何説教してんだよ!

 王女陛下、こんな薄情な奴放っておいて一緒に調査しましょ!」


「えっ…ああ、サーシャ様…?

 なんか雰囲気が変わりましたか…?」


彼女が動揺しながらリオ先輩に目を向けると、信じられないものを見たかのように目を丸くする。


「…リオ兄さま…!」


「え?知り合い?」


「知り合いなんてものじゃありませんわ!

 リオ様は私の兄代わりの王子の召使で…

 昔はよく一緒に遊んだんですの」


そんな深い仲だったのか!幼馴染ってやつ?

なんかロマンチックじゃん!

しかしリオ先輩はクレアの顔を少し複雑そうに眺めている。


「お元気でしたか?リオ兄さま!

 何だかとっても…その…」


彼女は言いかけて顔を赤らめたまま黙ってしまう。

まあ言いたい事は大体わかる、「凛々しくなられましたね」とでも言いたいのだろうが、

シーザーの件もあって言いにくいのだろう。


「えっとお…大きくなりましたわ…ね?」


「はは!そうだな!お互いに大きくなった!」


「シーザー先輩、クレアが調査に混ざりたいみたいなんだけど…」


「あー…危険な事を任せなければ問題無いんじゃないか?

 君がしっかり守ってやってくれ、婚約者なんだろ?」


彼はそう言って爽やかに笑うが、その目は笑っていないように見えた。


「じゃあ王女様も参加ってことで!シーザーは何時までカフェで休憩してんだ?」


「明日は土日だし…予定があると言っていたからもしかしたら今日は遅くまで帰って来ないかもな!

 一旦彼抜きで捜査をしよう!君達はどうするかい?土日だしここに泊まって行ってもいいが」


「え!?兄さまの部屋に…ですか!?」


「空き部屋にだ!失礼だが馬鹿なんじゃないのか?」


「いーねえ!僕祝日組寮で寝てると埃っぽくて嫌なんだよ

 お言葉に甘えさせてもらおっと」


「私も…別に意味はないですが折角なので泊まりますわ」


「君はどうする?」


リオ先輩は、一見サーシャにしか見えないマリー先輩に問いかける。


「サーシャ様は秋組の方では?」


「サーシャだったらな!でも君は別人だろう?」


まあ口調でバレバレではあったけど…こんな短時間で見抜くなんて流石は副寮長だ。


「ふん、バレちゃしょうがない…王女様がいれば怒られる雰囲気でもないし

 俺はマリー・ブラド―がサーシャに変身した姿だよ」


「なんだマリーか!顔見知りなんだから正直に言ってくれればよかったのにな!あはははは!

 …最初俺が嫌いとか言ってなかったか?」


「ひっ…顔怖…!言ってないわよ!」


なんかこの二人合ってんだか合ってないんだかわからない感じの組み合わせだな…


僕が呆れていると、クレアが二人の様子をじっと見ている。


「どうしたのオージョサマ?」


「…何かに近づこうとする度…離れていく夢を

 最近よく見ますの」


「どうしたの急に」


「私は…普通ではないから

 だから、他の皆様とは相容れないのかもしれない

 王女で、世間知らずで、穢れを知らず育てて貰った自分を

 恵まれた環境で育ってきた自分を

 恥じてしまうのが、罪深いと…そう思っただけです」


「そうやって気持ちを言語化できてるなら成長したよ」


「…成長…ですか」


「クレア、この事件が解決したら連休が始まるだろ?

 そこで僕とデートしない?」


「はい!?」


「思えば僕ってクレアの事よく知らないんだもん

 婚約者なんて危険な役やらされてるのにあんまりだよね」


「確かにそれはそうですが…」


「じゃあ約束!この事件が解決したら僕とデートね

 逃げんなよ?」


「そっちこそ」


クレアはその日初めて、少しほっとした様子で笑っていた。

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