45話「美味しそうな君」
全員が食べ終わった後、発表は続いた
赤チームが最後を希望した為、次の発表は青チームがやる事になったのだが…
アシュリーがいるし不安があるんだよなあこのチーム…変な物作って無いといいんだけど
「オレンジチームの料理、とても美味しかったです!
素敵なお食事の後で恐縮だけど、
私達が作った物も見て頂きたいです」
手押し車に被せられた布が取られると、
中から眩いばかりの光を発しながら白い粘土の像らしき物が登場する。
2人の銅像は大分美化されていたが僕とクレアで、何故か僕が四つん這いで涙を流しクレアがその上に座っていた。
「うわ!こんな像作りやがって!いじめだ!」
僕が声を上げると
「ち、ちがうのよ遊助…遊助の足を長くしようと思ったら膝から真っ二つに折れちゃって…」
「修正していたらこうなったのだ」
寮長達が弁明する。
「何にしても悪意はあるだろ!
ブルショットさん止めなかったの!?」
「だ、だって…ダリアさんは可哀想なのが可愛いって言って聞かないし
マティーニ先輩は岸部君嫌いだからノリノリだし
ティナ先輩も力持ちな感じがしてかっこいい気もするとか言うから…」
「変人しかいないのか青チームは!」
「一応…テーマは王女を守り戦う騎士という事なので…なんかすみません」
メガネをクイっと上に上げながら小さい声で言うユーリ先生。
うっすら額に浮かぶ汗から、この濃いメンツを纏め切れなかったのであろう事が伺える。
「ユーリ先生!いかにも厳しい教師ですって顔しといて流されやすいのどうかと思うよ!」
「返す言葉もない」
「何か最初はやばい気してたけどまあこれも芸術かな?みたいな雰囲気で流されていってたよね〜」
いってたよね〜じゃない!何笑ってんだこの適当教師!
「この像は何日間か西広場に飾られる予定だからよろしくね」
アシュリーが満面の笑みで言う。
まじかよ…公開処刑じゃないか!
「アシュリー、君楽しそうだな」
「はい!凄く楽しかったです」
この女…!いつかギャフンと言わせてやる…!
「で、でもこの像凄くよく作られてますよ!
遊助様も凛々しいし私も可憐なように見えます!」
僕を気遣ったのか、クレアが擁護に入る。
「凛々しく君の土台になられても困るんだけど?」
「まあまあ、落ち着きなさい岸部
あんたがかっこよくポーズ決めた像なんか作りでもしたらそれはそれで何されるか解ったもんじゃないし…
この作りなら頭をもごうと思っても出来ないわ、良かったじゃない!」
「…」
駄目だ…疲れて来た。
「ねー!青チームの発表終わり?
赤チームの成果物凄いですよ!
早く見せたいなー!」
メアさんが無邪気に言う。
もういっそ話題を変えてくれ…
「うむ、では赤チームの発表をお願いする」
「はーい!赤チームが作ったのはお薬だよ!
今冬組で熱い遺伝子研究のデータと
生物に詳しい医療棟の知識を活かして作った…花の色を変える薬でぇーす!」
彼女はご機嫌に青い薬品を取り出すとそう紹介してみせた。
「花の色を変えられる!?そんな凄いことが…!」
クレアが興味津々に身を乗り出しながら言う。
「出来ちゃうんだなー!
ここに!赤い薔薇がありますっ!
それにこの薬をかけるとおー?」
メアさんが赤い薔薇に青い薬品をかけると、みるみる青く変色していった。
「まあ綺麗!」
クレアは青くなった薔薇をうっとりした様子で眺めていた。
「あの短時間でよく作れたものだ、感心感心」
「その薬、私にも1本頂けないでしょうか」
ガフ先生とユーリ先生が食いつくと、
「もっちろん!人数分用意しといたよ!」
メアさんがそう言って机に大量の薬品を並べた。
へえ、貰っていいんだこれ。
「以上が赤チームの発表でしたー!」
「ふむ、皆素晴らしい成果物をありがとう」
「この中から1番良いものを選んだりとかしないのか?」
マティーニ先輩が尋ねる。
「そういうの最近御家族からのクレームになりやすいから…無しで」
「何か締まらないわね」
リカルド先生の淡白な答えにマリー先輩は呆れた様子だ。
「ここでの交流はきっと君達をこの先も助けて行くはずだ
今回は機会を学園側から設けたが、
これからは各自息の合う者同士で交流を続けて欲しい、それでは解散」
意外にもあっさり会は終わり、
すぐに寮に戻る者、暫く談笑を楽しむ者等各々好きに過ごしていた。
「アシュリー、君の素敵な瞳に吸い込まれそうだ!連絡先教えて」
シーザー先輩が言うと、アシュリーは携帯を握りつぶし
「今携帯が壊れたので難しいです」
と笑う。
「そんな嫌!?」
僕が青い顔でそれを眺めていると、サーシャ君がもじもじしながらこちらに歩いてきた。
「あ、あの…岸部君、良ければ…その」
「連絡先交換する?」
「いいかな?」
「勿論!また料理とか教えてよ!
あ、それじゃ僕この後用事あるんでー!」
嫌な気配を感じとり、走ってその場を後にしようとすると
首元をアシュリーに掴まれる。
「岸部君?逃げようとしても無駄ですよ?」
「ぐぅっ」
「ああ、あなたは確かサーシャ・ルー二君!
どうも、岸部君借りてくね!」
「彼、嫌がってそうだけど…」
「嫌がってそうじゃない!嫌がってんだ!助けて!」
「彼の場合嫌よ嫌よも好きのうち、
もがく程喜んでる証拠だから」
「そ、そう」
納得しないでよサーシャ君!
「サーシャ君助けて!
いやだああああああ!死にたくない!」
僕は叫んだが、皆アシュリーに恐怖して目を逸らす。
絶望しながら僕はどこかへ引きずられていった。
「…色んな人がいるんだなあ」
「いたいた、サーシャ!帰ろうか!」
「はい!」
ーーーーーー
カイ先輩の部屋の玄関先で、私はドキドキしながら立ち尽くしていた。
きっと彼の様子を見るに変な気は無いのだろうけど、とても緊張してしまう。
遊助の部屋に来たときはこんなに緊張しなかったのに…
「はい、僕のお古だけど良かったら使って」
「へっ!?」
差し出されたのは、少し前によく見たゲーム機だった。
本当に貸してくれるなんていい人だなあ
「ありがとうございます!…えっと」
しまった、名前を知らないや…!
「あ!そっかごめん!俺2年カイ=ブルーム
医療棟の監督生をしてます」
「監督生!?す、凄いんだ」
「そうでも無いよ、出来損ないさ
君の方がよっぽど凄いと思うな
いい能力を持ってるし…羨ましい程の魔力量だから」
彼はそう言ってどこか悲しそうに微笑む。
「わ、私…自分の能力好きじゃないの」
「え?どうして?」
「理由なんかありすぎて言いきれないよ…
おかしいって思われるかも知れないけど、
私の夢はこの能力が無くなる事なの
…はは、無理なのは解ってるけどね」
「無理じゃないよ!…そうだ」
カイ先輩はポケットから何かを取り出すと、
「見てて、今から薔薇を青くするから」
と言って玄関に飾られていた赤い薔薇に青い液体をかけてみせる。
すると薔薇は赤い色から青い色に変わって行った。
「凄い…!綺麗」
「青い薔薇はずっと実現不可能だって言われていたけど、
長年の研究の末に近年実現出来たんだ
花言葉は『夢叶う』…
きっと君の夢も叶うよ、応援する」
彼はそう言って青い薔薇を私に差し出す。
「…くれるの?これ」
「うん、ゲームと一緒に持って帰って」
「ありがとう…ゲーム!すぐ返しに来るから!」
「焦らないでいいよ、またね」
カイ先輩かあ、凄くいい人だったなー!
…それに凄くかっこよくて…
次返しに来るの、楽しみ!
少し昂った心を抑えつつ、私はご機嫌に寮へ帰ったのだった。
ーーーーー
…エリ=ルハートか、噂通り凄く質も高くて膨大な魔力量だ
あんな魔力があったら…俺は…
!
何考えてるんだよ!
駄目だ、それに手を出したら俺は人として終わる
でも、でも彼女…凄く…
「美味しそうだったな…」




