44話「運命の出会い」
遊助達が集まっていた頃、
学校のとある通路にてカイ=ブルームは肩を落としながら歩いていた。
『君は病気の事もあるんだし、余り不用意に魔法を使わないように
…全く、どうして医療棟の監督生を診なきゃいけないんだか』
それは先刻彼が医療棟の3年生に言われた言葉だった。
(魔力の生成が歳と共にされなくなって行く難病…こんなの無ければ1度魔法を使ったくらいで疲弊せずに済むのに
やっぱり、手段を選んでる場合じゃないのかな)
そんな事をボーッと考えていると、カイは向こうから歩いて来た女子生徒と衝突してしまう。
「きゃ!」
「わ!ご、ごめん…!ボーッとしてて!
怪我は無い?」
彼と衝突したのは黒髪が印象的なとても美しい少女だった。
(…この子…凄く…)
「ごめんなさい!私も考え事してて…
1人で立てますから」
カイと目を合わせないようにしながら彼女は立ち上がる。
「エリ=ルハート…?」
「え」
「あ…えっと、君って有名人だから…つい」
「ああ…大丈夫です、それじゃ」
彼女を知っている男子がする行動と言えば、何処かに早足で去っていくか、軽い女だと思ってナンパして来るかのどちらかしかない。
エリは嫌な予感を先に感じてそそくさと何かを拾い上げると、その場を早足で去ろうとする。
「その人形!アリスじゃない!?」
しかしその場を去ろうとしたエリをカイはそう言って彼女を引き止めた。
「このキャラクターの事…知ってるの?」
エリは相変わらず彼と視線が合うのを避けるように俯きながら問いかける。
「うん!そのキャラが出てくる作品、俺好きなんだ
君も好きなの?『サキュ恋』」
「いやこれは…私の物じゃないの、拾い物で…」
「そっか…君ってアリスそっくりだし
てっきりファンなのかと」
「で、でもこのキャラの事は知りたい!
おし…え…て……」
エリはそこで初めてその少年の顔を見た。
綺麗な白髪に赤い瞳が印象的な美男子を見て、彼女は目を奪われてしまう。
(うわ、すっごく綺麗な男の人…
まるで天使みたい…
それに誰かに似てるような…)
「どうかした?」
「えっ!ああいや!何でもない…!」
「知りたいなら丁度良かった、俺これから寮に帰る予定なんだ
良かったらその子が出てくるゲーム貸してあげるよ、
着いてきて」
彼はそう言ってエリの手を取るとそのまま歩き出した。
「ま、待ってよ!私の事知ってるならあだ名も知ってるよね!?
…怖くないの?私の事」
「君のどこが怖い人なの?
…可愛いとは思うけど」
彼の言葉にエリは戸惑いながらも手を振りほどく事が出来ず、
顔を赤くして俯いたまま彼に着いていく事にしたのだった。
ーーーーー
「皆、何故吾輩をそんな目で見るのか」
ヴィル先生に連れて来られたリカルド先生は眉をハの字にして言う。
「やっとヴィル先生と戻って来たと思ったらゲーム機片手に戻って来たからね!」
「仕方ないだろ、冬組が開発した新作と聞いたら触りたくもなる…
モスコミュール君へのお土産にもしたいし」
リカルド先生が珍しくおたおたとしながら言い訳していると、意外にもユーリ先生が深いため息を吐いた後に
「もういいから初めましょう、まずどのチームから発表しますか?」
と助け船を出した。
「冷めちゃうしうちからでいいんじゃない?」
「そうですね!遊助、彼らに作った物をプレゼンして」
シーザー先輩に促され、僕は大きなテーブルの前まで来ると
「はい!僕たちオレンジチームは料理を作りました!こちらが今日作ったロールキャベツにサラダ、トマトスープです!
魔力回復にいい薬草やマクレーン先生の育てた特別な野菜をふんだんに使った滋養強壮料理なので是非ご試食を!」
と言ってカトラリーを配る。
「わー!丁度お腹空いてたのよ!頂きます」
「マクレーン先生が育てた野菜を頂けるとはありがたい、頂こう」
「これって教師も食べていいの?」
「どうぞ!」
「やったー!最高!」
「マクレーン君の野菜が食べられるなんて贅沢ですねえ!僕も頂きます!」
最初に寮長達が飛びつくと、次に先生達も嬉しそうに料理を手に取る、
どうやらマクレーン先生の育てた野菜は人気があるらしい。
「ルー二君、この野菜…例えば吾輩が食んでいるレタスひと玉いくらすると思う?」
「えっ…高級な野菜なら…5000ゴールドとか」
「いいや、マクレーン先生が作った野菜はそんな次元じゃない
ひと玉2万ゴールドはする代物だ」
「ええ!?」
「彼はこの交流会にかこつけて色々な教師や優秀な生徒に野菜を振舞って自身のビジネスを宣伝しようという魂胆なのだ
とはいえ大人でも中々手が出しづらい代物だから君も今のうちに沢山食べておくといい」
「は、はい…!」
へえー、キャベツが二万ゴールド…!
そりゃ食べておかなきゃって気にもなるな
「岸部君、あなたはどれを作ったんですか?」
全員が食事を楽しむ中、アシュリーが空の皿を持ちながら尋ねる。
「ほぼ全部手伝ってるよ」
「まあ!岸部君の手料理が食べられるなんて本当に参加して良かった…!」
彼女はそう言って目を輝かせながらサラダをよそい始める。
ご機嫌だし、今頼めば髪の毛もタダでくれるんじゃないか!?
「ねえアシュリー、料理食べれて良かったろ?
例のあれくれないかなあ?」
「それはそれ、これはこれです
後でしっかり交渉しましょ」
くっ、だめか…!
「…岸部君」
僕が落胆していると、申し訳無さそうな顔をしながらブルショットさんに声をかけられる。
「あ、ああ!ブルショットさん!何?」
「今朝のあれ…ごめん、解ったようなこと言って」
「今朝のあれ?ああ!ナラクエリの事でしょ?
勘違いがあったんだろうなって思ってるから気にしてないよ!」
「だって!良かったねブルショットさん!
それじゃあ用は済んだよね?また後で」
アシュリーが彼女を引き離そうとすると、
彼女はアシュリーを軽く押しながら
「む…もう少し岸部君と話させてよ
ダリアさんっていつも岸部君にくっついてるけどさ、
君たちって付き合ってるの?」
と尋ねて来た。
「はい!?」
とんでもない!とんでもなさすぎるよブルショットさん!
こんな透明になれるタイプのストーカーと交際疑惑を持たれるなんてあんまりだ…!
「なになにー!?恋バナしてるの!?
私もまーぜて!」
メアさんが興味津々な様子で駆け寄って来る。
まずい…!変な勘違いされる前に訂正しないと!
「違…!はっきり言っておくけどアシュリーは友達であって恋愛関係は一切なし!
この子能力使って僕に付きまとうんだよ」
「付きまとうだなんて…!一緒に一夜を過ごした仲なのに」
「ええ!?い、一夜…!?」
「詳しく聞きたあーい!どこまで進んだのそれー!」
女子達が楽しそうに食いつき、満更でも無さそうな顔でアシュリーは「聞きたい?どうしようかな」と呟いている。
「おい!話をややこしくするな!」
ーーーーーー
「…モテますね、彼
女の子に囲まれちゃって…」
遊助様を見ながらあまね様が言う。
彼は女子達に何かを訴えかけている様だった。
大方、アシュリー様にまた振り回されているのだろう。
「んもう…遊助様はいつも変な目立ち方するんですから」
「…王女様…嫌じゃないんですか?
婚約者があんな調子で」
「えっ!?いやまあその!結局は私のとこに帰って来ますからー!おほほ!」
そっか!遊助様って婚約者なんでした!
嫉妬心が全く湧いてこないせいで忘れかけてましたわ!
「あ、そういう心持ちだったんだ!
2人ともずっと友達みたいな距離感だから
婚約者にしては落ち着いてるなーって思ってたんだけど」
横でサラダを大量に食べていたサーシャ様が
会話に参加する。
ああ、もっと気を使わないと正式な婚約者じゃない事が周りにバレてしまう…!気をつけないと!
「サーシャ様…!そうなんです!
我々熟年夫婦みたいな心構えですから!」
「こんにちは…ルー二君と話すのは、初めてですね」
あまね様がサーシャ様にお辞儀をする。
2人はお会いするのが初めてだったのね
「こんにちは西園寺さん!
俺は能力も持ってないし…嫌なら無理して話さなくても良いから」
彼がそう言って笑うと、あまね様は目を丸くして
「能力を持ってない…?何故そんな嘘を」
と呟く。
「…え?」
まずい、何か空気が悪いです!
話題を変えないと!
「あ!あまね様ずるい!よく見たらロールキャベツ3つ目取ってるじゃないですか!
それ2個までなんですよ!」
私は何とか見つけた話題で2人の気を逸らす。
「ひっ…すみませんバレないと思って」
「あはは!西園寺さんてば細いのに結構食べるんだねー」
良かった、サーシャ様笑ってる
…さっきのサーシャ様の顔、まるで別人のよう…
強い恨みを持った亡霊の様な顔でした
何か触れてはいけない事に触れたのでしょう、
無能力はセンシティブなワードの様ですし。
でも、あまね様はどうして「嘘」と言い切ったのでしょうか
「あ!西園寺さん!流石にクレア王女のロールキャベツを横取りするのは人として駄目だよ!」
「へっ!?」
「す、すみません…!ぼーっとしてるなと思ったから…!」
全く油断も隙もない!
私も早く食べてしまわないと!
私は出来る限りの大口でロールキャベツをほおばった。




