24話「ナラクと王族」
「人魚の調査?」
お茶をすすりながらエリが問う。
「そう、この夏組で起こってる妙な事件を解決したくて話してたら
マリー先輩が襲い掛かってきて…!」
「妙な言い方すんじゃないわよ!私はあんたの固有が見たかっただけ!」
「まあ事情は分かったけどさ…何回聞いても変な話だよね、夏組寮の人魚」
「変って…何が?」
「人魚って本来そんな狂暴な種族じゃないんだよ」
「私は地元で人魚は魔物に近い種族で旅人を誘惑する者だと聞きましたが…」
「そこに誤解があるの!水辺に出て人を惑わせるのは『セイレーン』の方!
半人半魚に見える魔物で、人間ではなく魔族に分類される種族なんだよ
見た目もそっくりだし…水辺にいて歌うっていう点が類似してて
よく人魚と混同されちゃうんだよね
夏組寮で暴れてるのも多分セイレーンなんじゃないかなって思うんだけどなあ」
「半人半魚なら人魚みたいなもんじゃない!細かいわね」
「全然違う!歌で傷を癒す能力がある人魚と操る能力のあるセイレーンが同じなわけないじゃない!
私が生まれ変わりたい種族ランキング上位にいる人魚と物騒な魔物を一緒にしないで!」
「岸辺、やっぱあんたの寮変なのばっかり」
マリー先輩は辟易とした様子で僕を見る。
「普段はまとも寄りの子なんだけどね…
エリ、異種族に詳しい君がいたら心強いし
一緒に人魚について調べてくれないか?」
「…この二日間かけて?」
「うん」
「昨日…あんまり遊助と一緒に遊べなかったから今日か明日くらい遊べると思ったのにな」
エリが僕と?
最近エリ含め祝日組寮女子諸君の好感度が著しく低くなってるように感じたんだけど
何だ気のせいだったのか!
エリったら僕と二人で遊びたいなんてもしかしてかなり僕が好きなんじゃ!?
「ま、また時間が余ったら遊んだらいいじゃん!だから協力して!ね!」
「解った、いいよ」
彼女はそう言ってにっこりと微笑んだ。
ーーーーーーーーーーーーー ナラク視点
「この水生生物はシーフェアリーと言って、フェアリーと言いつつ
魔力を持たないただの貝なんだよ」
「へー、マティーニ様は物知りです」
あーやだやだ、どうしてこんなことに…
食堂を出てすぐ
「やあ!奇遇だね!」とか言いつつ明らかに出待ちしていたであろうマティーニ先輩と遭遇した俺とクレアは
水族館で彼のうんちく話を1時間は聞いていた。
「食事するさまはまるで悪魔の様だと揶揄されるんだが…
全く食事する気配がないな」
「これ、ハリボテだぞ、電動の」
俺が水を差すと、マティーニ先輩は不思議そうに水生生物をじっと見る。
「羽のとこにつなぎ目があるだろ?よく出来てるけど偽物なの」
俺の言葉に、2人はショックを受ける。
「つまりこれは…ロボットという事ですか!?」
「機械の水生生物等初めて見たぞ!ではあれもか!?」
何か逆にはしゃぎはじめたぞ
民間の水族館ではよくある事なのに…
まさか本物しかいない水族館にしかいった事が無いのか?
流石王族だな
「見て下さいこのクラゲ!糸に釣られてます!」
「ふむ、よくできている…一見本物にしか見えぬ
なあ、あのジンベエザメも偽物なのか?」
「そうだけど」
「ならあのメカを買い取りたい!餌も与えなくてよいなんて画期的だ!
それにあれだろ、メカって目からビームとか出るんだろ
防犯にもなる」
「全部が全部ビーム打てるわけではねえよ?」
「じゃあロケットランチャーはどうですか?」
「出ないって」
ーーー
ひとしきり水族館ではしゃいだ王族は、
次に昨日皆で行ったかき氷のセルフサービスエリアへ足を運んだ。
「この氷菓…昨日も食べたがクレアちゃんはこれが気に入ったのか?」
「はい!次はレモン味を食べたいと思ってます!
どんな味なんでしょう?
もしかしたらとっても酸っぱいのかもしれません!」
「かき氷のシロップは匂いが違うだけで味は全部同じだぞ」
「…?」
「ほら、裏の成分表見なよ
果汁の表記が全部レモン3%だろ?
何食っても一緒…」
「何てこと!匂いが違うだけ!?こんなに色も違うのに果汁が入っていないなんて逆にどうやって作っているのでしょうか!」
「…宝石を砕いてるとか?」
「そんなん食べれる訳ねえだろ」
「本当に同じ味なのか試してみましょう!マティーニ様
目瞑って鼻つまんでください!私が食べさせます!」
「え、あ、うん」
それでいいのかよマティーニ先輩…
「おい、二人でいれば楽しいだろ?俺はちょっと用事あるからこのへんで!
じゃあな!オージ様にオージョ様」
「待て」
マティーニ先輩の声を聞いた途端俺の体はぴたりと止まる。
くそ!こいつの能力か!厄介な…!
「さっきから見ていれば貴様 クレアちゃんばかりかこの私と一緒にいるにもかかわらず『嫌々付き合ってまーす』感を出しおって
用事があるのも嘘だろう?どうせ能力で解る、正直に言え」
「あーはいはい!用事は嘘だよ!態度が悪かったようで申し訳ないね」
「何故王族である私とクレアちゃんを避けるのだ」
「…王族だからだよ
目立つから嫌だとはもう言わねえけどさ
俺達お育ちが違い過ぎて面白いって思えるポイントとかズレてるって思わねえ?
王族は王族と遊んだほうが楽しいだろ」
何の気ない言葉、正直な感想だ。
相手も恐らくそう思っていたに違いあるまい
俺には大した知識もないしかき氷ごときでははしゃげないんだ。
似た様な環境で育った二人でつるんだ方が楽しいだろう
言い切ってから動けるようになっていることに気付き
二人の顔を伺うと、
まるで雨の中捨てられた子犬のような悲しい顔で俺を見ていた。
クレアまではまだしも…マティーニ先輩まで!?
「私は意外とモスコミュールといて楽しいと思っていた
何故だ…メカジンベエザメからビームが出ない事に落胆したのか?」
「かき氷への理解が浅いばっかりにですか…?」
「そういうとこだよ!
大体マティーニ先輩はクレアと二人きりの方が良いんじゃねえの!?
俺いらないよね」
「何を言う 二人きりにされたら死んでしまうではないか」
「知らねえし」
「とにかく命令だ!用事が嘘なら帰る事は許さぬ
次私はカラオケに行きたいのだ、案内しろ」
「はいはいわかったわかった!
あんたら二人でカラオケ行かれると機械壊しそうだし付き合ってやるよ」
「…」
クレアはおどおどとした様子で俯く。
「どうした、クレア」
俺が声をかけると
「い、いえ…なんでも」
そう言って歪に笑った。




