22話「透明なアシュリー」
遠くなった意識の中で、誰かの声がする。
しべ…
きしべ!
はっとして目を開けると、
僕はアシュリーさんとキスをしていた…
「おわあ!?何で!?」
「あ、良かった目が覚めて」
マリー先輩は腕を組みながらそれを眺めていたようだった。
「マリー先輩!」
「マリー寮長殿は水を吐き出させただけで目を覚ましましたが
あなたは中々目が覚めなかったので人工呼吸を施しました」
「人工呼吸!?」
「何か勘違いをされているようですが この行為は人助けによるもので
決して思春期特有のインモラルではありません」
「そうよ、ちゃんとお礼言わなきゃ岸辺」
「あ、ありがとう…」
ファーストキスだったんだけど…いや
人工呼吸はキスじゃないから問題ないな!
「私は毎夜の巡回でここに来たのですが…お二人は浜で仲良く寝っ転がって
いったい何をしていたんですかですか?破廉恥な」
「は!?ちがうわよ!私たちは人魚を見に来たの!」
「人魚?それを見たくてわざわざ危険なビーチに入り込んだんですか?
あれだけここには入らない様にと念を押しましたのに…」
アシュリーさんはそう言って僕を睨む。
「ごめん」
「しかし私がビーチに行くといつも歌は聞こえない
あなた達が入った途端現れるなんて 私は避けられているようですね」
彼女はそう言って肩を落とす。
「…犯人の顔は?見ましたか?」
「私は何も見てないけど」
「僕は見たよ!…犯人かは解らないけどあれは絶対に人魚だ!
…綺麗だったな…」
2人は不思議そうに顔を見合わせると、
「マリストをかける必要があるかもしれません、一度医療棟に向かいましょうか」
アシュリーさんはそう言って僕を支えて立ち上がると、夏組寮の中へ歩き出した。
「えーっとあんた…」
「アシュリーです」
「そう、アシュ子 何であんたはこんなとこの巡回を日課にしてる訳?」
マリー先輩が訪ねる。
「レイ様の危険になり得る人魚を排除するのが目的です
しかしいつビーチに行っても人魚どころか人を見たのすらこれが初めてでした」
「あんた、固有は?」
「…は?」
「固有魔法よ!どんなの持ってるの?」
「何ですか急に」
「決まってるじゃない、人魚がこの寮の生徒なのか、他寮の生徒なのか、全く関係のない使い魔なのか判断するためには
あんたが何で避けられてるのかって情報は大いに役立つわ」
「つまり…どういうことでしょう」
「犯人はあんたの固有や強さを知っていて手をかけていない可能性があるってこと!もしそうなら犯人は」
「夏組寮の生徒って事になる…?」
「そういう事!どうなの?」
「私の固有は…透明化する能力です」
「透明化…?」
「その名の通り透明になれる能力ですよ」
「なにそれ!いい固有じゃない!」
「え、へへ…そうですか?
寮長クラスに褒められると照れますね」
「いつもは透明になって巡回してるならそもそも気付かれてない可能性とかない?」
「あ…」
「いや、普通気付くでしょ!あーあ、何の手掛かりにもならなかったわね」
「そうでもないよ!人魚はビーチにいる人間を察知してから動いてるってことだから
何らかの方法でビーチに人がいないか常に確認してるんだっと思う」
「歌が先なんじゃなくて、侵入者が先で起こってる事件って事ね」
「考察はありがたいのですが…あなた方には本来関係のない事です
あまり深く首を突っ込んでは…」
「いや、手を貸してもらったらどうだい?」
前方の暗闇から声がする。
彼女が一瞬身構えると、煙と共に人影が浮かんできた。
「ヴィルヘルム先生」
アシュリーさんはそう言って安堵したように息を吐く。
「南棟は僕も警戒していてね、生徒が被害に遭った以上
何の捜査もしていないと解ったら…
他の寮の教師とかがうるさいからさ」
「理由がクズなんですが」
「でも僕も人魚らしき生徒を見かけたことは一度もない
海の中を見張ってる訳にもいかないしねえ
せっかくの機会だしそこのアルカナと寮長に手を貸して貰ったら?
腕が立つのは確実だろうし」
「いいの!?調査していいの!?」
僕が意気揚々と尋ねると
「いいよ、お友達も誘って自由に調べてくれ」
ヴィルヘルム先生は淡白に返した。
「で、でも先生…いいんですか?
こんな危険な事に他寮の生徒を巻き込んで…」
「だってその子達調べたくて仕方ないって顔してるしよくない?」
「調べたい…!」
「人魚見たい…!」
「はあ…」
「君がちゃんと見ていれば多分大丈夫だよ
何か問題が?」
「解りました、ですが寮長と副寮長にも許可を取りますからね」
「僕は君達で勝手にやった方が良いと思うけど…そうしたいのならご自由に」
ヴィルヘルム先生はそれだけ言うと闇に消えていった。
「…はあ、やる事が多いです」
「アシュリー、僕を医療棟に運ぶのはやらなくていいよ
もう動けるから!ありがとう」
「しかし…
?何ですか?私の髪をじろじろ見て」
「いや、綺麗な色だなと思って
ガーネットって宝石みたいだ
それって地毛?珍しい色だね」
「…!」
彼女は何を思ったか速足でその場を立ち去ってしまう
「えー!僕なんか変な事言った!?」
「気のない男にあんな事言われたら気持ち悪いもの、仕方ないわ
さ、私たちも戻りましょ」
彼女に連れられ、僕は自室に戻るのだった。




