2話「試練の鏡」
「寮を決める為には…鏡の中に入ってもらう必要がある。」
「鏡?」
「試練の鏡。
3人で入るとそれぞれの記憶から試練が出てくる。
その試練にどう立ち向かうかで寮決めがされるんだ」
「時間かかりそうですね」
「まあ…少なくとも君たちが眠る時間までには終わると思うぞ」
そう言ってリカルドは大きな鏡のある部屋へ3人を連れていくと
「さあ、この鏡に入りたまえ」
と促した。
「待って先生…私が2人と行くのは危険だし
なんでこの部屋私たち以外誰もいないの?」
エリが眉をしかめて言う。
「君にはこれをあげよう、魔力キャンセラー…言うなれば君から漏れる魔力を内に閉じ込めるための物だ」
「凄い!そんなのあるんだ!」
「そしてここに人がいないのは…まあ、後で話すからとにかく入りなさい」
「いや怖いんだけど!」
「しかし…もしあとがつかえていたら大変ですし 入りましょう、2人とも」
クレアがそう言って2人の手を引く
「おい、信じていいの?あの教師…
絶対に怪し」
「リカルド先生は信用できる方です」
遊助の言葉を遮るようにぴしゃりと言い切るクレア。
「ご、ごめんなさい…その、本当に信用できる方ですわ、だから…ね?」
クレアに促された遊助とエリは、
クレアを追うような形で鏡の中に入って行った。
「…なんだこれ、学校…だ。
ウィザーアカデミーよりも新しいみたいだけど」
鏡の先には、比較的新しく綺麗な校舎が拡がっていた。
「オリーブ魔法学校だよ、ここ」
エリが嫌そうに呟く。
(どうやらここはエリの記憶が作り出した空間のようだな)
周りを見渡しながら遊助はそう考察した。
「誰もいなくて不気味ですね
試練らしき物も見当たらないですし 」
「待って!あれ見える?」
遊助がそう言って廊下の先を指差す。
廊下の奥から太ったうさぎが近づいてくるのが見えた。
「な、何あれ!?逃げた方がいいやつ!?」
「案内人かもしれません、対話してみましょう」
そう言ってクレアはうさぎに走り寄った。
「あっ!クレア!」
「やあ、綺麗なお嬢さん!こんな所で何をしているんだい?」
「試練を探しているんです、心当たりはないですか?」
クレアが尋ねると、うさぎは豚の鳴き声のような笑い声で笑う。
「知らないね、それよりもどうだい?僕とお茶でも」
「いえ、あの…急いでるんです」
「そんな事言わずに!」
「遊助…あのね、多分あのウサギ私の試練だ…苦手な先生にそっくり」
「人としてすら認識されないとは相当お嫌いな様で」
「あ、あの、本当に…困ります!
早く試練を終わらせないと!」
(そろそろ止めるか)
遊助が間に入ろうとした、その時
「運命の鎖!」
クレアがそう叫ぶ。
声の方を見ると、うさぎが光る鎖でグルグル巻きにされていた。
「貴方とは…ご縁がございませんでした
いざ、この縁…断ち切らせていただきます!」
彼女はそう言って3本の鎖を召喚した剣で切り付ける。
すると…
「あれ?さっきの子達がいない…
おーい、どこ行ったんだーい」
うさぎはそう言って何処かへ消えていった
「凄い!解決しちゃった…!どうやって追い返したの!?」
「私の固有魔法です。縁を切ることが出来て…縁を切られた物は切った物を認識できない
私もやろうと思えば相手の存在を遮断できる
そういう能力なんです」
「すご、ブロック機能みたいだね」
「はい、便利な能力ですが…鎖を出すのも切るのも相手に接近しなければ出来ませんので
…切りたい縁に限って切れない事も」
「ふーん…」
(なるほど、この能力さえあれば王女が危険な目に遭うことはそうそう無いな、
だから王室はこんな大胆な婿探しをさせたのか…)
「あ、ねえねえ!ここに変な扉があるよ!」
うさぎの走って来た方向を調べていたエリがそう呼びかける。
呼ばれるがまま足を運ぶと、そこには奇怪な模様の扉があった。
「この扉の先に…試練があるのでしょうか?」
「多分ね、行ってみよう」
3人は頷いて扉を開ける、
すると
(…街…?)
そこには美しい城下町が広がっていた。
(ん?この景色…記憶に新しいぞ)
「ここ、リトリスの首都だよ!
この学校からもそんなに遠くなかったと思う」
「…てことは、王女サマの記憶か」
「…」
クレアは不安そうに周りを見渡す。
怪しいものは無いが、相変わらず人気が無く不気味な雰囲気を醸し出す街に3人は少し萎縮する。
「ねえ、あれ何だろう?」
エリ声に振り向くと、ファンファーレと共にカボチャの馬車が城の方向から走って来た。
「あっ」
明らかに何か心当たりがありそうにクレアは声を上げる。
「…私の…試練は」
カボチャの馬車から現れたのは、
まるで人形のような美しい少年だった




