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祝日組寮のアルカナ  作者: よつば ねねね
1章「マティーニ」
13/67

13話「良かった」

さま...


「マティーニ様!」


はっ


声に気付いて、目が覚める。

目の前にいたのは...


「クレアちゃん...何で...」


誰でも無い、クレアちゃんその人だった。


「心配で見に来たのです

その...貴方が人に負けている所など

あまり見た事がありませんでしたから」


夢だろうか、うん、そうだ

彼女が僕の事を心配する筈ない


...あんな、酷い言葉をかけておいて

今更...


思わず、自分の耳を触る

良かった、シーザーが隠しておいてくれた様だ


...良かった...


「マティーニ、遊助の計らいでね

決闘は無効試合!『告白』とやらもしなくていいそうだよ?

良かったじゃないか」


...良かった...?


「ーっ!クレアちゃん!聞いて!」


僕は何か『使命感』のような物に駆り立てられ、


「僕は!本当は...!狐耳の半獣人なんだ!」


言った。

もう、終わったような恋だから


だから...


「知ってますよそんな事!ずっと昔から」


「...え?」


「マティーニ様は隠されてるつもりだった様ですがその...」


「城中どころか皆知ってたよ」


「ちょっとシーザー兄様!もっとオブラートに!」


...え...?

皆...?


「まあその、噂というのは回るのが早いので

きっとミラ王女が隠そうとしても無駄だったのでしょうね...?」


「そんな...!僕は今まで...!」


「マティーニ様、もしかして隠し事ってそれですか?」


「だ、だって!もし君と結婚したら

狐耳の子が産まれるかもしれないとお母様が

...ずっと言えなくて...君に酷い事を」


「...マティーニ様、私は...あなたに釣り合わない女ですか? ...今も」


「そんなわけない...!

...君は最高の女性だ...

今も、昔も...」


ああ、やっと言えた

ずっと、ずっと言えなかった言葉...


「では、もう一度やり直しましょう

...友達から」


「クレアちゃん...」


ーーーー


「ね?マティーニをいじめるのは楽しかったでしょ?」


シーザーがヘラヘラと言う。


「まあね、不器用すぎて一周まわって面白い」


「...初めから、自分を偽ったりしなければ上手くいっていたのに」


ーーー


「シーザーにいさま!あの可愛いお狐の耳を持った子は誰ですか!?」


マティーニ王子か

ここに誰も入って来やしないと思って完全に半獣人状態じゃないか

迂闊なもんだね

そりゃ秘密も漏れる


「あれはマティーニ王子だよ

アルゴリア家の長男だったかな」


「わあ!もふもふなのに王子様なのですか!?

私!あの方と結婚したいです!」


「おやおや」


まあ、子供の言う事だとタカを括ってはいたが

クレアの初恋は間違いなく君の物だった


なのにいつまでもどっちつかずでいられては

思わず谷に突き落としたくなるもんだろう?


まあ、本当は僕がその役を担いたかったのだけれど…

僕の立場上、君たちの仲を取り持つような真似はできないからね。


ーーーーーー


校庭に戻ると、エリがそわそわしながら駆け寄ってきた


「ねえ、無効試合になったって本当!?まさか私のせい...?」


「いーや、エリは関係ないよ

 …関係なくはないか…」


「やっぱり!?ごめんね!折角勝てたの…」


彼女が言い切る前に僕はエリを抱きしめる。

エリは「え?」と言葉にならない悲鳴を漏らしながら固まっている


「君がいなかったらこの勝負には勝てなかった

 …ありがとう、エリ」


「え、えと…」


僕はエリから離れると


「君は『能力だけ』なんかじゃない!

 可愛くて知識もあって!優しい僕の友達だ」


「…!」


エリは笑顔なんだか、泣き出しそうなんだか、何とも言えない表情で俯きながら


「ありがとう」


そう呟いた。


ーーー


「おかえり」


僕達が寮に帰ると、

そこにはリカルド先生が立っていた


「あ、リカルド先生久しぶりじゃないですか

始業式から放任なんてしたら僕とかが好き勝手暴れちゃいますよー?今までどこに行ってたわけ?」


「海外に行っていた...新講師を迎えるためにな

でも君達の事はさして心配していない

...困ったら王女殿下がなんとかしてくれるからな」


「そ、そんな...リカルド先生ったら」


「クレア、照れちゃ駄目!怒らなきゃ」


「それで?その様子だと僕たちを待っていたんですよね

何かあったんですか?」


「察しがいいね、ほらこれ」


リカルド先生は僕達に1枚の紙切れを渡す。


「何これ?しんぼくかい?」


エリが読み上げる。


「夏組寮が祝日寮と交流したいと声を掛けてきてね

まあ、王女目当てだとは思うが...

行くか決めるのは生徒達なので、と回答を預かっている状況だ。

どうかな?行きたいかい?」


「...私はちょっとその...微妙、ですね」


「僕も別にいいかな、どうせ日本に帰るから誰とも仲良くする気ないし」


「ルハート君は?」


「...な、夏組寮の噂聞いた事あるんだけどね

プール入れたり...浴衣着たり出来るんだって

行ってみたい...なあ...」


「...」


「...」


「あっでも!2人が行かないって言うなら全然!浴衣なんかどこでも着れるし!プールだって授業で入ったらいいもん!

...でも、あの、か、かき氷も食べれるって」


駄目だ、可愛いすぎてそんなん学校で食べなくてもいいだろって言えない...!

でも俺嫌われてるし行きたくないなあ…!


「…これは単なる噂だが

 夏組寮には天使がいるんだとか」


リカルド先生が呟く。

…天使?


「それって!天使族って事!?」


僕が訪ねると、


「さあ?実際に見て確かめるのがいいんじゃないか?」

と彼は答える。


「エリ!解った!僕も行くよ!」


「ええ!?どうしたの急に…」


「皆さんが行くなら…私も行くしかなくなっちゃいます」


「じゃあ最後の1年祝日組メンバーに聞いて

大丈夫そうだったらみんなで行こうか」


...ん?


「1年祝日組はここに全員いますよ」


「はい、欠けることなくいらっしゃいます」


「いないじゃん、あと1人」


あと ひとり?


「ま、待って先生!もしかして1年祝日組って...4人...だったりする?」


「うん」


「えー!いやいや、すれ違った事も無ければ授業で見た事も無いんですけど!」


「私も見た事ない...」


「と言う事は彼、

一度も出席しなかったのか

始業式も欠席していたからね

 故郷が遠いせいもあって彼はここの最古参、

 寮が解放された去年の夏からこの寮の住人なんだが

 君たちも会ったことが無いなら都合がいい、ちょっと呼んできてくれないか

部屋はユウスケ君の2つ隣だ」


「え...2つ隣...人いたの...!?」


「気づかないことある?すれ違いそうな物だけど...」


「ま、まあご挨拶がてら伺ってみましょ!

私たちの仲間なのですから!」


ーーーー


「名前は...何これ?英語じゃないね」


「『ナラク・モスコミュール』様ですね

北の国の文字です」


「ナラクさんかあ!どんな人なんだろ」


エリはそう言ってコンコン、と2回ドアをノックする


「...いないのかな?」


しかし反応はなく、部屋から何の音もしない


「キーリブル」


ガチャ


「あっ!魔法で鍵開けた!?いけないんだ!」


「いけないのはあっちでしょ、一度もこっちに挨拶しないし

...多分居留守も使ってるから」


ガチャ


僕がドアを開け中を確認すると...

そこには床の上で惨めに倒れている少年の姿があった...

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