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いつまで、恨んでもしかたがない

(嘘だ。彼氏とは、別れたと言ってたじゃないか。惨殺? 彼女が4人も殺した! はあ? 誰が信じられるか)


1週間後に俺は緑と会っていた。無性に顔を見たかった。肌が恋しかった。そして何回も交わった。


「どうしたの? 旅行の時とはふいんきが全然違う。何かあったの?」


(言えるわけがない。俺だって5人の女性を襲い、首をしめた殺人犯だ。責められるわけがない)


「私のことが、邪魔になったんでしょ。」

「違う」

「じゃあ何よ。どうしたの? 怖い顔して何もいってくれないし」徐々に興奮して、声が大きくなる。


「少し黙っててくれないか」口を塞ごうとして、首筋に手がかかった。ふいにその手に力がこもる。緑は最初抵抗をしたが、目もとから涙がつたい藻掻くのを諦めて? 必死に堪えている。


(はっ。何をしているんだ俺は‥)自制心を取り戻して手を離す。


(ゴホッゴホッ)緑は、空気を思い切り吸って咳き込んだ。


少したってから、喉から声を押し出すようにして


「いいよ殺しても。今までにも何回か、首筋に手がまわっていたわ‥。性癖なんでしょ? このブレスレット。私たちは同じ穴のムジナってこと? あなたも囚人だったの?」


(その言葉に俺は深く頷く。同じ穴のムジナか‥‥)


「実は私あなたに、嘘をついてたの。付き合っていた彼を許せなくて。3股もされてたなんて。彼も女達も、全員許せなかった」俺に首を絞められたことよりも、昔のことを思い出したのだろう。興奮した言葉の後、全身が大きく震えていた。そして、涙がさらに零れている。


「もう、いい。無理して言わなくたって。俺だって、5人を殺した快楽犯なんだから‥」


「やっぱりそうなのね。5人も‥‥。最初に、あなたと会えば良かった。そうすれば、私は加害者にはならなかったかも」


そして、それからはお互いに抱きしめあっていた。時間の感覚がわからないくらいに。


「過去は消せないけど、俺らだってやり直してもいいだろう? これから先は俺と一緒に生きてくれないか?」俺の絞り出した声は、掠れていた。

緑は、ただただ抱きしめられた腕の中で頷いていた。


その時から、1カ月は経っただろうか。

再びジャイルとしての活動が始まり、緑とはなかなか会えない日が続いた。


それでも次に会う日を励みにして、仕事を頑張っていた。

ヤミは、顔は同じだが明らかに別人に入れ替わっていた。

きっと羽目を外して罰を受け、闇に葬られたのだろう。


瑠美とマネージャーは俺の緑への思いが変わらないと思ったのか、今では緑とのことを反対はしてはいないみたいだ。

付き合っているといってたっけ。冷静なカップル同志意外と合ってるみたいだ。


「今度、緑さんのこと紹介してよ。wデートしようよと、女の娘みたいな端正な顔立ちで瑠美はいう」緑に、瑠美やマネージャーとで撮った写メを何枚か送った。

◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆


規模は、小さいがチャリティーコンサートということで、メンバーは気合いがはいっている。

「みんな、寒い中来てくれてありがとう。」3人の軽い紹介をかねて、トークが進んでいく。キャー。

(もしかして、この中に緑がいるかも。なーんてな。誰かが、俺のことを考えてくれてるなんて、思ってもみなかった)仁は時おり緑のことを思い出しては、幸せに浸っていた。


コンサートも終盤になってきた。

一人ずつ、抜けて違う衣装に変えてバトンタッチしていく。最初は、ヤミ。その間、二人で間をつなぐ。次は、瑠美。二人、抜けた。

二人が、舞台にきたら俺が抜ける。


二人が入ってきた。


『!!』


その時。キャーというファンの声や顔に俺は、いつもと違う恐怖と畏怖をみた。

視線を二人に移すと、血だらけになって這いつくばっている瑠美と、なぜか腹や顔に無数の傷を負ったマネージャーが舞台に上がってきてた。


◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆

警察所

俺は、事情聴取を受けていた。


(訳がわかんねー。何が、おきた? 涙が‥。あの血まみれの二人の姿が、頭から離れない。嗚咽。ううっ)


「辛いところ、すまないが。緑って女わかるか? 彼女が、楽屋に入り込み2人を包丁で刺した。当然‥死刑囚のリストに入っていたから、即座に指輪で爆破されてもおかしくはないが場所が場所だけに一般人が犠牲になるってことはさけたいのでとりあえず、罰は保留のようだ。今、彼女は事情聴取を受けている。しばらくして処分が決まるだろう」


「彼女は前の事件もあって、男に対して疑心暗鬼だ。お前から写メがきたのを。二人の女と浮気していると思い込み、自分は捨てられたんだと思い犯行に及んだそうだ」


思考回路がショートしている。俺は俺たちは、幸せになってはいけないのか。

やり直せないのか!


俺のせいで2人とも、刺されたのか。馬鹿な。瑠美とマネージャーで女2人? 


俺は、こんな形で罪をつぐなうんだ。大事な人達を傷つけられて。

しかも、愛した人に‥‥。


事件後、俺は緑と爆破処分されるのを覚悟していた。

しかし奇跡的に生きていた重体の二人が、俺たちの無実と勘違いを訴えていた。

凡例のないことらしいが、俺たちは無実となった。


二人が、ジャイルに戻るまでジャイルは活動休止だった。

緑は特に何人もの優秀な心療内科の先生方をつけてもらい、やっと外に出られるようになった。


◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆


今まで緑とマネージャーはお互いに、メールのやりとりをしていた,

ジャイルのメンバーのことや、今回の悲惨な事件。

誤解が生んだ犯罪。勘違い。

そして、退院祝いってこともあって二人で、喫茶店でお茶しようってことになったらしい。


喫茶「水藻」

いつも、客でにぎわっているところだが1回入ってみたかったので、ここを選ぶ。緑が、先に来ていた。

写メでみるより、年齢よりとても若く見える。色黒だと、聞いていたが若いせいか、化粧のりがよく白くみえる。ほんわりした、ムードだ。


「あっ、はじめまして。私、ほんとに今回の件なんて謝ったらよいか。本当に、すいませんでした」椅子から、立ち上がり身体を深く曲げてあやまる。


「いいのよ。って、軽々しくは言えないけど。今までも随分誤ってもらったし、反省しているのも分かったから。あの時はあなたに、刺される意味がわからなかった。留美なんか、もっとわからなかったと言ってたけど。あの顔は女と見られてもしかたがないわね。」


「ごめんなさい。私、仁のことが好きになっていたの。また、捨てられると思ったら周りが、見えなくて…」


いちいち女ができて殺人してたらこの世は、殺人鬼だらけよ。わかってるのかしら。イラつくわ。わたしの顔だって何針ぬったか。でも、親からもらったこの顔でいたかったから。

トイレにと言って緑は席を立った。

そのすきに鞄の中に、手をつっこんで時間をかけて選んだ出刃包丁を確認する。


その時。やあ、おそくなったねと人懐っこい笑顔で留美が現れた。

「えっ、呼んでないわよ。」


「心が通じてるからね。愛する人との。緑さんは、トイレ?」

こいつは、子供っぽい顔してるけどハッカーだけあって、頭がいいので侮れない。


「だって、今日は僕とのデート断ってお洒落して出かけるんだもん。気になっちゃって」

トイレから、戻った緑は僕に気がついて、申し訳そうにしている。


「僕は、愛しの彼女を追ってきただけだから気にしないで。事件のことは、チャラにはできないけど。その分、仁を信じて大事にしてあげてね。さあ、ぼくらはこれで失礼するね。」

えっ、来たばかりでしょ。少しはゆっくりしていけばと言う言葉も丁重に断って、マネージャーを外に連れ出す。


「さあ、これからどうする?僕も誤っておくね。静香のパソコン見ちゃった。」

しまった。そうか、暗証番号なんてこいつには簡単に破れるんだ。

話したいこともあるからと、引っ張って連れて来られた安モーテルの1室。


「君の姉さんは昔、通り魔に殺されたんだね。犯人は、まだ刑務所にいるんだよね。なんで、俺たちのマネージャーになったの?犯罪者が、憎いはずだろ?」興奮してしまい、矢継ぎ早に言葉がでてくる。

彼女は、ずっと黙ったままだ。思いつめた糸が切れ、顔は蒼白。

「とにかく、その包丁使うことなくてよかった」

「な、なにが良かったよ。あんたに何がわかるの!! ある日突然姉が、いなくなった。やっと帰って来たと思ったら遺体安置所で、あんな人の形がわからないほどメチャクチャに刺されて。

何が更生よ!加害者が第2の人生を歩んでいるとき、被害者家族はずっと生き地獄よ。どうせなら、私も殺してほしかった」泣き崩れて、床に座りこむ。それをしばらく見守る。今までどれだけの涙を流し苦しんできたのだろう。その姿が切なくて抱きしめる。


「何、するのよ」全身で振りほどこうとしても、日頃からコンサートのために身体を鍛えてるからびくともしない。


「もっと、人生を楽しんでもいいんじゃない?今まで、充分苦しんだんだろう?確かに、僕は加害者側だけど。更生すればするほど、自分の罪に手首の爆弾に怯えて暮らしているんだ。いっそのこと、終身刑の方がよかった。

君は僕のことを利用していたのかも知れないけど、僕はそんな君に惹かれていった。僕らに立場上一線ひいていて、無表情無感動でいようとしていた。でも、そんな君のときおり見せる笑顔(口がゆがんだり)や、とまどいとか新しい発見があってそんなことの積み重ねに惹かれていったんだ」


「何、言ってるのよ。姉は彼氏を残して殺されたのよ。緑みたいな自分勝手な感情だけで、人の命を奪えるやつは許せない」


「だから同じことをするの?それじゃあ。その殺人犯と、何も変わらないじゃないか!」


「‥‥」

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