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実験段階

その翌日、マネージャーに相談した「そう、女を紹介してほしいのね」


表情一つ変えずに淡々とスマホを操作する。まだ若い女だというのに、隙が無い。


仁「俺らぐらいの年の男って、どういうことするの?」


マネージャー「パソコンで、調べれば?」


仁「おまえって、機械みたいにそっけないな」そう。マネージャーには割とため口で喋ってしまうのだ。


マネージャー「そう?必要ない感情は省きたいだけだけど?」


仁(まあ。俺達の関係って、割り切ったものだとは思うけど。しかし3年も経つのにこの不愛想さ。まあ、俺らの過去が過去だからなのか)


紹介された女は、緑といった。まあ、本名じゃないと思うけど。行動がうじうじして素人丸出しだった。


「あの、よろしくお願いします」彼女は色黒で体型も痩せており、目も細く

一言で表すなら地味な女だ。


なんだか予想してた、男慣れしているタイプとは180度違った。


「あんた、この仕事初めて?」


「はい、わかりますか?」


(わかるだろう。普通)



「あ、やってほしいことがあれば、何なりと」


「は? 喋りがかたいな、まあ、シャワー浴びよ?」


二人でシャワーを浴び、タオルで身体を拭きベットで抱き合う。久しぶりの女だ。交わりながら、手首に手が伸びる。首にふれると、女がびくっとする。


その身体の反応と驚きに気付き改めて、緑の首に巻き付いた手を引っ込める。


「ごめん。俺、今日はできそうもない。仕事が、大変で。休みをもらったんだけど今日は疲れが溜まっているみたいだ」何で俺は一生けん命言い訳してるんだ。


「いいの。気にしないで。ただ‥‥今日は会話をするっていうのは、ダメかしら?」


「会話?」


「私が、この仕事をしているわけ」


(別に、聞きたくもないが。じゃあさよならというのもつれないし、1か月も暇すぎてやるせないし、聞いてやるか)




「男に貢いだの。有り金ほぼ全部で、300万。私ね、両親以外に初めて可愛い。運命の人だっていわれて、のぼせてた。職業が、ホストだって後から言われた時になるほどなって」




「よくあるパターンだよな。それで、借金苦でこの仕事か」




「そう。こんな生活してても私だけは特別だって、愛されてるって思ってた。馬鹿だよね」




「そいつとは、別れた?」




「うん」と彼女は指先の指輪を見ながら答えた。


それから、1時間余りいろいろなことを喋った。なんだか、考えてみたらこんなにもメンバー以外とは話をしたことがないからただ嬉しかった。延長料金も、しっかりとられたが。






緑とは、あれから何回か会っていた。なんだか会うたびにとても、心が落ち着いた。話も、尽きない。相性もかなり良い。


本名は、桜という。緑に桜かあ。


おもしろいなと、笑いあった。小さくて人懐こい目がもっと小さくなる。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




ギリギリ間に合った。


新幹線の車内でハァハァと二人して息を漏らしながら、座席番号を確認する。


切符を手にして見つけ桜をエスコートし、先に席に座らせてから何も言わずに腰を下ろした。


いったん落ちついたと思うと、そそくさとビニール袋から弁当を取り出し出発前に買った飲み物と共に手をつけ始めた。


出発が朝早かったため二人は腹がペコペコだった。




桜は、エビが主体となる弁当。


おれは、から揚げ中心の弁当だ。




会話の一切がなく食べることに夢中だった。




この間会った時、山で温泉に入ったりしてゆっくり旅行したいね。と話したのがきっかけだった。

女ってこんなにうるさくて、楽しくて可愛かったっけ。今までにない感情だっだ。




早朝家を出たにもかかわらず、昼過ぎに宿につくと早速ベットインしてから外の温泉に入った。




緑がここの屋外温泉と宿はネットで見た時に風情があって、引き込まれたと言っていたからだ。


宿は、江戸時代からのものを復元したものらしい。タイムスリップしたみたいだ。中は新しくて畳の匂いがプンプンする。




掛け軸や花瓶や壁紙が現代的なのだが、この和風の部屋にすごくマッチする。よっぽどのセンスの持ち主だ。


野外温泉も、2タイプあり1つは、天然の湯、もう1つは、薬用10種のハープいり。どちらも少し熱めに設定してあり、身体が芯から温まる。ハーブも、香りから心身を癒してくれる。




「素肌すべすべになりそう。気持ちいいー。明日の朝まで入っていたい。仁はいつもこのブレスレットしてるんだね。うわぁ、見てみて星が降ってきそう。ここね、流れ星が多くて願い事が、叶うんだって。あー流れ星」(突然、目を閉じて手を合わせる)そんな、仕草がとてもかわいい。




「なんて、願ったの?」




「言ったら願い事かなえられなくなるから、教えない。」


出会って間もないのに、俺はこいつとずっといられますようにと祈っていた。


それからは、この土地の名所や土産物売り場や、文豪の家など観光地を周りながら二人の時間を密にしていった。時々写メをとっては、瑠美に送る。




旅行も最後の日、やっと瑠美からも返事がきた。


『僕らも楽しいよ』短いメールに女と留美の二人の写メ。


うん?この女見覚えがある。マネージャー?


馬鹿野郎、飼い犬に手を出すなと送ってやった。


(帰ってから話すけど、彼女の指輪があるほうの手を写してくれる)




「?」と思いながらも、言われた通りに送った。




彼女と過ごした1週間はあっという間だった。




「ただいまー」




部屋に入ると、マネージャーと瑠美はにこりともしないで「お帰り」と迎えた。




「旅行は、楽しかったみたいだね。早速だけど彼女のことで、話があるんだけど」




「なんだよ。おまえらこそ、いつから付き合ってる?」




「休みに入ってからだよ。それより、単刀直入にいうわ。緑っていう女。おれらと同じに元囚人だよ」




「ふざけるなよ。なんだよ帰ったそうそう。」




「マネージャーが、指輪に見覚えがあって女子刑務所につてがある友達に聞いてもらったんだ」




「冗談じゃないぜ。緑が死刑囚? 何言ってるんだか。意味がわからねー。おまえら、ふざけるのもいい加減にしろや」




留美は口を篭らす。


今までの明るい雰囲気が嘘のように、一気に暗くなった。




それは俺らの過去に纏わる。一般の人には絶対知られてはいけない最大の秘密。皆それぞれ自分では抑えられない性癖のせいで罪を犯していた。いわば犯罪者だ。


瑠美はハッカー。ヤミは、幼児愛好者。


おれは快楽犯だ。狭く汚らしい刑務所の独房の中で生活していた。


死刑宣告が、されるまでの期間‥‥。




そんなある日、僕らの人生を変えるある国家プロジェクトが決行された、


それは、死刑囚の中から若者にもう一度やり直すチャンスをあげるという実験段階のプロジェクトだった。少子化時代に、少しでも貢献できればということだった。そして、個々が持っている能力があればそれを最大限にバックアップしてくれるという条件だ。俺らは,各々が持つ歌唱力だった。その説明を淡々とされながら、迷うことなく厚めの書類に次々とサインをしていた。




最初の3年間は、性質改善プログラムを徹底的に習得させられる。自分の生い立ち環境を思いださせ、罪を告白、分析。そして最終的に被害者の性格、環境。


加害者の気持ち。被害者の気持ちになってとことん分析する。


そのプログラムを終了したものから、テストを行い合格したものが腕にゴールドのブレスレットをはめて社会復帰できる。


また罪を犯せばブレスレットは身体に食い込んでいき、小型爆弾になっていて身体を粉々にする。




今度は、マネージャーが話を続ける。


「緑は当時付き合ってた恋人と、その彼の3股かけてた恋人たちを全員、惨殺したの。顔や体の形状がわからないくらい。彼女が死刑をまぬがれたのはその恋人はホストで、女3人に多額の借金を背負わせて貢がせ、彼女も被害者の一人だったから。一方的に彼女が悪いわけではなかったということね。前職は、教師だったらしいけど、貢ぐために水商売に移ったのね。流石に、教師には復職にはなれなかったみたいだわ。実験段階のプロジェクトだった、指輪は、ブレスレットの女用爆弾ね」




(なんだよ。いきなり、思考がついていけない)


「これ、お土産だから。俺、疲れたし頭整理したいから、部屋に戻ってちょっと寝るわ」

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