情景
あの出来事から3ヶ月遡る
時は10月
コンサートが終わった。
「みんな、ご苦労様」
ジャイルのメンバーは、舞台裏で待っていたマネージャーから飲み物を受け取る。
彼女は普段から表情に乏しいが、今日は少し口元が緩んでいた。
(珍しいと僕らの中で話題になった)
そして楽屋でコンサートの反省点などを軽く話してから、帰りの移動準備に入る。
その方法は、ファンに紛れ裏から一人ずつ車に乗り込むという方法だ。
以前からその方法をとっていた。最近はファンもいろいろ画策しているようだが、意外とばれずに上手くいっていた。
車で移動すること30分、3人共同の家に着いた。
絆を深めるためにと社長がわざわざ、用意してくれたものだった。
この性格からも、他の社員からの信頼は厚かった。
ガチャ。玄関の扉を開けた。
ヤミ「はぁ~、汗臭っ。今日も皆お疲れ~」
瑠美「お疲れ。早くシャワー入りたいなあ〜」
ヤミ 「そだな」
瑠美「最年長だしヤミから入りなよ」
ヤミ「嫌みかよ。まぁ、先に入るが」
瑠美「んじゃ、仁いこっ!一緒に喋ろ☆」
しばらく時間が経ち
(はぁ、やっとお風呂に入れる。最年少の俺はここでは色々と形見が狭いんだなあ)仁は色の上下のジャージを持って脱衣所の籠に入れる。
蛇口を捻ると汗臭い身体を、シャワーのお湯が包み込んで行くのを感じていた。
ジャーという音の中
目を閉じライブのことを思い出していた。
『ゴク』と唾を飲んだ
あの緊張感と一体感、高揚感から抜けだせない。
病みつきになりそうだ。
しばらくして
シャワー室から出て食卓に向かうと、
「お疲れー、長かったな仁。丁寧にどこ洗ったんだよ」
と、ちゃかす留美の声が飛び込んできた。
皆、先に座ってくつろいでいた。
3人揃ったので、俺がワインを注いで行く。
ヤミ「こっからは敬語はなしな。今日もライブ終わったな。乾杯」
留美「今日も最高だったぜ!」
仁 「か、かんぱい、、です。」
ヤミ「敬語なしな」
仁 「す、すみません」
留美「そんなに、何回も言うと怖いですよ。ヤミさん」留美がいつも間に入ってくれて場が和む」
ヤミ「だからあ。まあ、もういい」
普段ヤミは一人で行動しようとするが、最年長だからかこういう時は仕切ってくれる。
瑠美「仁は、休みどうするの?」
仁「瑠美と行動しようかな?」
瑠美「やめてくれない。俺、男に興味ないし。マネージャーにいって女でも紹介してもらおうか?」
仁「お、女って。いや、そんな興味ないことはないけど」
年上だが留美の事は、気難しそうなヤミより気が合うと思っていた。