俺、生まれ変わったら【鈴】になってて驚愕…
……俺は、鈴。
直径1,5センチの、ピカピカと輝く金属製の鈴だ。
昔、俺は人間だった。
名前は忘れたが、落とし物の多い男だった。
何らかの事故で命を落としたとき、俺は願った。
「生まれ変わったら、鈴になりたい」
そう願ったのには、理由がある。
俺は何度も鈴の音色に助けられてきたので、次は誰かを助けたいなと思ったのだ。
顔も、名前も、姿も、何一つ覚えていないのに…、鈴の音が聞こえたおかげで何度も命拾いしたのを忘れられなかった。
鈴をつけていたおかげで鍵を落とした瞬間に気が付いた事と、スマホについている鈴がうるさいという理由で彼女と出会えた事だけが、いつまでも心に残っていた。
願いが叶ったのだと喜んだ瞬間は、確かにあった。
だが、しかし。
―――これがいいわ、キレイな音色だし
俺を購入したのは、猫を多頭飼いしているおばあさんだった。
俺は願った。
「一刻も早く、生まれ変わりたい」
そう願ってしまうのは、当然である。
俺の繊細な音色は、13匹の猫の鳴き声や別の鈴の音でかき消されてしまうのだ。
鈴の付いた首輪を嫌がる猫が頻繁に鋭い爪で俺をひっかくので、自慢のメッキがはがれて傷だらけだし…地獄でしかない。
恐ろしい願いをしてしまった事と、願いが叶ってしまった事が、いつまでも心をえぐり続けた。
……願いが叶ってしまって、もう…どれくらい、たっただろう?
―――少し、手伝いに来てくれないかい
老いたおばあさんは、猫の世話をすることが難しくなってきた。
エサを買いに行くのがきつくなり、時折トイレの掃除を忘れるようになり、自分のことにも気が回らなくなって…家の中がだんだんと荒れてきた。
俺は願った。
「自分一人で何とかしようとせずに、誰かを頼ってくれ」
そう願ったのには、理由があった。
おばあさんには、家を出た子供が四人いたのだ。
月に一度、週に一度、毎日…電話をしても、子供たちはなかなか家を訪ねてはくれなかった。
仕事が忙しいだの子供が熱を出しただのと理由をつけて、玄関先で軽く話をするだけで帰っていく息子や娘たちを見るたびに、心がえぐられ続けている。
……誰か手伝いに来てやれよ
―――おやまあ、みんな揃って…どうしたんだい?
ある日、子供達が全員やって来て…家中をあさって、おばあさんの衣類と常備薬、アルバムなどを衣装ケースに詰め込み始めた。
家中の猫たちが次々に捕獲され、ケージの中に詰め込まれて行った。
俺の願いも…むなしく。
おばあさんは、遠く離れた施設に一人さびしく入所することになった。
猫はすべてボランティアに引き渡されることになり、俺はニオイと汚れのこびり付いた首輪ごとゴミ袋の中に突っ込まれた。
ああ、次に・・・生まれ変わったならば。
おれは・・・
・・・
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なお、2024/2月の投稿作品はすべて生まれ変わりをテーマにしています。
他にもおかしなモノに生まれ変わってしまった人のお話を書いているので、気が向いたら見てね!!
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