描く未来は
「おれはウォルター、ここより西にある王都ラジュアノンに住んでいる。今日はおれが国王に即位する日でね、ここに来てみたら予言の通りだったというわけさ」
「というわけさって言われても全然わかんないんですけど」と言いながら私は湧き上がる感情を抑えられずにはいられなかった!
「うちのしきたりでね、国王に即位する日には予言に従い行動する決まりなんだ。おれの場合は日の出と共にこの滝に来ると、運命的な出会いがあるってことだったわけなんだ」
「う、運命……」私は顔を真っ赤にして繰り返した。
「君はやっぱりどこかのご令嬢か何か?その割にみすぼらしい格好をしているけれども」
「悪かったですね、みすぼらしくて」と現実に戻りながら息巻いた。
確かに私の格好は旅人そのもので、先日までの王族の婚約者としての格好ではないので華やかさは微塵もない。最近は髪も切ってなかったからモッサリのままだし。
「私は何者でもありません。ただ予言の絵を見まして、ここに来たんです」
私は自分が予言したことをなんとなく言いたくなかったので秘密にしておくことにした。
「なんだ、やっぱり運命じゃん」と言ってウォルターはニカッと笑った。彼の笑顔にまた私は惹かれた。彼は人を優しく包み込む雰囲気を持ち合わせていた。
「それで、君の名前は?」とウォルターは急に声のトーンを落とし、真面目な顔をして聞いてきたので「サラです」とだけ私も言い放った。なんだかさっきまでと、雰囲気が違う気がする。
「サラ、よろしければわたしと婚約していただけませんか」
──私と……婚約して……。
「「「「ええええ、こんやくうううぅぅぅ」」」」
私は思わず大声を出して叫んでいた。
そんな、私に彼はビックリして笑いつつも、また優しい雰囲気に戻っていた。
「ええ、ですから婚約者として我が国にお招きいたしますので、その後2人の関係を徐々に勧めていくというのはどうでしょうか?」
そこへマチルダさんが茂みの中から現れる。私の大声を聞きつけて飛んできたんだろう。
「サラ様、婚約おめでとうございます。これはもう運命の出会いでしてよ」とマチルダさんは柄にもなくニッコリと笑った。
「そちらの方は?」とウォルターが訪ねたので私は「ここまで案内してくれた恩人です」と答えた。
私はマチルダさんに事の顛末を話した。そして、マチルダさんとの別れの時が来た。
「サラ様、あたしとはここでお別れです」とマチルダさんが言うのを聞き、私は涙ぐんでいた。
「マチルダさん、色々ありがとうございました。あなたがいなかったら私はここにはいませんでした。マチルダさんは王宮に戻られるんですね……」
「ふふ、ヘンリーぼっちゃんは愚かな過ちをしました。それでもあたしは死ぬまであの方々に仕えます。それが侍女としての務めですから」
私の目からは涙が溢れていた。
「サラ様、どうかお幸せに。あなたはいつの日か立派な王太子妃になれますよ。国民の幸せを第一に思える立派な方に、ね」
そう言ってマチルダさんは去っていった。
彼女は最後まで侍女長としての誇りを持ち生きていた。
私は振り返ると、向こうで待っててくれたウォルターの元へと向かった。その歩みは自然と軽やかになる。
彼がそっと手を差し出すと、私は力強く握った。
──これからの未来を、私は彼と共に描いていくのだろう。
ご拝読ありがとうございます(*˘˘*)
大変恐縮ではございますが
よろしければ↓よりブクマや評価を頂けると
今後の活動の励みになります(´-ω-`)
そして既に評価、感想をして頂いた方々も本当にありがとうございます
本来ここで完結予定だったのですが
章に分けて続編を書いていこうと思います




