表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/12

断罪2

 私は断罪され地下牢に連れて行かれた。しかし、その後すぐにマチルダさんの手によって助け出されることとなる。わけがわからず困惑していた私に彼女が話してくれた真相はこうだ。



─────



 私への断罪劇が終わり、落ち着きを取り戻した頃。急遽、会場はヘンリーとアンナの婚約記念パーティになった。皆がグラスを持ち、ヘンリー様が乾杯の合図をしようとしたその瞬間──1人の侍女が私のアトリエから1枚の絵を持って大広間に駆け込んできた。


「「た、大変です皆さん!侍女長が!マチルダさんが絵に!」」


 そこにはマチルダさんが倒れている絵、そしてそばにはワインボトルとワイングラスが落ちていた。ジョージ様毒殺の時と同じ手口でマチルダさんが殺されることをその絵は物語っていた。


 マチルダさんはちょうど自分が買ってきたワインの毒見役を自ら買って出て、飲もうとしているところだった。


「これはこれは、なんて上手な絵なんでしょう」とマチルダさんは朗らかに叫んだが、顔は全く笑ってなどいなかった。


「マチルダ!飲んではいかん!この絵は予言の絵だ!死ぬぞ!」


「ですがぼっちゃん、外部から持ち込んだ飲食物は持ち込んだものが毒見役をするのが決まり、これは王宮の関係者なら当然皆が知っていること」


 そう言ってマチルダさんはワインを一気に飲み干したそうだ。


「ば、ばかもの!」


 マチルダさんはワインボトルとグラスを投げ出し、もんどり打って倒れた。その光景は予言の絵そのものだった。


「マチルダー!い、医者をー」とヘンリー様の声が会場に響く。


 とその時──「ゴボッ、ゴホッホッ!」とむせながらマチルダさんが起き上がった。


「うわあぁ、生き返った!」


 皆が仰天する中、マチルダさんはゆっくり、起き上がった。


「いやあ、しんどいわねぇ、耐性があるとは言えね。無理するもんじゃないね」そう言ってマチルダさんはヘンリー様のマネをして高笑いをした。


 会場にいる一同は言葉を失っていた。


「あたしゃ、毒に耐性があるもんでね、これぐらいの毒は効かないんだよ」


「そ、そうか。ぶ、無事でなによりだ」ヘンリー様は目をまん丸くしながら、隣に立っているアンナを見た。


「アンナ──あのワインは……」


「アンナ様、説明してくださいますか?このワインはあなたが買ってこいと私に頼んだもの」


「わ、私はたまたま頼んだだけですわ……ちょうどマチルダの顔を見たから……」


「毒見役のルールは妃教育の中で学ぶはずです。当然ご存知かと思いましたが?」と言ってマチルダはアンナを睨みつけた。


「そ、それは──」


「アンナ!貴様は、マチルダを手にかけようと……」


「ぼっちゃん、先程言いそびれましたが、あの日給仕室に入った私は、侍女の格好に扮したアンナ様を目撃しました」


「アンナ!貴様がジョージを!その手にかけたのか!貴様が全て仕組んでいたのか!」


「わ、私じゃない!私はやってない!!」


「この悪女め!ジョージをその手にかけ、姉のサラまでをも陥れようとしたのだな!」


「お姉さまを断罪したのはあなたでしょう!?私はあなたについていっただけよ?あなたが私を選んでくれたから!」


 アンナのあまりの見苦しさに、ヘンリーは圧倒され、周りの人間たちは騒然とする中、マチルダさんがアンナを拘束した。


「アンナ様、いえ大罪人アンナ!お見苦しいですわ!」


 アンナは兵士たちに連行される中──虚ろな目で首を縦に振りながらブツブツとつぶやいていた。


「私は幸せになりたかったの、私は王太子妃に……ブツブツ」


「ぼっちゃん、いえ、ヘンリー王子。あなたは大きな過ちを犯しましたね。それを反省し、今後の行いを正していかねばなりませんことよ。ジョージ様のことも、決して忘れてはいけません」


 ヘンリーは悲しそうにうなだれていた。




 そうして狼狽したアンナが地下牢に連れてこられたのを、私は隣の牢屋の中から見ていた。その後、私は解放されヘンリー様に平謝りされたが、この状況に上手く頭を整理できず私は呆然としていて、目はどこか遠くを見ていた。



─────



 ガタガタと荒っぽく揺れる馬車に乗って、国境付近の林道を進んでいた。相変わらずお尻が痛い。


 まだ日も出てない頃の早朝、馬車に乗っているのは私とマチルダさんだ。


「ふふ、そろそろ着く頃ですよ」とマチルダさんは私に微笑んだ。

 彼女が笑うところを見た者はいない。いつだったか侍女が私にそんなことを話してくれたことを思い出した。


 国境付近で馬車を降りた私たちは目的の場所を目指して林道を歩いていた。太陽も登っていない頃合いにこんな山の中に来たのには理由があった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ