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ヴェンデッタ  作者:
1/3

始まりの堤防

「煙草を止めたらどうだ。子供からも嫌われるだろう」


 横にいる男、パットンが海兵刈りの髪(ジャーヘッド)を撫でながら言う。

 海兵隊出身の男だ。程よく鍛えられて引き締まった腕がそこら辺で拾ったのだろう木の棒を差し出してくる。


「とりあえずこれ咥えとけ。普段は飴で誤魔化せばいい。そうすれば止められる」

「煙草と酒がねえとやってらんねえよ」


 パットンの手を押し返してクローカットの男、イザリーは煙草を吹かしながらそう毒づく。


「金の節約にもなる。子供や女房食わす金に余裕ができるぞ」

「煙草吸った分こいつをやればいい。バンバンバーン、だ」


 言ってイザリーはわざとらしく手で拳銃の形を作って揺らして見せる。パットンはそれを見て笑う。

 まあ拳銃の腕は認めるがね、とパットンは言って視線を前に戻した。

 今彼らがいるのは木箱の中だ。男二人が何とか入れる木箱だ。月明りが入り込む隙間から彼らは外の様子を窺っていた。

 外からは潮の音と匂い。そして船とコンテナが軋む金属音が聞こえる。その中で彼らは小声で話す。


「もっと違う隠れ場所あったんじゃないか。昨日雨が降ったな?この箱は酷く臭う」

「そう言うな。木が水を吸ってるからこうして隠れられてる。そうじゃなかったらこの木箱は水気が抜けて俺達の姿は外から丸見えだったさ」

「だから違う場所があったんじゃないかと言っているんだこの野郎め」


 次の煙草に火を点けながらイザリーがブツブツと文句を言うのを聞き流しパットンは外に目を凝らす。

 何もない港だ。あちこちに巨大なコンテナと木箱、多くの船とクレーン。どこにでもある港だ。

 しかし、では何故ここがここにいるかと言えばここでカニバルと名乗る大規模ギャング組織の違法売買が行われているというタレコミが情報局にあったからだ。だから彼ら情報局員が夜中に港に身を伏せているという訳だ。


「そろそろ情報にあった時刻だ」


 パットンが言うとイザリーは舌を打って身を乗り出して木箱の隙間から外を見る。


「煙草を消してくれイザリー。煙が出てしまう」


 イザリーがまた舌を打つ。渋々と彼は煙草を消した。


「残業代は付くんだろうな。朝からずっと働いてたのに」


 イザリーの文句を聞き流しパットンは目と耳を凝らす。


「来たぞ。きっとあれだ」


 車の音が複数聞こえた。少しするとパットンたちのすぐ近くに車が四台ほど止まった。

 中からスーツを着た男たちが出てくる。その数十五名。装備こそバラバラだが全て銃で武装している。護衛だ。


「多いな。あれがカニバルだろう」


 男たちは車から出るや直ぐに散開し周囲を警戒、四人が別れ二本のクレーンによじ登り高所から辺りを見渡し、残りは恐らくリーダーだろう、少し派手で白っぽいスーツを着た男の周りを守っていた。

 パットンとイザリーは装備を確認する。

 腰に自動拳銃が一丁と弾倉が予備に二本ずつ。潜伏する以上あまり装備を持ち込めなかったのは仕方ないが心許無い装備だ。イザリーはため息をつく。


「期待しているよイザリー。俺は拳銃の命中率はお前とは比べられない。ここには有名な殺し屋、ヴァジーモヴィチとかいうロシア人も来るって話だ。きっとあの中にいる。お前が奴を仕留めろ」


 パットンがイザリーの肩に手を置きながら言う。イザリーは少しだけ笑う。

 少しすると追加で車が来た。あれが取引相手だろう。

 パットンは小型のカメラを取り出し証拠にするため撮影する。

 彼らの任務は取引の証拠を収め、その後制圧する事だ。証拠さえ掴めればこの場で奴ら全員を殺したとしても組織の大本を逮捕することが出来る。雇い主は言った。「好きにしていい」と。

 イザリーは肩を竦めてほぐしながら言う。


「合図はいつでも。お前のタイミングで行こう」


 パットンはそれに頷いて笑う。


「あのクレーンの上見えるか。二人ずついる。全員が小銃(ライフル)だ、お前が先にあいつらを撃ち落としてくれ。俺はあのリーダーっぽい奴の周りから潰す」

「ああ分かったよ」


 イザリーが頷き自動拳銃を抜く。パットンも習って抜く。

 追加で来た車から屈強な、しかしどこかチンピラ然としたスカジャンを着た男が出てくる。あいつらは恐らくあまり大きな組織ではないのだろう。路地裏の薬売人と言った所か。

 スカジャンの男が連れの男からアタッシュケースを受け取りそれを白いスーツの男に渡す。白いスーツの男はアタッシュケースを開けて中身を確認、その中の一個を手に取った。札束だ。

 パットンは小型カメラのシャッターを連打する。全てを逃すまいと収める。

 白いスーツの男は頷いて札束を戻して、別の男から違うアタッシュケースを受け取りスカジャンの男に渡した。スカジャンの男も同じように中身を手に取って確認する。薬だ。

 パットンは最後に十枚ほどシャッターを叩きそれを腰のポーチにしまった。


「よし行くぞ」


 二人は静かに自動拳銃のスライドを引いた。

 白いスーツの男がスカジャンの男に最後煙草を手渡してパットンたちに背を向けた。周りの護衛もそれを追って視線がパットンたちから反れた。こちら側を見ているのはクレーンの上の四人と、白スーツの近くの一人だけ。


「ゴー」


 言ってパットンは木箱の蓋を極力静かに、しかし早く開け体を出した。イザリーも合わせて体を出して構える。

 イザリーはクレーンの上を。パットンはまずはこちらを見ている一人に銃口を向けた。

 銃声が二つ。

 パットンはまず目が合った一人を撃ち倒し、イザリーもクレーンの上の一人を落とした。

 そして連続で撃つ。

 イザリーは拳銃の射撃技術は情報局内部でも一番だ。一キロ先だとかでないとそう外さない。パットンはクレーンの上も見ず白スーツの周りから一人ずつ撃っていく。

 イザリーは二秒ほどでクレーンの上の四人を撃ち落とし、直ぐパットンの加勢に入る。

 白スーツは慌てたように頭を庇いながら車に入っていく。一人が急いで運転席に入ろうとするのを撃ち殺す。

 周りの男たちは銃を一斉にこちらに向けて射撃してくる。パットンたちは遮蔽物から一人ずつ撃ち殺していく。


「あいつ……」


 パットンは隙間から護衛の連中を見て顔をしかめる。

 他の連中が躊躇することなく、あるいは考えなしにパットンらに銃を向けているのと比べると一人だけその輪から外れて下がった。パットンがイザリーの肩を叩いて言う。


「今奥に行ったあいつを見失うな」

「なんでだ?」

「他の奴と動きが違う。もしかしたらあいつがヴァジーモヴィチかもな」

「……わかったよ」


 護衛達が残り六人だ。数が減ったからか向こうも焦り始めて銃撃が苛烈になって来た。

 顔を出す暇もない。


「パットン!その男を見失っちまった!どうする!」


「仕方ない!まずは目の前の奴らから片付けよう!リーダーっぽい奴はまだ車の中で動けないらしいからどの道奴は引けない。仲間を呼ばれる前に終わらせればいい!」

「わかった!」


 混戦になりつつもパットンとイザリーは敵を一人ずつ倒していく。

 スカジャンの男とその連れも銃弾に倒れた。これで事実上の取引阻止は完了だ。ここで引いても良いだろうがあのスーツの男を倒すか捕まえないとどの道取引はやり直されるだけだ。全て制圧しようとパットンは考えた。


「俺が前に出て視線をずらす!その隙に奴らを潰せ!」

「わかった行け!」


 頷いてパットンは遮蔽物から飛び出して走って次の遮蔽物に飛び込む。

 視線がそのパットンを追って反れた。イザリーは一人ずつ確実に打ち倒し無力化、六人すべてを倒した。


「パットンやったぞ!」

「ああ後は車の中の奴と逃げた奴だ。まずは車から行こう!」

「了解」


 パットンとイザリーは合流して白スーツの男が逃げ込んだ車へと移動する。

 撃たれないように窓の正面に立たずに車のドアを開ける。白スーツの男が慌てて転がり出しパットンに銃口を向けるが、それをイザリーが撃って止める。


「悪い、殺してしまった」

「いいさ、証拠はあるんだ。それより逃げたあいつを探そう」

「そうだな」


 二人は周囲を警戒する。

 そうしながら嫌な雰囲気を二人は感じていた。気配というか、視線、いやさっきのような感覚だ。それが二人の周囲を回るように駆け巡る。


「来るぞパットン」

「お前の方が当てられる、任せたぞ」

「ああ」


 イザリーが銃を構えて集中する。パットンも同じく構え周囲を見渡す。

 気配が動いた。


「来たぞ!」


 パットンが叫んだ瞬間二発の銃声。イザリーの首元と肩周辺すれすれを弾丸が通過した。


「くっ!」


 イザリーは強い熱感により一瞬怯み、反撃が遅れた。その隙に奴は隠れてしまった。また気配が動く。


「おい大丈夫か!」

「掠って火傷しただけだ。しかし気配を消すのが下手な奴だ。早いだけだ」

「なら次で当てられるか?」

「もちろんだ」

「……出た!」


 また姿を見せた奴が発砲してくる。それをイザリーは早撃ちで射止める。

 しかし急所を外したのか倒しきれずまた逃してしまった。


「どこに当たった!」

「手だ!奴は銃を落としたぞ!」

「なら追うぞ!」


 イザリーの弾丸は奴の腕を射止めたらしく拳銃が転がっていた。奴が隠れていたであろう陰に急いで突っ込む。しかしそこには誰もいなかった。逃げられた。


「パットン、血痕だ。」


 イザリーに言われてみると確かにポツンポツンと血の玉が落ちていた。この先に逃げたのだろう。

「慎重に進もう。どうせこれを追えば逃げられない」


 パットンはイザリーの前に出て進む。

 血痕の先は港の海側だ。まさか腕を怪我している状態で海に飛び込んで逃げようとはしないだろうが。

 少し進むと奴がいた。腕を庇いながら海の方に進んでいる。もしかしたらボートか何かを準備していたのかもしれない。


「パットン!」


 イザリーの怒号。

 追い付かれた奴が苦し紛れかこちらにナイフを投げてきた。イザリーは咄嗟に伏せたパットンの脇から発砲した。


「グあ!」


 男の悲鳴。

 イザリーが撃った弾丸は男の顔に当たった。周囲に血飛沫が舞う。

 男は耐えるように仰け反りながら後ろに後退り、しかし踏み外して港の堤防から海に落下していった。


「死んだか?」


 パットンは堤防に駆け寄り海を確認する。死体は浮いてこなかった。


「顔に当たった。出血も考えたら生きてない。大丈夫だ。引き揚げたら奴の脳みそを見ることになる。朝飯を食うのも躊躇してしまうよ」


 自動拳銃を腰に戻したイザリーが言う。パットンもそれに頷きながら自動拳銃を腰に戻した。

 イザリーが煙草に火を点ける。

 パトカーのサイレンが聞こえた。どうやら近くを巡回していた警官が銃声を聞いてきてしまったらしい。

 直ぐに来て二名の警官がパットンたちに拳銃を向ける。


「お前たち何者だ!今の銃声は何だ!」


 警官が銃を向けながら言う。

 パットンはイザリーを見て言う。


「煙草止めろって」


 イザリーは肩を竦めて笑った。パットンも笑う。

 もう一度警官が何者だと叫ぶ。

 二人は腰からバッジを取り出し警官に向ける。


「「CIAだ」」

ノリと勢いで書いた奴

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