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幼い彼女は神様に祈りました。  作者: みみみみみ
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幼い彼女が神に祈った話

※前回に続き頭空っぽでお読みください

あなたが世界で1番好きよ…


本当に可愛いわね…


愛しているわ…


あなたが生まれてきてくれて良かった…


「はあ…」


私はため息をついた。


何度も何度も読んだ読んだ本。その中には幾度となく愛を伝える言葉が出てきた。


私はその言葉が大好きだ。


自分の中で思ってるだけでは抑えきれない思いを伝えるだけで何だか嬉しい気分になるからだ。


私は自分の家族に


「みんなのこと大好きです」だったり「愛しています」だったり、沢山の言葉を伝えてきた。


しかし1度たりとも私は言われたことがない。


みんな


お母様は「そう…」と言うしお兄様たちは「あぁ…」と言う。お父様に至っては「……」と私のことを睨んでくるだけである。最初はめげなかったものの、最近は私だって気がついてきた。


これは愛されていないと。


だっておかしいじゃない?私はこんなにも大好きなのに返してくれる言葉はたったの二文字!!涙が出るわ!

最近は枕に向かって叫んでいる


「ああぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!」


ってね!これぐらいしないとやってらんないわよ全く!

もちろん1人でいる時だけだけど…


はぁとりあえず寝よう…



ーーーーーーーーーーー


そんなある日私は新しい本を読んだ。


そこには神様が願い事を叶えてくれるお話だった。


私はその本を読んで思い立った。


「そうよ!神様にお祈りすればいいのよ!!」


そうすればみんなに迷惑がかからないわ!


私の計画はこうだ。


神様に私の存在を消してもらう。

そうすればこの家に迷惑はかからない。

愛して貰えるように祈ることも考えたけど無理やり愛してもらっても嬉しくないわ!私!


存在が消えるとどうなるか分からないけれど少なくとも痛くはないだう。


「あぁ…でも私消えちゃうのね…」


何だか少し悲しい…だってまだ何もやってないのよ…

けど、生まれ変わるなら早い方がいいわよね??

誰にも迷惑をかけず私は愛されるために早めに生まれ変わる!!実際上手くいく保証はどこにもない。


「とりあえずやってみましょう!!今日の夜決行よ!」


私は椅子から勢いよく立ち上がった。そこに


「お嬢様…夕食の準備ができました。旦那様達がお待ちです。」


メイドが夕食の知らせを持ってきてくれた。


「はい。今行きますわ。」


私はそう答え食堂へ向かった。


ーーーーーーーーーーーー


食堂に着くともう私以外はみな席に着いていた。


「お待たせしてしまい申し訳ありません。」


私は少し急いで自分の席のところに行き、執事に椅子に座らせてもらった。食堂の椅子はまだ少し大きいのだ。


「みんな揃った所で頂くとしよう。いただきます。」


父がいつも通りの言葉を言ったところで皆それぞれ食べだした。


「いただきます」


私も食べようと思った時にふと思った。


あ、これ最後の晩餐よね…なんなら今日決行するのだからお父様やお母様…お兄様たちに会うのもこれで最後かもしれないわ…


そう思うと少し悲しくなって俯いてしまった。


しかし決めたことだ。やると決めたらやる女よ!私。


嬉しいことに今日のメインは私の大好きなチキンだった。


内心嬉しくてニコニコしてしまう。


最後の晩餐に相応しい料理ね!どれも美味しいけれどやっぱりこのチキンが1番好きだわ…


そう思いながら食べ進め、気がついたらデザートまで直ぐに平らげてしまった。


私が全部食べ終わる頃には皆食べ終わっており、お父様とお母様は紅茶を。お兄様たちはコーヒーを召し上がっている。


そこで私はホットミルクを持ってきてもらい一息つくことにした。


今日会うのは最後なのだから少しぐらいお話しようかしら…

いつもは会話が続かないけれど今までの感謝ぐらい伝えたいもの!


そう意気込んで私はまずはお兄様たちに話しかけた。


「アル兄様、セス兄様、コーヒーは美味しいですか?」


いつもあまり話しかけないからだろうか、2人は少し固まってから


「あぁ」


とハモって答えた。


「そうなのですね…私も早くお兄様達と一緒に飲めるようになってみたいです!」


話が続かない…いや私の質問が悪かったのね…もう少し考えてからお聞きすれば良かったわ…


気お取り直して…


「お母様…今日のメイン料理は覚えていらっしゃるか分からないのですが、私の大好きなチキン料理でした…私お母様のお好きなお料理聞いたことが無かったのですが、何かありますか?」


「…特にないわね」


あ、いつもより長い。…でも一言。いやぁぁ!最後の会話がこれだなんて!でも私だってそんな会話をする能力が高いわけじゃないのよ??無理だわ!私には!!


最後の難関はお父様ね…いつも無視されてしまうから…どうしましょう…


「お父様…私最近本で騎士団が出てくる物語を読みましたの!とてもかっこよかったですわ。その主人公は黒髪だったのですがあれは実際にいらっしゃる方なのでしょうか?」


これなら少し会話出来るだろう。そう思って私はお父様の応えを待った。すると


「…………」


あれ?


「…………」


「お父様?」


「いない」


「え?」


「そんな奴はいない」


「そ、そうなのですね」


あぁ、私。喜んでいいのかしら??話すことは出来たわよね??頑張ったわよ…そうよ!頑張ったわ!


そんなこんなで最後の会話に成功?した私は食堂から自室に戻ることにした。


「それでは私はお先に失礼致します。お父様、お母様、お兄様、おやすみなさい。」


大好きです。


少し涙が出そうになったのはきっと気のせいだろう。


ーーーーーーーーーーーーー


私はメイドにお風呂に入れてもらい。いつも通り寝る準備をし、ベッドに入った。そして家中が寝静まったと思われる深夜にベッドを抜け窓を静かに開けた。


少し冷たいが気持ちの良い風が部屋に入って来た。


空を見ると綺麗な満月。


今日の夕食のことを思い出す。

好きな料理…やっぱり覚えていなかった。


「私のことなんて誰も見ていなかったのね…」


「愛してくれないのね…誰も…」


覚悟を決めもう一度満月を見る。


「神様どうか…私の存在を…」


「消してください…」


こうして幼い彼女は神様に祈った。


そしてそれを気まぐれな神様が叶えた。





少し手を抜いた形で。

アルが長男でセスが次男です。


次回視点が変わってお話が進みます。

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