第1話 一目惚れ
目を覚ましたら、そこは僕の知らない部屋だった。
ここはどこなんだろう。
周りを見渡すと、どうやらコンクリートでできた民家っぽい。
僕は椅子に座っていた。
「…」
僕は記憶喪失なのだろうか、何も思い出せない。
さっきまで何をしていたのか。
家族はいるのか。
ここは日本?僕は日本人なのか?
横を向くと男の子が呆然としているのが見える。
僕がその子を覗き込むように、その子も僕を覗き込んでいる。
彼は黒髪でいかにも普通そうな見た目をしている。
身長は特に高くもなく、見るからに馬鹿そうだ。
それは鏡だった。
鏡に写ってる男の子が自分だって認識できる記憶はある。
なのに何故かそれ以外がわからない。
「思い出せない」より「わからない」と言った方がしっくりくる。
「…あのぉ」
突然女の子の声がした。
「うわあ!」
僕はビックリして椅子から転び落ちた。
「大丈夫ですか?」
女の子が慌てながら言う。
なぜすぐ隣に人がいるのに気付かなかったのだろうか。
「驚かせてごめんなさい。
私さっき起きたんですけど、ここがどこか分からなくて…」
「え、さっき起きた?
え、え、え?」
今更ながら混乱した。
知らない部屋で女の子と二人っきりで、自分がなぜここにいるかもわからない。
とりあえず今把握できることは、この女の子、めちゃめちゃ可愛い。
「えっと、あなたは?」
「私は白木ももと申します。」
その子の名前はももというらしい。
「ももちゃん?」
「ちゃん?」
彼女は笑いながら聞き返してきた。
なんかわからないけど、彼女の笑顔には安心感がある。
正直、見るからに歳下そうだけど初対面でいきなり「ちゃん」付けは不味い気がしてきた。
「あ、ちゃんじゃない。ももさんですね、あはは」
僕の名前は確か…
「僕は佐藤ゆうまです。」
「ゆうま君」
ももさんが微笑みながら言った。
ここがどこかはわからないが、こんな可愛い子と一緒ならそんなに悪くないのかもしれない。
状況を何一つ把握できていない恐怖は消え、僕の頭はももさんで一杯になった。




