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第56話 三学期に!



 ぐーすかぴーと寝ている者が四人。

 事情を知っているとはいえ、終業式のまっただ中。

 茉莉は担任教師として、ゲンコツを落とさなければいけなかった。(下級生である愛衣は後日実行された)


 とはいえ、そんなやり取りなど何分もかからない。

 何故ならば、このホームルームが終われば冬休みなのである。

 注意事項など、ハメを外すな宿題忘れるなというくらいで。


「いやー、二学期も無事に終わったねぇ」


「ホントでおじゃ、この開放感が堪らないでゴザル!」


「待て待て? お前らどの口で言ってるだよっ!?」


「どの口って、僕のセクシーな口だけど?」


「そうでゴザルよ天魔、終わりよければ全て良し! ――拙者達には地雷など、もう存在しないっ!!」


「…………そうだといいな?」


「うん? フィリア今何か言った?」


「いや何も? 気のせいではないか? うむ、二学期も無事に終わったな!」


「這寄さんも言える口じゃねぇよっ!? だろう皆っ!!」


 天魔の叫びにクラス全員が頷いて。


「ちょっと待って? 何で栄一郎も一緒に頷いてる訳?」


「英雄殿? 胸に手を当てて考えるでおじゃ? ――我輩の胸に手を当てても無駄でゴザルよ?」


「まあまあ、栄一郎こそよーく考えてみてよ。二学期、無事に過ごせたでしょ?」


「ううむ…………、校門の手荷物検査、廊下でミニ四レース……、脱衣ゴミシュート……そうでゴザルな、無事に……過ごせた事に感謝でゴザル」


「はい、ダウトだ栄一郎。お前の修羅場に巻き込まれた事は忘れねぇぞ」


「天魔の言うとおりだよ栄一郎、その点は天魔を見習うべきさ! ――みんな聞いてくれ! 天魔は愛衣ちゃんとクリスマスを過ごしたんだ!!」


「エテ公死すべし」「殺すべし」「塵は塵に、灰は灰に」「くっ、ついにエテ公がリア充の仲間入りをっ!」「世の中間違ってるっ!」


「今こそっ! 天魔を祝福(物理)しようじゃないかっ!!」


「お前ら騙されるんじゃねぇっ!? 英雄のウチでクリスマスパーティしただけだ! 祝福(物理)するなら、パーティで這寄さんのメイド(巨乳)を口説いてた栄一郎だろうっ!!」


「裏切ったな天魔ァ!? 聞くのじゃクラスの皆っ! 天魔の母親とウチの愛衣は一緒に料理をするぐらい仲が良いんだぞ! この意味が分かるでおじゃよっ!?」


「え、マジで栄一郎? オカンを愛衣ちゃんってそこまで仲が良いのっ?! 俺初耳なんだけどっ!?」


「――――あれ? 何で知らないのさ天魔。僕、愛衣ちゃんから聞いたよ? 毎朝手作りのご飯を食べて貰ってるって」


「最近味噌汁の味が変わったと思ったらその所為かよおおおおおっ!? 俺はマジで知らねぇええええ!?」


 がくりと膝をついた天魔に、クラス中の哀れむような視線が集まる。


「ドンマイ、エテ公!」「やっぱ愛衣ちゃんも地雷だったかぁ……」「まて、というと逆に考えて栄一郎も地雷では?」「兄妹揃って……」「ヤンデレ机くん×越前くん!?」「先生、流石に冬コミにはコピ本も間に合わないかと」


「くっ、見抜けなかった……この僕の目でもっ! 愛衣ちゃんが外堀から埋めるタイプだったなんてっ!? 全然っ! 見抜くことが出来なかったっ!!」


「嘘でゴザルな、這寄女史を見抜いた英雄殿が見逃す訳ないでおじゃ」


「――っ、そうだ英雄っ!? お前分かってて見逃したなっ!?」


「ゴメンね天魔、貴重な外国メーカーが作ったのり塩ポテチ貰ったんだ……」


「一週間分のポテチ奢るから何とかしてくれぇっ!?」


「ゴメンね、マジでゴメンね? 実は愛衣ちゃんフィリアとタッグ組んでて、僕に出来る事はフィリアをキスで気を逸らすだけなんだ……、無力な僕を許してほしい……」


「可愛い後輩の恋路を応援出来て、英雄が構ってくれて私は……とても嬉しい!」


「どうする? 脇部処す?」「処すか?」「這寄さん幸せそうだしなぁ」「――英雄っちは俺たちに男をみせた」「そして行動する事で恋を勝ち取る事を教えてくれた」「無罪」「執行猶予」「また今度」「三学期まで見逃してやらぁ!」


「へっへーん! 僕ってば大勝利!! そうだ! 後で希望者は僕に連絡してね! 三学期には風紀委員長を含めた合コンをセッティングするつもりだから!」


「英雄イズゴッド」「兄貴と呼ばせてもらおう」「今メール百件送ったわ」「土下座したら確定参加出来るか?」「いや、のり塩ポテチだろう」「まて、コンソメ味で這寄さんサイドから」「あ、オレは桐壷さんに土下座してくるわ」「その手があったかっ!」


 数名の男子が争うように教室から走り出し、女子の一部は英雄に参加の意志を伝えたり、イケメンを斡旋するようにメールしたり。


「――恋は競争なのだな。まあ、今の私には少し遠い話なのだが! ああ、何せ次のステージに行っているからな!!」


「うわ、這寄さん。これ見よがしにピンクのあの紙を……、おい、良いのかダンナ様?」


「天魔がダンナ様って言わないでくれる? まあいいや、フィリアが幸せそうなら良いんじゃないかな? 今日も登校途中で、通りすがりのお婆さんに自慢してたの見たじゃない」


「そうだったか? 眠かったから見逃したわ。…………あー、そうだ。俺まだアレ捨ててねぇや」


「愛衣に渡さないのでおじゃ? きっと喜ぶでゴザルよ?」


「兄であるお前にはスマンが、俺はまだ英雄みたいに人生決める程入れ込んでない。つか普通よ、高校生で結婚考えるの早くねぇか?」


「確かにそうだよね、僕もこんなに早く結婚考えるとか思いもしてなかった」


「そうか? 拙者はガキの頃から決意してたでゴザルが……」


「そういう所だよ栄一郎?」


「この兄にして妹が……、お前の所為かっ!!」


「…………その事で、一つ分かった事がある」


 シリアスな顔をした栄一郎が二人に。

 英雄と天魔は、戸惑いながら耳を傾けて。


「実はな、……俺の親父様もヤンデレの類だったらしくて」


「血筋かっ!? そうなんだなっ!?」


「まあ待て、結論はまだ早い」


「どういう事だい栄一郎?」


「実は親父様達の世代でもな……、愛が重い奴らが多かったみたいで」


「あー、確か栄一郎のオヤジさんって。市内の出身だっけか」


「代々ウチは、一族郎党市内に住んでるでおじゃ。そして……親戚にも聞き込みしたんだが……結果は同じでな」


「待って、それ僕も同じかも。ウチの親父もお袋は隣の高校で、叔父さんはこの高校の出身だったんだけど…………愛が重い人が多かったって」


「つまり何か? この市内、もっと言えば県外に出ないと普通の女の子と出会えないと?」


「それだけじゃないかもよ天魔……、栄一郎を見てよ。男でも愛が重いんだよ? となるとさ……」


「――――っ!? バカなっ!? 俺たちは皆! ヤンデレになるって言うのかっ!!」


「知ってた」「俺も聞いた事ある」「アタシも」「でも私らは無事っしょ、精々カレピのパンツを常に持ってるだけだし」「ヤンデレが居たぞぉ!」「何っ!? ヤンデレになれば異性のパンツを合法的にポケットに入れられるのか!」「閃いた!」「お巡りさんコイツらです」


 ゾンビパニックが起きたように慌てふためく英雄のクラス。


「くそっ、こんな学校居られるかっ!? 俺は一人で帰るぞ!!」


「待つんだ天魔っ!? 一人で行動するとヤンデレに襲われるよっ!?」


「あー、行ってしまったでゴザル……。それで、どうすでおじゃ? この騒ぎ」


「…………――――僕に良い考えがある!」


 そして英雄は、上履きを脱いで教卓に登ると大きな声で。


「聞いて欲しいみんなっ!! 愛が重いとかそんなのは恐れる事じゃない!!」


 途端、ピタッと騒ぎは収まり。


「心に刻んでおいて、彼ら彼女たちは……愛する者を普通の人よりちょっと大きく愛してるだけなんだと」


「しかし英雄殿、その言葉は何の解決にもなってないのでは?」


「良い質問だ栄一郎! だからこそ――僕は良い情報を教えよう。…………ウチの県の婚姻届は、二人一緒じゃないと受理されない!!」


 少しばかり安堵するクラスメイトに、英雄は笑って。


「そしてもう一つ! 奴らはコッチからのアプローチに弱い! そこを突くんだ!」


「いよっ! 流石は這寄女史を落とした男っ! 効果的なアプローチはあるでおじゃるか!?」


「勿論だ! ――だが覚えておいて、これは人生をかけて愛を受け止め、愛する決意と覚悟のアプローチ…………、はいフィリアの持ってる紙に注目! 昨日僕から送ったサプライズプレゼントだよ!」


「おい英雄殿? もしかして自慢したいでゴザル?」


 栄一郎のツッコミはともあれ、皆の視線はフィリアに。

 彼女は口元をにやにやさせ、くねくねと腰を揺らしながら。


「――――結婚式には全員呼ぶぞ!」


「パネェ!」「マジ!?」「いくら美人で巨乳だからってお前っ!?」「いや、これこそ愛よ……」「いいなぁ、ちょっと憧れるなぁ」「婚約オメー?」


 祝福の拍手が鳴り響き、教卓から降りた英雄と寄り添うフィリアを皆が囲んで。


「ようし、皆の者っ! これから校庭に行って勇者英雄を胴上げでゴザル!」


 そして何故か残っていた学生の殆どを巻き込んで、今回成立したカップルの男側や結婚を申し込み成就した教師などが一緒に胴上げされて。


「みんな! 三学期にまた会おう!!」


「では、さらばだ!」


 また三学期に、と謎のコールが盛大に起こる中。

 英雄とフィリアを筆頭にカップル達が、独り身達に拍手で見送られながら帰宅して。

 三学期は平和に終了した。

 なおノリで一緒に帰った校長と雲隠体育担当教師は、後で教頭先生に怒られたのであった。



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[一言] あいかわらずの学校だなw
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