表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/210

第35話 小テストだ!



 かくして、栄一郎の同棲相手は謎に包まれたままであるし。

 愛衣のエテ公へのアプローチは遅々として進展せず。

 なんだかんだで、平和な日々であったのだが。


「や、ヤバイぞ英雄! 午後の数学の授業、抜き打ちテストがあるって!」


「何それ、どこ情報でゴザルかエテ公?」


「隣のクラス、一時限目が数学だったろ? なんでも悪い点取ったら期末が赤点じゃなくても冬休みに補習があるらしいんだ……」


「マジ?」「ホントか?」「いや待った、俺にも同じ情報来たぞ」「そういえば三年も同じ目にあったって前に聞いた事がある!」「国道引いて配送したい……」「クリスマスイベの周回が……」「え、ソシャゲのクリスマス早くない?」


「期末終わった所だから勉強してないよ~」「普段からしてないからアンタ」「つーかマジありえないでしょ」「このタイミングで小テストする?」「先生頑張りすぎ」「小テストダメだったら原稿の時間がっ!」「先生進捗どうですか? 雪山にジップラインで配送している呟きばっかりですけど」


「みんな、大変だねぇ」


「随分と余裕でおじゃね英雄殿、まあ我輩も普段から勉強してるから余裕でゴザルが」


「机はともかく、英雄の裏切り者っ!! 中学の時のお前はもっと輝いていたぞ!」


「ああ、アレね。あれは酷い事件だったなぁ」


「ふむ、それはもしかしてランボルギーニ炎上事件の事か?」


「そういえば、這寄女史は居なかったでゴザルな」


「というか、クラスの殆どがいなかったよね」


「高校違う所に行ったり、クラスが別になった奴も多いからなぁ」


 フィリアの場合、ストーカーしていたから完全に把握していそうなものだが。

 ランボルギーニ炎上事件というワードに引かれ、付け焼き刃の勉強を諦めた者達が集まる。


「せっかくだし、聞かせてくれよ英雄っち。ランボルギーニ炎上事件って、いったい何があったんだよ?」


「あ、小テスト対策は良いの? 伊良部」


「へへっ、最近は先輩に勉強教えて貰ってるんだ!」


「貴様も裏切り者か! 同棲疑惑がある机と共に、後で祝福(物理)してやる!」


「お、いいね。僕も参加するよ」


「馬鹿言うなでおじゃ、英雄殿も祝福(物理)される側でゴザルよ? せいぜい拙者の肉盾になるでおじゃ」


「友情がどっか行ったっ!?」


「友情さんは今、早めの冬休みでおじゃね。つい先日パワーを使い切ったから」


「うーんそれは仕方ない。じゃあランボルギーニ炎上事件の事を話そうか」


 この事件は英雄の関わった騒動の中でも、上位にランクインする、どうしてこうなった案件だ。


「あの時は、理科の小テストだったよね」


「あの時は期末テストの成績に加点して、冬休みの補習を免除出来るって嫌らしいシステムだったでゴザルなぁ……」


「それで、赤点だった奴ら集めて対策会議したんだよな」


「懐かしいな、思い出したくない」


「確かにでゴザル」


「待て、話が終わってしまうぞ。私もこの時は結果しか知らないんだ。詳しく聞きたい」


「えー、聞くの?」


「聞かない方が良いでおじゃ」


「言い出して何だけど、アレはマジで酷い騒動だった……」


 同じ中学出身の三人が口々に、うんざりとした顔。

 となれば、皆は余計に気になって続きを促した。


「このままじゃ気になって小テストどころじゃないって、減るもんじゃなし話してくれよ英雄っち」


「まあ、そう言うなら」


「最初はただ、カンニングしようぜって話だったんだよな」


「教科書の縮小コピー、消しゴムにノートの内容を書き写す、先にやったクラスの連中から問題を聞き出す。……今思えば、それで済ませれば良かったでおじゃる」


「…………何をしたんだ?」


「まあ、細かい所を省くけど。職員室と理科準備室に手分けしてテストの答えを盗みだそうってなったんだ」


「今の英雄が微妙にやりそうにない事だな」


「こういう反省があるからね、安易な不正は楽しくても破滅を招くんだ」


「ああ、俺も反省したな」


「というか、関わった奴はカンニングとか一生しないでおじゃるなぁ」


「本当に何があったんだ!?」


「手分けして忍び込むまでは良かったんだよな」


「そしたら職員室からは横領の証拠が見つかるわ、理科準備室は援交の真っ最中だわ」


「オマケにさ、何かの宗教にハマってたのかテロに使う爆弾まであったよね」


「流石にヤバイってなって、他の先生にチクったり警察呼んだりしたらさぁ」


「その先生、どうもバイだったらしく。新任の先生が毒牙にかかって愛人になってたんだよね」


「体を渡す代わりに、かなり便宜を計って貰ってたって話だったし。そいつも同情の余地はないけどな」


「遂には、屋上から男同士裸で心中騒ぎになったでおじゃ……」


「あれは酷かった……」


「それが何故、ランボルギーニ炎上に繋がるんだ?」


 酷い中身のオンパレードに若干引きながら、皆も頷く。

 どうやって繋がるかは知りたいが、もっと酷い話が飛び出る事が簡単に予想出来たからだ。


「詳しくは省くとして、時系列は前後しちゃうけど。心中騒ぎの前に、車に乗って逃亡しようとしたんだよね」


「アレもヤバかったよな、何人かひき殺される寸前だったし」


「援交相手が巻き添えに一緒に乗ってたんだよね」


「それで英雄と俺たちの出番って訳さ」


「あの子の弟に泣きつかれたでおじゃ、姉さんを助けてくれって」


「やるしかないじゃん? だから理科準備室から爆弾取ってきて。愛人確保して爆破するってやるじゃん! ああ、心配要らないよ。実際にはエテ公が即興で作り上げたダミーだったから」


「車止めて、あの子を助けたは良いけど。愛人奪還されて逃げられたでおじゃね」


「その時の揉み合いで、僕も栄一郎もパンツ一丁になって散々だったよ」


「危ない事するなって、警察にも先生にも怒られたでゴザルなぁ」


「俺は親に拳骨くらった」


「あ、それは僕も」「拙者も」


「というか、ウチのクラスの男子は全員殴られたよね」


「結果的にクラスどころか、全校生徒巻き込んだからあの時の男子は学年問わず親に殴られたでおじゃ」


「その点、あの時の女子は上手いこと立ち回ったよね」


「俺らの弁護もしてくれて、人質になってた子のケアとアフターフォローもしてくれたし助かったでおじゃ」


「というかさエテ公、あの子ってばこの事件で君に惚れたみたいだったんだけど?」


「マジでっ!? 言うのが二年遅いっての!!」


「やっぱり気づいてなかったでゴザルね……」


 フラグに気づかない男、越前天魔の事はさておき。

 ランボルギーニ炎上事件は、そろそろ終幕である。


「エテ公のことはさておき、心中騒ぎで無事捕まったんだよ、一応」


「ほんと、一応だったよな。あの時……」


「まさか、ランボルギーニの中にテロの計画書と予備の爆弾があるとか誰も予想してないでゴザルよ」


「なあ話を盛ってないか? ここまでの大騒ぎなら全国ニュースだろう」


「そこが闇だよね、愛人のセンセがどっかの権力者の息子さんでさぁ」


「ニュースになる前にもみ消したって話だよな」


「今ならフィリアも居るし、僕も経験積んだから全国ニュースに拡散出来るのにっ!」


「ま、要らない敵を作るだけだから。あの隠蔽も正解ちゃあ正解だけどな」


「なんだかんだでテロ組織は壊滅したし、権力者も失脚したでゴザルからなぁ……」


「わりとMVPは、人質にされた子だったよね」


「ああ、テロとかの書類を助け出された土壇場で持ち出してたんだからな」


「それを知らず、アイツは遠隔操作で車を自爆と」


「技術力が残念だったお陰で、爆発せずに燃えただけで済んだのが不幸中の幸いだよね」


「なるほど、……大変だったのだな。ところで話を聞く限り、英雄はあまり活躍しなかったのだな」


「まあね」


「こんな済ました顔してるでゴザルが、答案を盗み出す為に職員室に忍び込んで横領の書類を見つけたのは英雄殿でゴザル」


「お前、これは小テストをうやむやに出来るって。喜んで持ち出してたよな」


「その後、理科準備室に先頭切って忍び込んだのも英雄殿でおじゃ」


「愛人関係を掴んだのも英雄だったよな」


「あの車を止めるぞ、とか。エテ公にダミー作りを指示したのも英雄殿でゴザル」


「…………英雄殿がだいたいの元凶でゴザル?」「英雄が全校生徒を放送で巻き込んだんだよな」


「君達もノリノリで参加してたじゃないかっ!?」


「私を地雷だなんだと言うが、この男こそ。本当に目を離してはいけない面倒な存在なのではないか?」


「酷いやフィリア! 僕は楽しくて皆でハッピーになれる方法を取っただけなのに!」


「騒ぎを大きくした一因は英雄殿でゴザル」


「僕に出来ない事は出来る人に手伝って貰う、それを実践したまでさ」


「それを実践出来る行動力が、英雄殿の怖い所でゴザル」


「ぶう、僕は僕に出来る事をしただけなのに……」


「よしよし、私は何があっても英雄の味方だし。今度同じような事があったら力になろう」


「それはそれで怖いでゴザル」


 そして、午後になり小テストが始まる。

 ――かに思えたが、その前の昼休み。


「大変です英雄センパイ! 数学の小テストがある事は知ってますか!?」


「なんだ愛衣ちゃん、そんなの朝から噂だって。――って、ああ。僕らの学年だけじゃないんだ小テスト」


「それだけじゃないんです! 答案を盗みにいった馬鹿な男子が、先生が出演してるホモビデオを発見して持って帰ってきちゃって!!」


「…………フィリア! 栄一郎! みんな! 出動だ! わくわくしてきたよっ!!」


「ようし! 腕が鳴るな!」


「みんな! 聞くでおじゃ! 学校の平穏を守るべく。這寄女史と英雄殿を全力で押さえつつ、事態の沈静化に動くでゴザル!」


「何で!?」「解せぬ」


 結果、小テストはうやむやになり。

 全校生徒で、黄金で作られたカレーパンを探す事になった事は語るまでもない事だった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] ちょっと待とう?黄金のカレーパンって何?ていうかなんで当然のこととして説明してるの?
[良い点] ほんっと楽しそうな学校だなぁ~ こんな学校に行きたか… やっぱ絶対いいかw [気になる点] 同じことになってるw 今度は穏便に…ならんなw こんだタンカーでも燃えるかな?w [一言] 英…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ