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第18話 メイド来たりて



 同棲とはかくも世界が輝くものなのか。

 彼女と同棲してから、学校生活だけでなく私生活もワンダフルかつビューリホーでワクワクだ。

 お互いを少しずつ知って、時には意外な一面や思わぬハプニングがあって。

 英雄は目を輝かせながら、アパートの扉を開けて――。


「あ、おふぁふぇふぃなふぁーい」


「誰だよっ!?」


 ――扉を開けるとそこには、メイドが寝転がりながらポテチを食べてテレビを見ていて。


「未来じゃないか、どうした今日は?」


「え、フィリアの知り合い? 何でこの人、勝手に家に入ってるのっ!? そしてそれ僕のポテチ! 返せ!」


「あ、どうぞどうぞ。」


「これはこれはご丁寧に……って空じゃん! 全部食べてるじゃんか!!」


「ははは、相変わらず食いしん坊だな」


「それで済ますの!? 曲者め! 名を名乗れ!!」


「おっと、そういえば紹介がまだだったな」


 するとふわふわとした柔らかそうな髪の、ふわふわとした豊満な胸と。

 きゅっと絞まった腰と、ふわふわとしたお尻を持っていそうなクラシカルスタイルのお姉さまメイドはカーテシーを一度。


「おおー、モノホンのメイドさんだ!!」


「ワタシは代々這寄家に使える従者の雨里未来、てきとーによろしく」


「あ、どうも。僕は――」


「存じておりますとも、よーくよーく存じておりますとも、(フィリアさまの将来の夫である)脇部英雄さまでごぜーますね?」


「何か変な前置きなかった? というかメイドさんの割に言葉遣い適当じゃない?」


「フィリア様は寛容な方ですからねぇ、TPOを弁えてれば良いんですよ今時のメイドなんて」


「僕の前では畏まらなくていいの?」


「ええ、(フィリアさまの将来の夫である)脇部英雄さまなら、(長い付き合いになる事ですし)素を出していこうかと」


「うーん、釈然としない」


「あ、フィリアさま。お茶ぐらいワタシが、ささ、久々ですし座ってくださいなー」


 そして彼女が入れた紅茶をのみ、お茶請けにはケーキ。

 フィリアはショコラケーキを堪能しながら問いかけた。


「それで、今日は何の用で来たんだ? 未来が来るなんてよっぽどの事があったのだろう?」


「はい、実は…………御当主様にフィリアさまの事がバレまして」


「父にか」


「え、それって……」


「父はなんと?」


「コホンでは伝言をば、――――『(協力は惜しまない、勝ち取れ、孫が出来るまで)帰るな』と」


「そうか『(協力は惜しまない、勝ち取れ、孫が出来るまで)帰るな』と」


「やっぱり、変な含みない?」


「いいや?」「どこがです?」


「釈然としない。というかさ、酷くない? 自分の娘が家を焼け出されて、帰ってくるなって!? フィリアを何だと思ってるのさ!!」


「そうだな」「はい?」


「え、何その反応? ちょっと薄くない? 未来さんに至っては首傾げてるし」


「フィリアさま?」「そうだ」「なるなる、ご希望のままにー」


「二人だけで分かり合ってないで、僕にも分かるように話してどうぞ?」


 メイドは令嬢とアイコンタクトの後、英雄に向かって姿勢を正し。


「時に英雄さま、フィリアさまとは何処まで行かれたので?」


「何処までって……そういえば、遠出したことなかったよね」


「うむ、何れは遊園地にも行きたいな」


「男女関係の事ですよ! フィリアさまなら兎も角、英雄さまは分かっててボケてるでしょ! さ、お姉ちゃんに言っちゃいなさいよ。どこまでイッたの?」


「指を人差し指と中指の間だに挟まないで! ――――悲しく、なるからさ」


「つまり?」


「ホッペにちゅーのみ、ガード堅くってさぁ」


「なるなるぅ、このヘッタレェ! ワレ、チンコついとんのかいっ!!」


「使用させてくれないんだよ!! というか先日フィリアに犬耳セットを渡したの未来さんだよね! どうなってるのさ!! この子、なんか知識うっすいんですけど!?」


「フィーリーアーさーまー?」


「うっ、そんな目で見るな! 誰にでも向き不向きがあるというものだ! 私は悪くない!」


「英雄さま、ごめんねぇ。生殺しは辛いでしょ、お姉ちゃんで一発ヌいとく? 経験豊富なお姉さんで練習してみない?」


「クビだな」


「やだもー、冗談ですってフィリアさま。ちゃーんと分は弁えていますって」


「はわわっ!? エッチなメイドさん……っ!? 実在していたなんて――酷いやフィリア!! どうして教えてくれなかったんだい!! ちょっとラブホで二人っきりで話しませんか未来さん! 僕、童貞なんです!」


「捻り殺す」


「僕だけ殺意高いっ!?」


「英雄、君は時に私を非常に苛立たせる。――正直、不愉快だ!」


「フィリアだって! このポンコツオンナめ! もう少し男のリピドーに配慮したらどうだい!」


「何だと、私が、君に、これ以上の、配慮を、しろというのかっ!!」


「そうだよ! 僕がどれだけ我慢してると思ってるのさ!」


 グギギ、ウゴゴとメンチを切り合う二人に、未来は呆れた顔で止めに入る。

 彼女としては、もう少し仲が進展していると思っていたのだが。

 少々これは、予想外だ。


「はいはーい。ワタシを出汁にラブラブ痴話喧嘩しないでくださーい」


「喧嘩などしていない!」「どこが痴話喧嘩なのさ!」


「そんな言い訳なんて無視ムーシ、さあ仲直りの握手」


「――未来がそう言うなら」


「はっ、未来さんにはやけに素直なんだね」


「挑発には乗らない、さあ童貞坊やは右手を出せ」


「フィリアこそ安い挑発だ、……――あだだだだっ! 力つよっ!? こなくそ負けるかっ!!」


「ぐぬぬぬぬ、乙女の柔肌をなんだと思ってるのだ! 男なら手加減したらどうだ!」


「あらら、これはダメですね。――となると?」


 未来はパンパンと二度手を打つと、二人の気を引いて。

 ニンマリ笑って提案した。


「では、仲直りのキスをしましょう。ああ、ホッペはダメですよ、口にぶちゅーと、舌を入れてくださいね」


「マジで! やるやる! 仲直りのキスしようフィリア!」


「待て、その前に一つ聞きたい事がある」


「ええー、早くしてよ」


「その、なんだ? 舌を入れろ、とは何だ? キスとは唇と唇ではないのか?」


「………………マジ?」


「マジですかフィリアさま?」


「な、なんだその顔は!? おかしいだろう! キスで舌を入れるなど聞いたことがない!!」


「参考までに聞きますがフィリアさま、子作りの知識はどうでしたっけ?」


「未来、それは先日英雄をもうやった。二回目は面白くないぞ?」


「………………ごめんなさい英雄さま。この未来、お嬢様のメイドとして、教育を失敗しました! テヘぺろ」


「どうしたら、こんな中途半場に育つんですか!?」


「フィリアさまは基本、真面目な方なので……、ワタシも年頃ですので自然とお知りになっているかと……」


「だよねぇ……、普通知ってるよねぇ……」


「なんだ二人とも! 私を何も知らないウブなネンネを見るような目で見て!」


 もしかすると、もしかするのかと落ち着かない様子のフィリアに、未来は生暖かな視線で肩に手を置き。


「英雄さまが全て教えてくれますよ。……勇気を出せば実地で。じゃ、ワタシはこれで、後はお若い二人にお任せします、ではまた。今度フィリアさまのアルバム持ってきますねーー!」


「あ、逃げやがった!!」


「まて英雄、追いかける必要は無い。君にはこれから私に勉強を教えるのだからな」


「参考までに聞くけどさ、何の勉強?」


「キスの勉強だ! さあこい! 私の心の準備は出来ていないぞ! そしてもう一つ、エッチな事をしたら全力で抵抗するからな!!」


「絶対分かってて言ってるだろフィリア!? あー、もう、どうしたらいいってのさ!!」


 その後、何とか頭をこねくり返し、英雄は解決法を見いだした。


「取りあえず参考資料としてさ、僕のお勧めの海外ドラマ見よっか」


「海外ドラマだと? そんなモノが参考に……いや、海外といえばキスの本場。成程、考えたものだな」


「ああ、うん、それでいいや」


 彼が用意したのは、少し大人向けのセックスシーンがあるドラマで。

 ある意味、健全に育った男の子として物足りないのだが――。


「な、な、な、な、な――――なんと破廉恥なけしからん!」


「うーんこの、顔を手で隠してるように見えて、指の隙間からばっちり見えてる感じのやつ」


「あわっ、あわわわわっ、こ、これがベロちゅー!? ほわっ、ほわぁっ!?」


「おーおー、耳どころか首まで真っ赤。いやー、フィリアは可愛いなぁ…………、で、ベロチューする?」


「う、ううう、む、無理ぃ。私、こんなの無理ぃ……――きゅう」


「あちゃー、気絶したか」


 英雄は遠い目をしながら、布団を用意し彼女を寝かせた。


「ま、一歩前進ってね?」


 起きたら、キスを強請ってみるのも面白いかもしれない。

 英雄はそう思いながら、夕食を作り始めたのだった。



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