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スライム系

俺、スライムに転生できました 番外編 -俺、逆さ虹の森へ行ってみた-

作者: 狩野生得

 ファンタジーの世界で暮らしているスライムが、逆さ虹の森にやってきました

 このスライム、元は会社員でしたが、神様の力でスライムに生まれ変わったんです

 いつもとは勝手が違う世界で、何をやらかしてくれるのでしょう

 ポヨン、ポヨン、ポヨン

 青くてまあるくて柔らかい、不思議な生き物が飛び跳ねています

 厚みがある鏡餅かがみもちのような姿で、直径は50センチぐらいでしょうか


 あれはスライムのおれくん

 今日は、逆さ虹の森へ遊びに来たようです

 

「ふう、やっと着いたぜ。思ってたより時間がかかったな」


 俺くんの体はつるつるです

 目も口もありません

 でも、大丈夫

 ちゃんと見えてますし、話すこともできるんです


「それじゃ、早速さっそく入ってみるか」


 ポヨン、ポヨン、ポヨン


 俺くんは森の中を進みます


 小鳥たちは木の上から、珍しそうに見ています

 ウサギや野ネズミたちは、茂みに隠れてこっそり見ています


 でも、それは当たり前なんです


 俺くんは青色

 しかも、少し光ってます

 こんな目立つ色をしているのは、とっても強い証拠

 普通の動物は、目立たない色をしてるんですよ



「おっ、第一動物(森人)発見!」


 俺くんが見つけたのはクマくん

 体はとっても大きいのに、森で一番の怖がり屋さんです 


 俺くんは飛び跳ねるのを止めました

 音を立てずにこっそり近付くようです


「プルプル

 ボク わるいスライムじゃないよ

 みんなと ともだちになりたくて

 さかさにじのもりに あそびにきたんだよ」

「うわー! 大きなグミがしゃべったー!」


 俺くんは、クマくんに挨拶あいさつをしました

 ゲームが好きだったお父さんやお母さんなら、ちょっと笑っちゃう挨拶です


 でも、クマくんにはわかりません

 全速力で逃げてしまいました


「おっと、いきなり失敗したか

 やっぱ、動物にゲームネタは無理だな

 それと、実はクマは臆病おくびょうだってのは、本当ほんとだったんだな…」


 俺くんが言った通り、クマは臆病なんです

 よほど気が立ってない限り、話し声や鈴の音で逃げちゃうんですよ



 俺くんは先に進みます


 案内板は無いけど、根っこ広場に一直線です

 俺くんは、森の何処どこに何があるのかを知りません

 動物たちが多く通ったあとを進んでいるんです


 そんな俺くんの後を、リスくんがこっそりついて行っています

 いたずら好きのリスくんは、俺くんで他の動物たちをおどろかすつもりのようです


「あー、さっきから俺の後をついてきてるリス

 何もしないから出てきなさい」

「うわっ!?」


 リスくんはびっくり

 ちゃんと隠れていたのに、俺くんにバレてました


 リスくんは仕方なく出ていきます


「どうしてわかったんだよ?」

「お前な、何度も俺を見てただろ

 頭は少ししか見えなかったけど、大きな尻尾しっぽが思いっきり見えてたぞ」

「がーーーん」


 リスくんは大ショック

 書き文字を声に出しちゃってから、ピクリともしません

 リスは驚きすぎると死んじゃうこともあるそうです

 リスくん、大丈夫?


「おーい、大丈夫か?」

「ハッ!? ボクはいったいなにを…?」

「よし、再起動したな

 お前、俺の後をついてくるぐらいだから、ひまなんだろ?

 どうせなら一緒いっしょにこいよ」

「うん」

「よし、じゃあ、頭に乗れ」

「…頭って、どのへん?」

「このへんだよ」


 俺くんは中心のあたりをプルプルさせました

 リスくんはピョコンと飛び乗ります


「うわぁ、プルプルだー」

「当然だな、俺、スライムだもん」

「へー

 おじさん、スライムって言うんだ」

「あー、俺はおじさんじゃないんだが…

 説明するのがめんどくさいな」

「じゃあ、俺さんって呼びます」

「おじさんじゃなくて俺さんか…、まあ、いいだろ」


 実は俺くん、スライムになって二か月たっていません

 リスくんより年下なんです


 シュルシュルシュル…


 リスくんを乗せた俺くんは、カタツムリの真似をして進みます

 だって、跳ねたらリスくんが落ちちゃいますもん



 俺くんは根っこ広場に到着しました


 その名の通り、そこいらじゅうが木の根っこだらけ

 コブみたいに飛び出してたり、タケノコの先っぽみたいなのが突き出してたり

 デコボコツンツンしています

 裸足はだしで歩いたら、足つぼが刺激されて健康に良さそうです


 おやっ、今日は誰かいますよ?

 珍しいですね


 根っこ広場には、怖いうわさがあるんです

 ここでうそをつくと、根っこに捕まっちゃうんだとか

 だから、いつもはみんな、さっさと通り抜けちゃうんです


「あれっ、アライグマさんと、キツネさんじゃないか

 どうしたの、こんなところで?」


 俺くんから飛び降り、リスくんがたずねます


「ああ、リスくんか

 見ての通り、アライグマさんの足がはさまって抜けなくなっちゃったのよ」

「ええっ!? まさか、アライグマさん、ここで嘘ついちゃったの?」

「ちょっとリスくん

 あたしは乱暴だって言われてるけど、バカじゃないわよ」

「そうよ

 クマくんが全速力で走ってったから、気になって追いかけようとしたの」

「そしたら、根っこに挟まっちゃったのよ」

「私の力じゃ抜けないし、誰か呼びに行こうと思ってたの」

「ゴメン、そうだったんだ

 そしてもう一度ゴメン、ボクじゃ力になれないや」


 動物たちは、すっかり困ってしまいました


「よし、みんなちょっとどいてろ」

「「!?」」


 それまで黙っていた俺くんがしゃべりました

 アライグマさんとキツネさんはビックリです


「グ、グミがしゃべった!?」

「大きくてしゃべるグミか…

 おいしいかな?」

「(この森じゃ、動物がグミを知ってるのかよ!)」


 …キツネさん、あなたは腹ペコキャラじゃないんですよ

 それと俺くん、それはクマくんの時に言ってほしかったですね


「2人とも、違うよ

 俺さんはスライムって言うんだ

 食べ物じゃないよ」

「そーゆーことだ

 それ、よっと」


 俺くんは身体を伸ばして根っこの間に入れ、ぐっと広げます

 アライグマさんの足はスポッと抜けました


「ありがとうございます」

「俺さんって、力が強いんですね」

「力だけじゃないよ

 隠れてるボクも見つけちゃうんだ」

「それは、リスくんの尻尾が見えてたからじゃないの?」

「ええっ!? アライグマさん、知ってたんなら教えてよ」

「ちょっと二人とも、それどころじゃないわよ

 クマくんを追いかけなきゃ」

「ああ、そうだったわ」


 みんながクマくんを追いかけようとした、その時です



「大変よー!

 クマくんが、クマくんがー!」


 コマドリさんが、ものすごい勢いで飛んできました

 クマくんに何があったのでしょう?


「コマドリさん、クマくんがどうしたの?」

「オンボロ橋の真ん中で、落ちそうになってるの」

「「「ええーっ!」」」


 これは大変!


 森の真ん中を流れる大きな川

 そこにかかっている吊橋つりばしが、オンボロ橋です

 名前の通り、今にも落ちそうなボロボロの橋なんです


 吊橋って、揺れますよね

 それが怖くて変に動くと、よけい揺れますよね

 クマくん、大丈夫でしょうか?



 みんながオンボロ橋にやってきました

 俺くんも、一番後ろにいます


「どうしよう」

「クマくん…」


「うわーーーーん、怖いよーー、誰か助けてよーーー!」


 クマくんは、橋の真ん中でロープにつかまり、泣きべそをかいています


 橋をよく見ると、こちら側の板に、新しく割れたところがいくつも増えてます

 全速力で走ってきたクマくん、板を踏み抜きながら進んだようです

 勢いで真ん中まで渡ったところで、怖くなって止まっちゃったんですね


 これは困りました

 クマくんの大きさじゃ、こちらに戻ってくるのは無理です

 岸に着く前に、板が全部落ちちゃいます

 さあ、どうしましょう?


「そうだ! みんな、ドングリを探すんだ!」

「「「そうか、ドングリ池!」」」


 リスくんの言葉に、キツネさんたちがこたえます

 四人はドングリを探しに行き、すぐに見つけてきました


「なあ、ドングリとドングリ池って、何があるんだ?」

「えっ!? グミがしゃべった?」


 俺くんの言葉に、コマドリさんが驚きました

 大人の世界で「お約束」って呼ばれるやり取りです


「私がドングリ池に行ってくる」

「わかった

 私たちは、クマくんをはげますわ」


 ドングリ池は、川の向こう側です

 コマドリさんが飛んでいきます


「俺さんには、あたしが教えてあげるわ

 ドングリ池にドングリを投げ込んでお願いすると、願いが叶うの

 神様にクマくんを助けてもらうのよ」

「そうか、ありがとう

 困っている仲間のために、みんなが自分にできることをする

 うん、いい話だ

 だったら、みんなでお願いしようぜ

 神様にもきっと届く」


 俺くんに言われて、リスくんとアライグマさんとキツネさんも願います

 神様、クマくんを助けてください



「どう、クマくんは助かった?」


 お願いを終わって、コマドリさんが戻ってきました

 その時です


 ビュウッ!


 ああっ!

 不意に強い風が吹き、橋が大きく揺れました


「うわわわーーーーっ!」


 クマくんはビックリして、思いっきり踏ん張ります


 バキィッ!!


「わわーーーーっ!!」


 足元の板が割れ、驚いたクマくんは手を放してしまいました


「「「キャーッ!」」」

 女の子たちが目をおおいます

 リスくんも顔をそむけます


「(虹の奇跡きせき)」


 俺くんが、小さな声で魔法を使いました

 うわっ、まぶしい!


 ものすごい光です

 何が起きているのか、誰にもわかりません


「えっ!? ええぇぇぇぇぇーーーーっ!!」


 光は収まりました

 クマくんの声が聞こえます


 みんな、恐る恐る目を開け、声がした方を見つめます


「「「「えっ!? ええぇぇぇぇぇーーーーっ!!」」」」


 なんということでしょう!


 クマくんは、逆さまの虹に乗っていました


 クマくんを乗せた虹は、ゆっくりゆっくり、みんなの方へやってきます



「「「「クマくーん」」」」」

「みんなー」


 虹は、クマくんを下ろすと消えました

 みんながクマくんに駆け寄ります

 みんな、とっても嬉しそうです


「僕、もうダメだと思ったんだ

 でも、気が付いたら虹にまたがってたんだ」

「私の願いが通じたのよ」

「あら、あたしたちもお願いしたのよ」

「そうそう、俺さんに言われたの

 みんなでお願いしたら、きっと神様に届くって」

「うん、ボクもお願いしたよ」

「そうだったんだ

 みんな、本当にありがとう」


 みんなに聞こえるように、俺くんが話します


「立派な虹だなー、この虹が出たから、ここは逆さ虹の森なんだな」


 みんなが空を見上げます

 みんなが虹に見とれます


 コマドリさんが歌います


 こうして、またひとつ、逆さまの虹の伝説が生まれました



 あれっ?

 逆さ虹の森にはもう一人、たしか……ヘビさんがいませんでしたっけ?


 こんな立派な虹も見ないで、何をしているんでしょう?

 ちょっと巣穴をのぞいてみましょう


「うーん、きょうもごはんがおいしいっすなぁー」


 ヘビさん、そんなに食べてばかりいると、ツチノコになっちゃいますよ…

 とりあえず一作投稿です。

 すみません、思いっきり変化球です。

 そうですね、ツーシームぐらいでしょうか?


 実はですね、プロローグだけ投稿した物とは別のネタもあるんです。

 でも、どっちもまとまらないんですよぉ(泣)


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― 新着の感想 ―
[良い点] ご縁あって本編をすこし読ませていただいて、再び舞い戻ってまいりました。 ポヨンポヨンなかんじと優しいツッコミが、くせになります。 「大きなグミがしゃべったー!」と逃げる熊さんがめちゃくちゃ…
[良い点] スライムが出てくるお話で、ほっこりしました。 ネタを挟みつつ、読みやすかったです! [一言] ほんわかしました!
[一言] ネタバレありの感想です。未読の方はご注意ください。 冬童話2019より参りました。 「俺、スライムに転生できました」の本編は未読で申し訳ないのですが、童話単体で楽しませていただきました。ナ…
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